夫・妻の「使い込み」でお悩みの方へ

こんなお悩みはありませんか?

  • 妻に家計の管理を任せていたら、まったく貯金できていなかった
  • 夫がギャンブルにお金を使い、貯金を使い果たしてしまった
  • 妻が家を出ていき別居が始まったが、通帳が持ち出され預金が引き落とされている
  • 夫が趣味にお金を使い、生活費が足りないので貯金ができない

夫婦間のトラブル・お悩みの中でも、「金銭感覚の違い」「浪費癖」といったお金に関する問題は、異性問題と並ぶほど多く寄せられるご相談の一つです。
しかし、不倫やDVのような明確な「不法行為」とは異なり、「お金の使い込み」の問題は、直ちに「離婚」や「慰謝料」が認められるとは限らない難しい問題でもあります。

このページでは、夫・妻の「使い込み」についてお悩みの皆さまに向けて、「使い込み」が原因で離婚・慰謝料請求できるか財産分与はどうなるか夫・妻の借金について返済義務はあるか等を、横浜の離婚に強い弁護士がわかりやすく解説いたします。

目次

離婚や財産分与で問題となる「使い込み」とは?

このセクションのまとめ

✔ 生活費や子どもの教育費、医療費、家族の旅行・レジャー費用などで使った金銭は、通常、「問題となる使い込み」とはみなされません
✔ 夫婦の財産から常識から逸脱した金額を、個人的な目的で支出した場合には、離婚裁判や財産分与において「問題のある使い込み」と判断される可能性があります

夫婦の金銭感覚の違いに起因して、「思ったより貯金できていない」「夫が趣味にお金をかけている」「化粧品・洋服代が高すぎる」というお悩みを抱く方がたくさんいらっしゃいます。しかし、貯金できていないことや少々趣味やおしゃれにお金をかけることが、すべて裁判上の離婚原因や慰謝料の原因になるわけではありません

裁判上の離婚や財産分与に影響を及ぼす「使い込み」とは個人的な目的で、家計の収入や資産状況からして常軌を逸した支出を、夫婦の財産を原資に行う場合をいいます。

問題のある「使い込み」といえるかどうかの判断基準

① 目的は、生活費、子どもの教育費、医療費、家族のレジャー費用など家族のためか、個人的なものか
② お金の出どころは夫婦の「共有財産」か「特有財産」か
※ 特有財産とは、夫婦の一方が結婚前から有していた財産や、相続など「夫婦の協力」とは無関係に得た財産をいいます。夫婦どちらかの収入であっても、結婚後は結婚生活を維持するための「共有財産」にあたります。
③ 支出額が家庭の経済状況に照らして異常といえるか

「使い込み」が原因で離婚できる?

このセクションのまとめ

✔️ 夫婦の合意があれば、理由を問わず離婚できます
✔️ 相手が離婚に応じない場合には、離婚裁判になり、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかが問題になります
✔️ 夫婦の収入に比して不当に高額な借入を繰り返し自力で返済できなくなった場合や、非違行為を繰り返し、夫に多額の借金をさせて生活難に陥らせたケースでは離婚が認められる可能性が高いです
✔️ 「使い込み」を理由として離婚裁判をするには「証拠」が必要です
✔️ 「使い込み」が「婚姻を継続し難い重大な事由」とまではいえない場合でも、別居期間が長ければ離婚が認められやすくなります

1 夫婦の「合意」があれば離婚は可能です

離婚手続きは、「離婚協議⇒離婚調停⇒離婚裁判」と進んでいきます。
このうち「離婚協議」と「離婚調停」は夫婦の合意を前提とした手続きですから、「離婚したいと思った理由」がなんであれ、「夫婦の合意」があれば離婚できます

2 相手が離婚に応じない場合には、裁判で離婚できるかが問題になる

離婚裁判は、離婚が認められるかどうかについて裁判官が法律上の判断をする手続きです。離婚が認められるためには、民法770条1項の要件を満たす必要があります。

民法770条1項

夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

① 配偶者に不貞な行為があったとき(いわゆる不倫)。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

夫・妻が「常軌を逸した使い込み」をしたケースは、770条1項の①から④にはあてはまらないので、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となります。
「使い込み」で離婚が認められるかどうかは、事案ごとの個別の判断によりますが、離婚が認められた裁判例としは、以下のようなケースがあります。

