共同親権とは?改正民法で変わるポイントと実務のイメージ
監修:弁護士 細江智洋
この記事のまとめ
- 改正により「共同親権 or 単独親権」の選択が可能になる。
- 共同親権を選んだら、親権行使のルールや監護の在り方を決める必要がある。
- 監護者を一方に指定する方法のほか、「監護の分掌」による柔軟な分担も可能に。
- 合意できないときは家庭裁判所が子の利益を基準に決める。
はじめに
令和6年の民法改正で、離婚後の親権は「単独親権」か「共同親権」かを選べるようになります(令和7年10月現在未施行。令和8年5月24日までに施行)。
「離婚後はどちらかの単独親権」というルールが大きく変わります。
ただし「共同親権を選べばすべて解決」ではありません。共同親権のもとでも、どちらが子どもと暮らすか、日常生活や教育、医療の決定をどうするのかといった、あらたなトラブルが想定されます。
この記事では、共同親権の基本から、監護者指定や監護の分掌まで、改正内容を踏まえてわかりやすく解説します。
目次
共同親権・単独親権は「選択制」
✔ 離婚後は「共同親権」か「単独親権」かを父母が選べることになります(改正民法819条1項)。
✔ 父母で合意できれば共同親権が可能ですが、合意できなければ家庭裁判所が「子の利益」を最優先に「共同親権・単独親権」を判断します。
✔ 暴力やDVなどがある場合には、単独親権としなければならないと定められています。
共同親権を選んだら「行使方法」を考える
基本ルール(民法824条の2)
✔ 親権は父母が「共同して行う」が原則。
✔ ただし例外的に、一方だけで行使できる場合があります。
〈一方だけで行使できる場合〉
1. 他方が不在や重病などで親権行使できないとき
2. 子の利益のために急迫の事情があるとき(入学手続・緊急医療・DV避難など)
3. 子の食事・衣類・習い事といった日常行為
4. 家庭裁判所が特定事項について単独行使を認めたとき
共同で決めるべき主な事項
✔ 子どもの居所指定や転居
✔ 進学先の決定
✔ 重大な医療行為(手術など)
✔ 長期勤務を前提とする就業の許可
監護者指定と「監護の分掌」
監護者指定とは
✔ 子どもと同居し、身の回りの世話や教育を担う人を「監護者」といいます(民法766条)。
✔ 共同親権を選んだ場合でも、日常的に子どもと暮らすのはどちらかを決める必要があるときは「監護者指定」が問題になります。
✔ 監護者は、子の監護教育・居所の指定や変更・職業の許可を行う権限があります(改正後民法824条の3第1項)。
監護の分掌とは
✔ 監護者を一方に決めなくても、父母で役割を分け合うことができるようになります。これが「監護の分掌」です。
【例】
・ 平日は母親が監護、週末は父親が監護する
・ 医療判断は共同、日常的な食事や衣服は主に母親が行う
▶ 最新Q&Aでも「監護の分掌」は柔軟な制度として解説され、実務上も増えていくと考えられます。
参考:法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」
▶ 詳しくは、【関連記事】[監護の分掌とは?共同親権を選んだときの柔軟な運用方法]をご覧ください。
家庭裁判所が判断するケース
✔ 父母の合意が整わない場合や裁判離婚の場合には、家庭裁判所が「子の利益のため」に「共同親権か単独親権か、どちらの単独親権か」を判断します。
✔ 裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して親権の判断を行います。
✔ 虐待やDVなどの事情があれば、裁判所は単独親権の判断をします。
弁護士からメッセージ
残念ながら、共同親権が導入されても、子どもを巡る紛争は依然として生じるものと考えられます。
今後も、実際にどうやって子どもの生活を守るのか、そのルール作りがとても重要です。
離婚後の親権やお子さんとの関係に不安がある方、相手との協議が難しいと感じる方は、ぜひ早めにご相談ください。
この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。
この記事の編集・SEO担当者
阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などを担当。現場の知見を生かし、弁護士細江智洋の法律解説に元書記官としての視点をプラスして編集しています。
※ 法律解説は弁護士監修です。