監護の分掌とは?共同親権を選んだときの柔軟な運用方法

監修:弁護士 細江智洋

この記事のまとめ

  • 共同親権の下では「監護者指定」だけでなく「監護の分掌(分担)」も選べるようになる。
  • 分掌は、「週末/平日で分ける」、「重要な事項を共同で決める」など、家庭の事情に応じて柔軟に設計可能。
  • トラブル防止には、協議書や公正証書などの書面を残し、具体的なルールを決めることが重要。

はじめに

民法改正により、「共同親権」が導入されます(令和7年10月現在未施行。令和8年5月24日までに施行)。

今後、離婚後に父母の共同親権を選択できるようになりますが、そこで問題になるのが「日常的に子どもを誰が育てるのか」「どうやって役割を分けるのか」という点です。
その答えのひとつが、監護の分掌(ぶんしょう)です。

この記事では、監護の分掌の意味、法的根拠、実務のイメージを横浜の離婚弁護士がわかりやすく解説します。

目次

監護の分掌とは?

✔ そもそも監護とは、子どもの日常的な世話や教育などをすることです。
✔ 父母は協議離婚の際に「子の監護の分掌(=役割分担)」について取り決めることができます(改正後民法766条1項)。
✔ つまり「監護者をどちらか一方に決める」方法だけでなく、「父母が役割を分けて監護する」という柔軟な制度です。

【元裁判所書記官からのひとこと】

従前から、親権者と監護者を分けることもできました。しかし、実情としてあまり数は多くはありませんでした。
今後は、共同親権のもとでより柔軟な養育計画を選択できるようになります。

監護者指定と何が違うの?

監護者指定:父母のどちらか一方が子どもと同居し、日常の世話・教育を担う。
監護の分掌:日常生活や教育のルールを父母が決め分担する。

▶ 両者の違いは「一人に決めるか、分担するか」というイメージです。
監護者を必ず一人に絞らなければならないわけではなく、状況に応じて分掌を取り決めることも可能になっています。

分掌の具体例(実務イメージ)

監護の分掌は、家庭の実情に合わせて多様に設計できます。

平日/休日型:
平日は母親が監護、土日祝日は父親が監護 など

決定権の分離型:
教育については同居親に任せ、一定の事項(転居・医療など)は父母で協議して決める など

▶【参考サイト】行政説明(法務省)

監護者(分掌を含む)の権限(民法824条の3)

✔ 子の監護教育
✔ 居所の指定と変更(ただし転居については慎重な判断が必要という見解があります)
✔ 職業の許可や制限

▶ 親権者と監護者を分けた場合には、監護者はこれらの権限を持つことになりますが、監護者を一人に決めない場合には、父母が監護を分担(分掌)することになります。

注意点

✔ 分掌の内容は口約束ではなく、離婚協議書や公正証書などの書面にしておくのが安心です。
✔ 具体的な運用ルール(連絡手段・情報共有方法・費用分担など)を決めておかないと、後にトラブルになる可能性も。

【弁護士コメント】

より柔軟な親子関係を実現できる監護の分掌ですが、具体的なルールづくりがないと、子どもの日常生活が犠牲になりかねません。お子さんを第一に、できるだけ現実的な計画を検討しましょう。

弁護士からのメッセージ

共同親権は選択肢が広がる一方で、離婚後も父母が共同して監護をすることの難しさが伴います。
監護の分掌は、子の利益を守りながら父母双方の関与を確保できる制度ですが、設計を誤ると新たな争いを生むことにもなります。
専門家の助言を受けながら、最善の取り決めを一緒に考えていきましょう。

この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。

この記事の編集・SEO担当者

阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などを担当。現場の知見を生かし、弁護士細江智洋の法律解説に元書記官としての視点をプラスして編集しています。
※ 法律解説は弁護士監修です。

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