親権者変更とは?共同親権への変更手続と判断基準を弁護士が解説

監修:弁護士 細江智洋

この記事のまとめ

  • 婚後の親権者は、家庭裁判所の手続によって変更できます。単独親権から共同親権へ、共同親権から単独親権へ、いずれの変更も可能です。
  • 親権から単独親権へ、いずれの変更も可能です。
  • 改正法の施行前に離婚した場合でも、共同親権への変更を申し立てることができます。
  • 父母が合意していても、協議だけで親権者を変更することはできません。
  • 裁判所は、子どもの利益のため必要があるかを基準に、父母と子との関係、父母相互の関係その他一切の事情を考慮して判断します。
  • 一定の場合には、裁判所は父母の一方だけを親権者と定めなければなりません。

はじめに

令和8年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の親権について、父母双方を親権者とする共同親権を選べるようになりました。

これに伴い、離婚後の親権者変更にも新しい選択肢が生まれました。単独親権から共同親権へ変更することも、共同親権から単独親権へ変更することもできます。

ただし、父母が合意すれば自由に変更できるわけではありません。

親権者の変更には、家庭裁判所の調停または審判が必要です。

この記事では、親権者を変更できる場合、裁判所の判断枠組み、調停・審判の手続、申立ての準備について解説します。

 

▶ 共同親権と単独親権の違いや、親権と監護権の関係については、こちらをご覧ください。
【関連記事】親権・監護権とは?離婚後の親権や監護者の決め方を解説

目次

1.離婚後に親権者を変更できる

離婚時に定めた親権者は、離婚後に変更することができます。改正法の施行により、次のいずれの変更も可能です。

✔️  単独親権から共同親権への変更
✔️  共同親権から単独親権への変更
✔️  単独親権者を父母の一方から他方へ変更

どの方向の変更であっても、家庭裁判所が判断する枠組みは共通です。

 

改正法の施行前に離婚した場合

改正法が施行された令和8年4月1日より前に離婚し、父母の一方だけが親権者となっている場合も、共同親権への変更を申し立てることができます。

法務省の解説資料でも、施行後は、それまでに離婚している父母も、父母の双方を親権者とすることを含む親権者の変更を申し立てることができ、裁判所は子どもの利益のため一切の事情を考慮して判断するとされています。

2.変更には家庭裁判所の手続が必要

親権者の変更は、父母の協議だけですることはできません。
父母双方が変更に合意している場合でも、家庭裁判所の調停または審判によって行う必要があります。

まず家庭裁判所に親権者変更調停を申し立て、調停で話し合いがまとまらない場合には審判手続に移行します。

3.裁判所はどのように判断する?

親権者変更の判断枠組みは、単独親権から共同親権へ変更する場合も、共同親権から単独親権へ変更する場合も共通です。

 

子どもの利益のため必要があると認められるか

家庭裁判所が親権者を変更できるのは、子どもの利益のため必要があると認めるときです(民法819条6項)。
父母のどちらの希望が強いかではなく、変更することが子どもにとって必要かどうかが基準になります。

 

裁判所が考慮する事情

裁判所は、子どもの利益のため、次のような事情を含む一切の事情を考慮します(民法819条7項)。

✔️ 父母それぞれと子どもとの関係
✔️  父母相互の関係
✔️  その他、子どもの利益に関わる一切の事情

「父母と子との関係」には、これまでの養育状況、子どもの年齢や生活環境などが含まれます。
「父と母との関係」については、子どもに関する重要な事項を共同で決められる関係にあるか、DVなどによって安全な協議が難しくないかといった事情が問題になります。

親権者変更では、現在の父母と子どもの関係だけでなく、離婚後これまでどのように子どもの養育に関わってきたかも問題になります。
養育費の支払など養育上の責任を果たしてきたか、子どもの利益のために他方の親と協力する姿勢があったかといった事情も、判断材料になり得ます。

 

必ず単独親権としなければならない場合

裁判所が親権者変更の裁判をする場合にも、父母の一方だけを親権者と定めなければならない場合があります(民法819条7項)。条文が挙げているのは、次の2つです。

1号 父または母が、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
2号 父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあるかどうか、協議がまとまらない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行使することが困難であると認められるとき

