熟年離婚の財産分与はいくら?婚姻期間別に見る司法統計の傾向
監修:弁護士 細江智洋
はじめに
熟年離婚の財産分与はいくらになるのでしょうか。
「1000万円を超えることもある」と聞く一方で、
「そこまで高額にはならないのでは」と感じる方もいるかもしれません。
婚姻期間が長い場合、
預貯金・不動産・退職金などが積み重なっている可能性があります。
そのため、若い世代の離婚と比べて、財産分与が高額になる傾向があることは事実です。
もっとも、実際の金額は個別事情によって大きく異なります。
本記事では、令和5年司法統計(表27)をもとに、
婚姻期間別に見た財産分与額の傾向と、「算定不能」の意味を整理します。
※本記事は統計上の傾向を示すものであり、個別事案の結果を直接示すものではありません。
目次
1 司法統計における財産分与額の集計方法
司法統計では、
離婚調停成立または調停に代わる審判事件のうち、
財産分与の取決めがあったものを、金額区分ごとに集計しています。
財産分与の内容には、大きく分けて次の2類型があります。
・金銭の支払のみで解決するケース
・不動産や有価証券などの帰属を定めるケース
金銭の支払のみで完結する事案では、
「相手方は申立人に対し、本件離婚に伴う財産分与として〇〇円を支払う」
といった形で、総額が明確に示されます。
一方で、
・自宅は妻が取得する
・代わりに預貯金を夫が多めに取得する
・一部金銭調整を行う
といった複合的な内容の場合、
金銭の支払が含まれていても、財産分与の総額をはっきりと算定できないことがあります。
その結果、
こうした事案が「算定不能・総額が決まらず」の区分に計上されている可能性があります。
そこで、本記事では、
① 金額区分に分類されている事件
② 「算定不能・総額が決まらず」とされた事件
を分けて整理していきます。
2 婚姻期間別の集計区分について
司法統計では婚姻期間を細かく区分していますが、
本記事では傾向を見やすくするため、次の4区分に整理しました。
・10年未満
・10年以上20年未満
・20年以上25年未満
・25年以上
なお、20年以上25年未満と25年以上は、
司法統計上も別区分として集計されています。
3 金額が特定された事件における高額帯の割合
本記事では、
「600万円超」「1000万円超」に着目して整理します。
600万円は統計上の一つの区分であり、
中位層とそれ以上を分ける目安として比較しやすいためです。
※ 本記事でいう「600万円超」とは、司法統計上の「1000万円以下」「2000万円以下」「2000万円超」を合算した区分を意味し、「1000万円超」は「2000万円以下」「2000万円超」を合算したものです。
婚姻期間別|600万円を超える件数の割合
※母数=総件数−算定不能件数
●10年未満
600万円超:12.2%
1000万円超:5.8%
●10年以上20年未満
600万円超:31.6%
1000万円超:16.5%
●20年以上25年未満
600万円超:46.7%
1000万円超:28.4%
●25年以上
600万円超:57.9%
1000万円超:37.8%
婚姻期間が長い区分ほど、高額帯の割合が上昇していることが分かります。
特に25年以上では、
1000万円超が約37.8%を占めます。
もっとも、これは金額が特定された事件に限った傾向です。
4 算定不能の割合
司法統計では、「算定不能・総額が決まらず」とされた事件も別に集計されています。
婚姻期間別の割合は次のとおりです。
10年未満:14.8%
10年以上20年未満:20.5%
20年以上25年未満:18.1%
25年以上:17.5%
おおむね15〜20%前後の事案が、金額区分には含まれていません。
ここで重要なのは、この「算定不能」の中身です。
実務上、
・持ち家の帰属のみを定めたケース
・不動産と預貯金を組み合わせて整理したケース
・有価証券や保険を含む複合型の分与
などは、金銭の支払いが含まれていても、
総額として整理されず「算定不能」に計上されている可能性があります。
そのため、
不動産などの高額資産が動いた事案の一部が、
金額区分の集計に現れていない可能性も否定できません。
つまり、
600万円超・1000万円超の割合だけで全体像を判断することはできないことに注意が必要です。
不動産や退職金、年金分割を含めた整理については、
【熟年離婚と財産分与・退職金・年金分割の全体整理はこちら】
5. 25年以上の分布を見る
25年以上(総件数1,804件)のうち、
算定不能は316件(17.5%)でした。
金額が特定されている1,488件の内訳は次のとおりです。
100万円以下:7.9%
100万円超200万円以下:8.3%
200万円超400万円以下:12.9%
400万円超600万円以下:12.9%
600万円超1000万円以下:20.2%
1000万円超2000万円以下:21.5%
2000万円超:16.2%
ここでは、1000万円を超えるケースが37.8%を占めていることは注目に値します。
この背景には、
・住宅ローン完済済みの自宅
・長期間にわたり蓄積された預貯金
・退職金見込額
などが影響していると考えられます。
もっとも、約17.5%は金額区分に現れていません。
高額不動産が動いている場合でも、統計上は「算定不能」として整理されている可能性があります。
6 統計から読み取れること・読み取れないこと
読み取れること
・婚姻期間が長いほど高額帯の割合が高い
・25年以上では2000万円超の事案も一定数存在する
読み取れないこと
・個別事案の具体的な財産内容
・不動産の評価方法
・退職金算定の前提
・分与割合や交渉経緯
統計は「結果の集計」です。
どのような資料や主張が提出されたかまでは分かりません。
財産分与の金額だけでなく、
退職金や年金分割を含めた全体像を整理することが、熟年離婚では重要です。
7 熟年離婚で財産分与を考える際のポイント
熟年離婚では、
・持ち家の評価方法
・退職金の算定基準
・年金分割
・別居開始時期
といった要素が結果を大きく左右します。
財産分与は単純な金銭給付だけで決まるものではありません。
統計上、高額帯の事案が一定数存在することは事実ですが、
それが直ちにご自身のケースに当てはまるとは限りません。
重要なのは、
現在の財産状況を把握すること
対象となる財産の範囲を整理すること
評価方法を確認すること
です。
8 まとめ
司法統計によれば、
婚姻期間が長い区分では、600万円超・1000万円超の事案が一定数存在します。
25年以上では2000万円超の事案も見られます。
もっとも、
・約15〜20%は「算定不能」に含まれている
・不動産など高額資産が金額区分に現れていない可能性がある
といった点にも留意が必要です。
統計は参考資料にすぎません。
最終的な金額は、財産の内容と評価方法によって大きく変わります。
熟年離婚を検討している場合には、
統計上の傾向を踏まえつつ、個別の状況を整理することが重要です。
財産分与の見通しについて整理したい方は、法律相談をご活用ください。
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この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
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