裁判例

✔ 夫の収入と比較して不相当に高額な借り入れやカードの利用を繰り返し、自分だけでは返済できない金額になっていた(東京地裁判決平成12年9月26日。判例タイムズ1053号215ページ)。
✔ 競馬・パチンコなどのギャンブルで多額の浪費をするし、就労にあたって夫に無断で身元保証人にするなどの非違行為を繰り返し、夫に多額の借金をさせて生活難に陥らせた(東京家裁審判昭和41年4月26日。判例タイムズ209号268ページ)。

3 使い込みが原因で裁判離婚するには証拠が必要です

合意で離婚できず離婚裁判をする場合には、相手が「常軌を逸した使い込み・浪費をした」という「証拠」が必要になります。
使い込みの証拠としては、クレジットカードやローンの明細書、高額な買い物の領収書、夫婦の収入がわかる資料、通帳、家計簿などが考えられます。

4 相手が「常軌を逸した使い込み・浪費をした」とまではいえない場合は?

相手の浪費が「常軌を逸した」ものとまではいえない場合でも、「婚姻関係が修復不可能な程度に破綻している」と認められれば、裁判で離婚が認められる可能性が高くなります。具体的には、別居期間が長い場合には、「婚姻関係が修復不可能な程度に破綻している」と認められやすくなります(目安は3年)。

使い込みの問題は、通常「財産分与」で決着をつける

このセクションのまとめ
✔️ 問題のある使い込みのケースでは、財産分与の割合が2分の1から修正されることがあります

1 財産分与とは

財産分与とは、結婚生活中に夫婦の協力によって築いた財産を、離婚の際に清算する(分け合う)ことです。財産分与は、離婚の時から2年以内に請求する必要があります(令和6年に民法が改正されました。この改正民法の施行後は5年以内になります)。

2 財産分与の対象は夫婦の「共有財産」

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が築いた「共有財産」です。具体的には、現金、預貯金、不動産、株式などの有価証券、解約返戻金がある生命保険など、あらゆる財産が対象となります。
他方で、夫婦の一方が結婚前から有していた財産や、相続など「夫婦の協力」とは無関係に得た財産を「特有財産」といい、これは財産分与の対象にはなりません

3 財産分与の「2分の1ルール」について

財産分与の割合は、専業主婦であるか共働きかを問わず、原則として2分の1ずつに分けるというのが現在の実務での取り扱いです。例外として、夫婦の一方の特殊な能力や過酷な労働などによって多額の収入を得て財産を形成した場合には、6:4や7:3に財産分与の割合が修正されることがあります。例えば夫婦の一方が医師の場合や有名なスポーツ選手、芸能人などの場合がこれにあたります。

4 問題のある「使い込み」があれば「2分の1ルール」が修正される

夫婦のどちらかがギャンブルなどの浪費で財産を減らした、常軌を逸した使い込みをしたといった場合には、夫婦の「共有財産」に対して「負の貢献をした」ことになりますから、財産分与において、財産を受け取る割合を少なく修正されます。例えば、通常は5:5の割合による財産分与が6:4に減らされるというイメージです。

5 解決事例のご紹介

離婚解決事例19 多年に渡る妻の使い込みを考慮させて財産分与額を大きく抑えた事例クリック)

「使い込み」で慰謝料請求できる?

このセクションのまとめ

✔️ 「使い込み」を理由とした慰謝料請求は、不可能ではないが難しいことが多いです
✔️ 「使い込み」をした相手は「支払能力」がなく、慰謝料を払えないことが多いので注意が必要です

1 「使い込み」を理由とした慰謝料請求は、不可能ではないが難しいことが多いです

離婚時に相手に慰謝料請求できるのは、相手に不法行為にあたる有責な行為があった場合です。たとえば不貞(不倫)やDVなどが典型的なケースです。
これに対して「使い込み」は、直ちに不法行為とまではいえません慰謝料が認められるかどうかは、使途や金額、浪費を行った期間やそれにより被ったあなたの精神的損害の程度などによってケースバイケースですが、正直難しいところです。

もっとも、それは「裁判」で慰謝料が認められるかという問題であり、交渉段階で相手が「使い込み」を認めて慰謝料の支払いに合意することもあります
ただし、通常は慰謝料よりも財産分与での調整の方が相手も納得しやすい傾向にあります。

2 相手の支払い能力には注意が必要です

交渉や裁判により、慰謝料が認められたとしても、「相手がきちんと決まった金額を支払うかどうか」には注意が必要です。なぜなら、「使い込み」をするような相手は、お金がないことがほとんどだからです。

3 お金がない相手からの支払いを確保する方法は?