2号の「身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」は、身体的なDVに限られません。法務省の解説では、精神的DV、経済的DV、性的DVなどによって父母が互いに話し合うことができない状態にある場合も、この要件に当てはまることがあるとされています。

ただし、単独親権としなければならないのは、この2つに当たる場合だけではありません。
1号と2号は例示であり、どちらにも当たらない場合でも、「その他の事情」を考慮して、父母双方を親権者とすることによって子どもの利益を害すると認められるときは、裁判所は単独親権としなければならないとされています。

さらに、こうした事情がない場合でも、裁判所が子どもの利益のために単独親権と判断することはあります。

 

協議で親権者を定めていた場合

協議離婚のときに父母の話し合いで親権者を定めていた場合には、裁判所は、その協議の経過その後の事情の変更その他の事情も考慮します(民法819条8項)。

協議の経過を考慮するにあたっては、次のような事情も勘案されます。

✔️ 父母の一方から他方への暴力等があったかどうか
✔️  家庭裁判所の調停を利用したかどうか
✔️  裁判外紛争解決手続(ADR)を利用したかどうか
✔️ 協議の結果について公正証書を作成したかどうか

 

親の希望だけでは認められない

親権者の変更は、父母の希望だけで認められるものではありません。

これまで子どもの養育に関する責任を十分に果たしていない場合や、変更後の親権行使の方法が現実的でない場合など、変更が子どもの利益にかなわないと判断されるときには、申立てが認められないことがあります。

4.単独親権から共同親権へ変更したい場合

単独親権から共同親権への変更を求める場合には、変更後に父母がどのように親権を行使するのかを具体的に説明できるかどうかが重要になります。

 

養育費の支払状況

法務省の解説資料では、親権者でない親が、一定の収入があるにもかかわらず合理的な理由なく長期間にわたって養育費の支払を怠っていた事情は、共同親権への変更においてマイナスに評価される事情になりえます。
つまり、養育費の支払は、子どもの養育に関する責任を果たしてきたかどうかを示す事情として扱われます。

 

父母が協力できる関係にあるか

共同親権では、子どもの居所、進学先、重大な医療行為などを父母が共同で決めることになります。
そのため、父母が子どもの養育について最低限のやり取りができる関係にあるか、これまで相手の人格を尊重し、協力する姿勢を保ってきたかが問題になります。

 

変更後の運用を示せるか

共同親権への変更では、「自分も親権者になりたい」という希望だけでなく、変更後に父母が実際に共同して親権を行使できる関係にあるかも問題になります。

そのため、共同親権への変更を考える場合には、たとえば次のような点について、現実にどのように対応できるかを整理しておくことが大切です。

● 父母の連絡方法
● 学校や医療に関する情報の共有方法
● 進学、転居、医療などの決め方
● 意見が食い違った場合の対応

5.共同親権から単独親権へ変更したい場合

共同親権を選択して離婚した後に、父母が共同して親権を行使することが難しくなった場合には、単独親権への変更が問題になります。


共同での意思決定が機能していない状況

子どもの進学や医療などについて協議ができず、必要な決定が滞っている場合には、その具体的な経過を示すことが重要です。
いつ、どのような事項について、どのように協議を試み、その結果どうなったのかを記録として残しておくと、状況を説明しやすくなります。

 

養育費が支払われない場合

法務省の解説資料では、共同親権と定めた後に養育費の支払義務を負う親が支払をしない場合について、そのことのみによって直ちに単独親権への変更が認められるものではないが、支払がされなくなった事情によっては、単独親権に変更することが相当と判断される場合もあり得るとされています。

 

後から判明したDVや虐待

離婚時には話すことができなかったDVの被害を後から話せるようになった場合や、子どもが以前の虐待の事実を述べた場合はどうなるのでしょうか。

法務省の解説資料では、一度親権者を定めていた場合であっても、前回親権者を定めたときより前の重要な事情が新たに判明したときには、そのような事情も考慮され得るとされています。

離婚時に主張できなかった事情が、変更の場面で改めて検討される可能性があります。

6.親権者変更調停・審判の手続

申立てができる人

親権者変更の申立てができるのは、子どもまたはその親族です。実際には、父または母が申し立てることが一般的です。

 

申立先

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申し立てます。

 

費用

収入印紙1200円分(子ども1人につき)のほか、連絡用の郵便料が必要です。郵便料は裁判所ごとに異なるため、申立先の家庭裁判所に確認してください。

 

