離婚に向けて別居を考えている方へ
執筆:弁護士 細江智洋
この記事のまとめ
- 別居は離婚に向けた第一歩。準備不足の別居は不利になる可能性がある
- メリット(冷静に判断できる・安全確保・子どもへの悪影響軽減)とデメリット(生活費負担・証拠収集の難しさ)を理解することが大切
- 夫婦には「同居義務」があり、一方的な別居は不利になる場合がある。DV・モラハラ・不倫などの理由があれば正当と判断されやすい
- 別居前は住居・財産資料・証拠・子どもの生活環境などを整えておく必要がある
- 別居開始日は財産分与の基準時となり、婚姻費用(生活費)も請求可能
はじめに
「別居したいけど、離婚に不利になる?」
「準備不足で家を出たらどうなる?」
こんなお悩みはありませんか?
別居は離婚に向けた大きな一歩です。しかし、準備なく始めると後悔するケースも少なくありません。
本記事では、別居のメリット・デメリット、離婚手続きとの関係、事前準備のチェックリストなどを、別居前に知っておくべき基本知識を横浜の離婚弁護士が解説します。
目次
別居のメリット・デメリット
メリット
• 配偶者と距離を置くことで冷静に判断できる
• DVやモラハラから身を守れる
• 夫婦の言い争いや険悪な雰囲気に子どもがさらされる時間を減らせる
• 裁判所が「婚姻関係の破綻」を判断するときの一つの材料になる
デメリット
• 家賃や生活費など経済的負担が増える
• 証拠や財産資料が取りにくくなる
• 子どもが不安定になる可能性がある
• 準備不足で一方的に家を出ると「有責配偶者」とされかねない
▶ 別居を開始しても直ちに離婚できるわけではありません。しかし、裁判での判断に大きく影響します。
▶ 別居と離婚の関係について、詳しくはこちらをご覧ください。
【関連記事】[離婚と別居期間]
別居をしても大丈夫?「夫婦の同居義務」とは
民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。したがって、正当な理由がない一方的な別居は、同居義務違反とされるリスクがあります。
正当な理由があるとされるのは、以下のような場合です。
• 不倫(不貞行為)
• DVやモラハラ
• 理由なく生活費を渡さない
• アルコール依存や多額の借金、家庭を顧みない行為
▶ これらがある場合は、相手の同意がなくても別居が正当化される可能性が高いです。
正当な理由が曖昧なケースでは、まず話し合いによる同意形成や、段階的な生活分離から検討しましょう。
▶ 裁判例が別居をどう評価するかはこちらをご覧ください。
【関連記事】[離婚と別居期間]
▶ 別居を切り出す場面について知りたい方はこちらももご覧ください。
【関連記事】[離婚の切り出し方]
別居前チェックリスト10
1. 住居の確保(賃貸契約や親族の支援)
2. 財産関係の資料取得(通帳、不動産登記簿、保険証券など)
3. 相手の収入資料(源泉徴収票や給与明細)
4. 不倫・DV・モラハラの証拠(写真、録音、診断書、LINE履歴など)
5. 子どもの転校・保育園手続きなど養育環境の整備
6. 公的支援制度の確認(児童扶養手当、自治体の支援など)
7. 収入確保の準備(就職活動、副収入)
8. 荷物の準備(生活に必要なものを優先)
9. 郵便転送や住民票の移動など住所関連の手続き
10. 弁護士や専門家への事前相談
▶ 別居後は自由に自宅へ出入りできないことが多いため、証拠や資料は必ず事前に確保しておくことが重要です。
別居は「離婚」にどう影響する?
裁判で離婚が認められるかの判断では、別居期間は大きな要素です。
3年程度:判断が分かれやすい
5年以上:婚姻関係が破綻していると評価される傾向にある
7年以上:認められる事例が多くなる
▶ ただし夫婦の年齢・婚姻期間・子どもの状況などを総合考慮します。
▶ また、財産分与の基準時は原則として別居開始日です。
別居後に新たに形成された給与や預金は共有財産に含まれない取扱いが基本になります。
別居開始時の注意点
別居を始めるときの注意点をまとめました。
• 同居義務との関係
民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。そのため、正当な理由なく一方的に家を出ると、同居義務違反とされ、場合によっては有責配偶者と認定されてしまう可能性があります。
• できれば話し合いによる同意を得る
別居を考える際には、まず配偶者と話し合って同意を得ることが望ましいです。
• 典型的な離婚原因がある場合は同意不要
不倫、DV、モラハラ、生活費を渡さないなどの典型的な離婚原因がある場合は、同意がなくても別居を正当化できます。
• 改善の努力を経たうえで別居へ
夫婦関係の改善を試みても解決しない場合、やむを得ず別居を開始した、という流れを作っておくことが重要です。
▶ このプロセスを踏むことで、別居自体が正当なものとして扱われやすくなり、後の離婚手続が円滑に進みやすくなります。
元裁判所書記官からのひとこと
調停の場では、別居に至った経緯をよく聞かれます。別居の理由と、別居までのプロセスを説明できるようにしておきましょう。
婚姻費用(生活費)の請求について
別居しても夫婦である以上、生活を支え合う義務は続きます。
収入が少ない側や子どもを養育している側は、原則として相手に「婚姻費用(生活費)」を請求することができます。
• 家賃・教育費・医療費なども対象になる
• 金額は裁判所の算定表が基準
• 請求した時点に遡って支払いが命じられることもある
▶ ただし、不倫など別居の原因を作った側からの請求は、認められない場合や減額されることがあります。
▶ 金額の目安は裁判所の算定表が参考になります。
▶ 詳細はこちらをご覧ください。
→【関連記事】[婚姻費用の解説]
別居後の流れ
別居をきっかけに離婚協議が成立することもありますが、合意できなければ家庭裁判所での手続きになることも多いです。
• 話し合いで合意できる → 協議離婚
• 合意できない → 離婚調停へ
• 調停でもまとまらない → 離婚裁判へ
▶ 裁判になると、別居期間の長さが「婚姻関係が破綻したかどうか」を判断する重要な要素となります。
別居について弁護士に相談したほうがいい?
別居を考えている方にとって、弁護士相談は大きな安心につながります。
• 自分のケースでどのくらい別居期間が必要かを確認できる
• 財産資料や証拠収集の方法をアドバイスしてもらえる
• 婚姻費用や養育費の請求をスムーズに進められる
• 離婚協議から調停・裁判まで一貫してサポートが受けられる
▶ 一人で不安を抱えて行動するよりも、事前に弁護士に相談することで有利に進められることが多いです。
弁護士からのメッセージ
別居は離婚に向けた重要な第一歩です。
しかし、準備不足で動いてしまうと不利な状況になりかねません。
弁護士細江智洋は、これまで280件以上の離婚問題を解決に導いてまいりました。
別居や離婚について不安を感じる方に、適切なアドバイスをお伝えします。
まずは初回30分の無料相談をご利用ください。
新しい一歩を安全かつ有利に踏み出せるよう、全力でサポートいたします。
この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。
この記事の編集・SEO担当者
阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などを担当。現場の知見を生かし、弁護士細江智洋の法律解説に元書記官としての視点をプラスして編集しています。
※ 法律解説は弁護士監修です。