財産分与で解決できず、現状も手持ちの資産が不足している相手から慰謝料の支払いを確保する方法としては、分割払いで支払いを受けることになります。
相手に給料などの定期的な収入がある場合に、「強制執行認諾文言付き公正証書」の作成や、「調停」の手続きを経ていれば、、最終的に給料の差し押さえを行うことができます。判決で一括払いが命じられて支払いを受けられない場合にも、給与の差し押さえをして、実質的には毎月の給与の一部から回収する分割払いの状態になります。

別居後の「使い込み」はどう扱われる?

このセクションのまとめ
✔️ 別居時の財産の持ち出しは、違法とはいえないケースが多いです
✔️ 財産分与の対象となる財産は、「別居時」を基準に判断されるので、持ち出された財産も財産分与の対象になります

1 別居時の財産の持ち出しは違法ではないことが多い

別居時に、夫婦の一方が預貯金や自動車などの財産を持ち出すケースがよくありますが、別居をしていても婚姻関係は続いており、夫婦の財産を持ち出したからといって直ちに違法というわけではありません

2 別居後の「使い込み」と財産分与の関係は?

まず、財産分与の対象となる財産かどうかは、「別居時」にあった財産かどうかで判断されます。
別居時に夫婦のどちらかがある財産を持ち出したとしても、「特有財産」にあたるもの以外は財産分与の対象となる財産です。
したがって、例えば別居時に300万円あった預金を相手が別居後使い込んで残りが100万円になったとしても、財産分与の対象となる財産は別居時に存在した300万円ですから、財産分与の割合が5:5であれば、あなたは相手に150万円の支払いを請求できることになります。

また、別居時に持ち出した預貯金を生活費や子供の養育に使った場合婚姻費用の取り決めが別途されていれば使い込みと判断されます。他方、婚姻費用が決まていない場合には、過去の未払い婚姻費用の一部に充当する処理をすることもあります。

夫・妻がした借金を返済しなければならない?

このセクションのまとめ

✔️ 原則として支払う必要はありませんが、例外として①日常家事債務にあたる場合と②保証人・連帯保証人になっている場合には支払義務が生じます

原則 夫婦であっても借金をした本人が返済すべきであり、配偶者に返済義務はありません。

例外① 家事債務の連帯責任
民法761条は、「夫婦の一方が日常の家事に関し第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」と定めています。
日常の家事に関する債務(家事債務)とは、日常生活に必要なものの購入や契約の締結によって生じる債務で、食品や日用品、ガスや水道の契約などによる債務が典型的な例です。ただし、「家事債務」にあたるかどうかはその夫婦の社会的地位や職業、収入などによって個別に判断されるとされています。

例外② 保証人・連帯保証人になっている場合
相手の借金について、あなたが保証人や連帯保証人になっていないかには注意が必要です。
最悪の場合、相手が返せなくなった借金の肩代わりをしたり、あなたの名義にやっている不動産が差し押さえられてしまう恐れがあります。

チェックリスト:こんな状況は要注意です

  • 預貯金が大幅に減っている
  • 家計に見合わない高額な支出がある
  • 通帳やカードの管理が不透明
  • 相手がギャンブルにハマっていたり、浪費癖があるようだ

「使い込み」の問題を弁護士に相談すべき理由

夫や妻の「使い込み」は、DVや不倫のように明らかな違法行為ではないため、法律的に非常に判断が難しい問題です。「貯金ができていない」「趣味にお金を使いすぎている」と感じても、それがすぐに慰謝料や離婚の理由になるとは限りません。
その一方で、相手の行動が常軌を逸した浪費といえる場合には、離婚原因となったり、財産分与の割合に影響を及ぼしたりする可能性があります。つまり、「使い込み」に該当するかどうかを客観的な証拠や法律の視点から判断し、裁判所での手続きも見据えた交渉が必要になります。

弁護士に相談する具体的なメリット

✔️ 証拠として何を集めるべきか、どのように保全すべきか具体的なアドバイスが得られる
✔️ 離婚協議・調停・裁判など、離婚手続き全体の流れを見据えた戦略を立てられる
✔️ 離婚協議・調停の段階から、財産分与や慰謝料について法律の知識を前提とした交渉ができる
✔️ 相手との交渉を弁護士に委ねられるので、精神的負担を軽減できる

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「この状況は本当に問題になるのか?」「自分に何かできることはあるのか?」といった素朴な疑問にも、ていねいに、率直にお答えいたします。
横浜で離婚問題を取り扱って10年以上、年間150件以上のご相談実績を持つ弁護士が対応しますので、安心してご相談ください。あなたが前に進む一歩を、法的な側面から全力でサポートいたします。

 

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この記事を担当した弁護士
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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋

神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

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