主な必要書類

● 申立書
● 事情説明書
● 進行に関する照会回答書
● 送達場所等届出書
● 申立人、相手方、子どもの戸籍謄本
● 子どもが15歳以上の場合は、親権者変更についての同意書

書式は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
必要書類は裁判所によって異なることがあるため、申立先の家庭裁判所のページもあわせて確認してください。

 

調停で確認される事情

家庭裁判所では、親権者を変更したい理由だけでなく、離婚時に親権者を定めた経緯その後の養育状況父母双方の家庭環境子どもの年齢や生活状況父母それぞれとの関係などを確認しながら手続を進めます。

さらに、親権者を変更した後に、子どもがどのような生活を送り、父母がどのように養育や親権行使をしていく予定なのかも重要です。

親権者変更は、父母の権利関係を調整するためだけの手続ではありません。
変更によって子どもの生活がどのように変わるのか、子どもの健全な成長にどのような影響があるのかが重視されます。

また、審判では、当事者の陳述のほか、子どもが15歳以上の場合には、その子の陳述を聴かなければならないとされています(家事事件手続法169条2項)。

15歳未満の場合も、家庭裁判所は年齢や発達の程度に応じて子どもの意思を把握し、考慮します。

 

調停が成立しない場合

調停で話し合いがまとまらない場合には、審判手続に移行し、裁判官が判断します。
審判では、3で説明した枠組みに従って、親権者の変更が子どもの利益のため必要かどうかが判断されます。

7.申立てを考えるときに整理しておきたいこと

親の希望だけでなく、子どもへの影響を考える

「自分も親権者になりたい」「相手と共同で決めたくない」という希望だけでなく、親権者の変更によって子どもの生活がどのように変化するのかを考えましょう。

子どもの居所、学校、医療、日常生活がどのように変わるのかを具体的に整理することが重要です。


変更後の運用を具体的に考える

制度上変更できるかどうかだけでなく、変更後の生活で実際に運用できるかどうかが重要です。
共同親権へ変更する場合には、監護者を指定するか、監護を分担するかもあわせて検討することになります。

▶ 共同親権で意見が合わない場合の手続については、こちらをご覧ください。
【関連記事】親権行使者の指定とは?共同親権で意見が合わないときの手続

▶ 監護者指定と監護の分掌については、こちらをご覧ください。
【関連記事】監護の分掌とは?共同親権下の監護者指定との違いを解説


現在の養育状況を客観的に整理する

これまで誰が子どもの世話をしてきたのか、現在どのような生活をしているのか、子どもが父母それぞれとどのような関係にあるのかを整理しましょう。

学校や保育園との連絡、通院、生活時間、父母間のやり取りなど、具体的な事実や資料が重要になることがあります。

8.親権者変更で迷ったら弁護士に相談を

共同親権と単独親権のどちらが適しているかは、父母の関係だけでなく、子どもの年齢、生活状況、監護体制によって異なります。

また、親権者変更が認められるかどうかは、変更を希望する理由だけでなく、離婚時からの経過や、変更後に父母が実際に親権を行使できるかによって判断されます。

弁護士に相談することで、家庭裁判所の判断基準を見据えながら、必要な事情や資料を整理できます。

 

9.弁護士からのメッセージ

共同親権の導入により、離婚時だけでなく、離婚後にも親権の在り方を見直す選択肢が生まれました。

とはいえ、親権者を変更すれば、直ちに子どもとの関係や父母間の問題が解決するわけではありません。

共同親権へ変更する場合には、子どもの生活をどのように支え、重要な事項をどのように決めるのかまで具体的に考える必要があります。
単独親権へ変更する場合にも、これまでの経過を整理して説明することが求められます。

私は、離婚・男女問題を長年取り扱ってきました。その経験を踏まえ、親権者変更の手続だけでなく、監護者指定や親権行使の方法まで含めて、個別の事情に応じた解決方法をご提案します。

お一人で悩まず、まずはご相談ください。

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主な参考資料

この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。

この記事の編集・SEO担当者

阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などを担当。現場の知見を生かし、弁護士細江智洋の法律解説に元書記官としての視点をプラスして編集しています。
※ 法律解説は弁護士監修です。

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