弁護士細江コラム|法とこころを見つめる弁護士の視点

2026.05.29更新

細江コラム1

 

「本屋で、立ち止まる」

 

スマートフォンを開けば、
欲しい情報はすぐに見つかる時代になりました。

本も、Amazonで検索すれば、早ければ翌日には届きます。
電子書籍なら、その場で読むこともできます。

実際、私自身も、目的の本を探すときは
Amazonを使うことが多いです。
効率だけを考えれば、その方が圧倒的に便利だからです。

そんな中、書店が減り続けているという記事を目にしました。
全国の書店数はピーク時から半減以上となり、
「書店ゼロ」の自治体も増えているそうです。

けれども、私は本屋が好きです。
本屋を見かけると、特に用事がなくても、
つい立ち寄ってしまいます。

様々な種類の雑誌や新刊、ベストセラーの文庫本。
棚を見ているだけで、
普段はあまり触れることのない趣味や
専門領域への入り口が、
目の前に広がっています。

本屋の良さは、「目的の本」を
手に入れられることだけではありません。
むしろ、自分では検索しない本に
出会えることにある気がします。

気になるタイトル。
個性的な装丁。
おすすめのPOPを見て、何となく手に取った本。

そこで私は、それまで知らなかった
思いがけない趣味の世界に出会うことがあります。
そういう偶然の出会いは、
ネット上では起きにくいように感じます。

Amazonのおすすめ機能は、とても便利です。
けれど、それは基本的に、「過去の自分」をもとにした提案です。

一方、本屋には、「まだ知らない世界」と
出会わせる力があります。

法律、歴史、哲学、AI、経済、音楽。

棚を歩いているだけで、
頭のモードが少しずつ切り替わっていく感覚があります。
忙しい日常の中で、本屋は、
効率よく必要な情報を探す場所というよりも、
普段の自分の関心から少し離れて、
新しい分野に触れることができる場所なのかもしれません。

もっとも、便利さという意味では、
電子書籍の優位性は明らかです。
持ち歩きや検索は圧倒的に楽ですし、
仕事でも非常に助かっています。


だから私は、「紙か電子か」という対立ではなく、
両方を自然に使える形に進化していく方が
良いのではないかと思っています。

たとえば、紙の本を買ったら、
電子版も自由に読めるようになる。
そうなれば、紙の本を手に取る楽しさと、
電子書籍の便利さの両方を満たせます。

文化を守るというと、昔の形を
そのまま残そうという話になりがちです。
しかし、本当に必要なのは、
「今の時代に合った形に進化させながら残すこと」
なのかもしれません。

効率だけを考えれば、電子書籍は合理的です。
それでも、必ずしも合理性だけでは語れない価値が、
本屋にはあるように思います。

本屋が減っているというニュースを見ながら、
そんなことを考えました。

弁護士 細江 智洋

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