1.特許権について【知的財産】

⑷ 特許権を侵害されたとき/特許権を侵害されたと主張されたとき

特許権を侵害されたときは、侵害者に対して侵害行為の差止請求と、侵害によって被った損害の賠償請求を求めることになります。

侵害行為の差止請求

侵害行為の差止請求は、具体的には①侵害行為そのものの停止の請求、②侵害の予防の請求、③侵害行為を組成した物(物を生産する方法の発明については侵害行為によって生産された物を含む)の廃棄、侵害行為に供した設備の除却、その他侵害の予防に必要な措置の請求を行うことができます(特許法100条)。

損害の賠償請求

一方、特許権侵害を理由として損害賠償請求する場合、ネックになる一つが損害額の立証です。
特許権侵害が発生した場合の特許権者の損害額は高額に上ることが多いですが、特許権侵害と相当因果関係のある損害額となると立証が困難で低額にとどまることがあります。

そのような事態を避けるために、特許権侵害によって特許権者に損害が発生した場合、特許権侵害と相当因果関係のある損害について、特許法102条各項にて推定規定を設けています。

平たく申し上げるならば、特許権者自ら特許製品を製造販売しているような場合には、以下の計算式で算出された金額を一般的に損害額として推定されています。

(計算式)損害額=侵害者の譲渡等数量×権利者の単位当たりの利益-権利者の実施能力を超えた部分に相当する金額

また、特許権者がライセンス契約を結んでいて自ら特許製品を製造販売していない場合には、以下の計算式で算出された金額を一般的に損害額として推定されています。

(計算式)損害額=使用料相当額(=侵害者の譲渡数量×権利者の単位当たりの実施料)

特許権の設定登録がされていない場合

一方、特許権の設定登録がされていない場合には、差止請求をすることができませんし、損害額の推定規程も適用されません。

ただし、当該技術的思想がノウハウや会社の営業上の秘密等に該当する場合には、不正競争防止法2条1項各号の要件に該当する場合には不正競争防止法に基づいて損害賠償請求や差し止め請求をすることができる場合があります。

また、不正競争防止法上の要件を満たさない場合でも、民法709条の要件を満たす場合には損害賠償請求をすることは可能です。

もっとも、特許法上の要件も不正競争防止法上の要件も満たさない場合に、民法に基づいて差し止め請求をすることはほぼ不可能ですし、不正競争防止法上の要件を満たすことは極限的な事例に限られますので、特許権の設定登録をすることができる場合には、直ちに特許権の設定登録をすべきです。

特許権の登録によるもう一つのメリット

なお、特許権を登録しておくメリットはもう一つあります。
それは、特許権の侵害行為があった場合には、当該侵害行為について過失が推定されるというものです。

これも損害額の推定規定同様、特許権者保護のために設けた推定規定であり、特許権の侵害行為を行った者に過大な立証責任を負わせるものでもないという理解から設けられた推定規定です。

大事な技術を特許権の設定登録を行って公開することに躊躇いがあるお気持ちは分かりますが、上述のメリットに鑑みると、大事な技術だからこそ特許権の設定登録を行って公開して、権利保護を図ったり権利の活用を図ったりすることも一案だと考えています。

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