調停委員に不満・不信感を感じたら?
監修:弁護士 細江智洋
まずは知っておきたいポイント
調停委員の言動に違和感を覚えたときは、次の点を意識することが大切です
• 違和感を感じること自体は珍しくありません
• 感情的な抗議よりも「事実」を整理して伝えることが重要です
• 必要であれば書面で意見を提出する方法もあります
この記事では、元裁判所書記官の視点から、調停委員に不信感を抱いたときの現実的な対応方法を解説します。
はじめに
離婚調停を経験された方の中には、次のように感じる方も少なくありません。
• 「調停委員の発言に違和感がある」
• 「こちらの話を十分に聞いてもらえていない気がする」
• 「価値観を押し付けられているように感じる」
調停を経験して初めて、「こんなものなのか」と戸惑う方も多いと思います。
離婚調停は、人と人が向き合う手続きです。
そのため、調停委員の言葉や進め方に違和感を覚えること自体は、決して珍しいことではありません。
ただし、感情的に抗議するだけになってしまうと、かえって話し合いが進みにくくなることがあります。
では、調停委員の言動に疑問や不信感を抱いた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
この記事では、弁護士監修のもと、元裁判所書記官の視点から、
• 調停委員に違和感を抱いたときの考え方
• 裁判所に問題を伝える際の注意点
• 書面で意見を提出する方法
について、実務に即して解説します。
目次
1 調停委員に不満や違和感を抱くことは珍しくありません
離婚調停では、夫婦の価値観や生活事情、これまでの経緯などが話し合われます。
その過程で、調停委員の発言や進行方法に違和感を覚える方もいます。
まず理解しておきたいのは、調停委員は裁判官ではないという点です。
調停委員は、一般市民の中から選ばれた非常勤の職員で、当事者双方の話を聞きながら合意形成を支援する役割を担っています。
中には弁護士や元家庭裁判所調査官など、法律や家庭裁判所の実務に関わってきた経験を持つ人が調停委員として関わることもあります。
ただ、いずれの場合でも調停委員は裁判官とは異なり、当事者同士の話し合いを調整する立場です。
そのため、それぞれの経験や価値観が発言や進行の仕方に表れることもあります。
例えば
• 家庭の役割についての考え方
• 夫婦関係の見方
• 子育てに関する価値観
などについて、当事者の感覚とは異なる意見が示されることもあります。
このような場面で「おかしいのではないか」と感じること自体は、決して珍しいことではありません。
違和感があれば、調停の場でそのまま言葉にして構いません。
むしろ、当事者が考えていることを率直に伝えることは、調停の話し合いにとって大切です。
ただし、怒りだけで反論してしまうと、話し合いの焦点がずれてしまうことがあります。
その結果、本来の目的である条件整理や合意形成が進みにくくなることもあります。
大切なのは、「何が問題だと感じたのか」を整理して伝えることです。
【ここまでの整理】
調停委員に違和感を感じた場合、重要なのは次の点です。
• 調停は勝ち負けを決める場ではない
• 条件整理と合意形成が目的
• 感情ではなく「事実」を整理して伝える
そのため、違和感を感じたときは「何が起きたのか」を具体的に整理しておくことが大切です。
2 なぜ感情的な抗議だけでは調停が進みにくいのか
離婚調停は、裁判のように勝ち負けが決まる手続ではありません。
当事者同士が合意できる条件を見つけることが目的です。
そのため、調停の場では双方の話を聞きながら、合意できるポイントを探る形で話し合いが進められます。
調停委員の言動に疑問や怒りを感じた場合でも、意見を伝えること自体は何ら問題ありません。
ただし、感情的な抗議に終始してしまうと、
• 何が問題なのかが共有されにくくなる
• 話し合いが感情的な応酬になってしまう
といった状態になり、本来進めるべき条件整理や合意形成が進みにくくなることがあります。
裁判所の手続きは、基本的に記録として残る情報をもとに進みます。
そのため、調停委員の言動に疑問を感じた場合には、
• どの調停期日に
• どのような発言ややり取りがあり
• どの点に違和感を覚えたのか
といった点を整理して伝えることが重要です。
3 調停委員の言動に疑問を感じたときの基本的な対応
調停委員の発言や進行方法に疑問を感じた場合には、まず次の3点を整理しておきましょう。
1. いつの調停で起きたのか
2. どのような発言ややり取りがあったのか
3. その発言によってどのような影響を感じたのか
できるだけ具体的に記録しておくことが大切です。
例えば
「○月○日の調停で、調停委員から『~』という発言があった」
というように、日時と発言内容を整理しておくと、後から説明しやすくなります。
そのうえで、必要に応じて書記官に状況を伝えることになります。
4 裁判所に意見を伝えるなら書面で提出する方法もあります
調停委員の言動について裁判所に意見を伝える方法として、書面を提出するという選択肢があります。
電話や口頭で伝えた場合、内容が十分に共有されないこともあります。
書面であれば、問題点を整理して伝えることができます。
書面を書く際には、次の点を簡潔にまとめましょう。
• 日付・事件番号・調停期日
• 問題と感じた発言の内容
• 調停への影響
• 要望
重要なのは、感情ではなく事実を書くことです。
「失礼だった」「偏っている」といった評価よりも、
「○月○日の調停において、調停委員から次の発言がありました」
というように、具体的な状況を説明する形にすると伝わりやすくなります。
5 調停委員に不信感を伝えるときに知っておきたいこと
調停委員が交代する可能性はある?
強い不信感を抱いた場合、「調停委員を変更してほしい」と考える方もいます。
事情によっては交代となる可能性はありますが、当事者の希望だけで決まるものではありません。
調停の状況や主張内容などを踏まえて、裁判官が判断します。
実務上、交代が行われるケースはそれほど多くなく、同じ調停委員が担当し続ける可能性も十分あります。
裁判所の対応が当事者に詳しく説明されるとは限らない
意見を伝えた場合、裁判所内部で状況が共有されたり、調停の進行について調整が行われたりすることもあります。
ただし、どのような対応が取られたのかが当事者に詳しく説明されるとは限りません。
そのため、「どう対応されたか」を確認することを目的にするよりも、
問題だと感じた発言や状況を整理し、書面で冷静に伝えることに集中する方が現実的です。
【元裁判所書記官からのひとこと】
調停の場で不満を感じること自体は、決して珍しいことではありません。
書記官時代によく見かけたのは、電話で長時間のクレームを伝えるケースです。ただ、電話でのやり取りは記録として残りにくく、状況が共有されないまま終わってしまうこともあります。
一方で、日時や発言内容を整理した書面が提出されると、裁判所内部でも状況を把握しやすくなります。
調停委員の言動に疑問を感じたときは、感情的な抗議ではなく、事実を整理して冷静に伝えることが大切です。
▶︎ 調停は慣れない環境の中で進む手続きです。
違和感や不安を感じたときは、一人で抱え込まず、状況を整理しながら対応を考えていくことが大切です。
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この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。
この記事の編集・SEO担当者
阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などの家事事件を担当。
裁判所での実務経験を踏まえ、弁護士細江智洋の法律解説に、
「調停の現場で実際に起きていること」が伝わる視点を加えて編集しています。
※法律解説は弁護士監修です。















