離婚調停を申し立てたら書記官に何を伝える?

監修:弁護士 細江智洋

はじめに

裁判所から書類が届いた、あるいは申立書類を手に入れた。
手続きの説明は一通り受けた。
でも
「自分のこの事情、書いていいのか」
「書記官にどこまで伝えていいのか」が分からない——この記事はその疑問に答えます。

目次

1 離婚調停の手続は「書記官とのやり取り」から始まります

離婚調停を申し立てると、家庭裁判所からいくつかの書類が届きます。
その中には、たとえば次のような書面が含まれています。

• 事情説明書
• 進行に関する照会書(進行照会書)
• 送達場所等届出書

裁判所では、これらの書面を通じて、調停を進めるうえで必要な事情を確認しています。

ただ、実際には

「ここまで書いていいのだろうか」
「書記官にどこまで話していいのだろう」

と迷う方も少なくありません。

この記事では、家庭裁判所の元書記官の視点から、
離婚調停の手続において書記官に伝えておくとよい事情や注意点について解説します。

2 家庭裁判所では事情を確認する書式が用意されています

庭裁判所では、調停の進め方を検討するために、当事者の事情を確認する書面が用意されています。

代表的なものが
「進行に関する照会書(進行照会書)」です。

この書面では、例えば次のような事項を記載します。

• これまでの話し合いの経過
• 相手が調停に出席する見込みがあるか
• 円滑に話し合いを進められる見込みがあるか
• 相手は調停の申立てを知っているか
• 暴力やトラブルのおそれがあるか
• 調停期日として差し支える曜日や時間帯はあるか

※裁判所の書式は更新されることがあるため、最新の書式は裁判所のウェブサイト等で確認してください。

3 裁判所に知らせた方がいいことは?

進行照会書には基本的な質問事項が用意されていますが、
それ以外にも、調停を進めるうえで重要な事情があれば、書記官に伝えておくことをおすすめします。

例えば、次のような事情です。

安全面に関する事情

• 相手から付きまといを受けるおそれがある
• 暴力以外にも、相手と顔を合わせたくない事情がある

生活上の事情

• 婚姻費用や養育費が支払われておらず、生活が困窮している
• 早めに調停を進めてほしい事情がある

※事情を伝えたからといって必ず優先されるわけではありませんが、裁判所が事情を把握することは重要です。

体調や健康に関する事情

• 持病がある
• ストレスでパニックを起こしやすい
• 長時間の話し合いが難しい

建物利用に関する事情

• 車椅子を使用している
• 松葉杖などで階段が使えない

裁判所によっては、階段でしか行けない調停室もあるため、
こうした事情がある場合は事前に伝えておくことが望ましいでしょう。

【元裁判所書記官からのひとこと】

調停の場では、知らず知らずのうちに緊張し、体調を崩してしまう方がいらっしゃいます。
特に、持病を伝えていなかったため、調停中に体調を崩してしまうケースも珍しくはありません。

事前に情報を得ていれば、対応できることもあります。

「こんなこと言っていいのか」と迷ったら、言っていい、むしろ伝えていただきたいと思います。

4 書類の送付先は「送達場所等届出書」で指定できます

家庭裁判所からの郵便物の送付先は、
送達場所等の届出書で指定することができます。

住居を書面の送付先・送達先にすることが多いのですが、

例えば、

• 自宅住所を知られたくない
• 実家で郵便を受け取りたい
• 勤務先で受け取りたい

といった場合には住居以外の場所にすることもできます。

この書面は、事件記録の閲覧などで相手が見る可能性があるので、
相手方に知られることで生活に支障が生じる事情がある場合、
非開示の申出をすることもできます。

※裁判所の書式は更新されることがあるため、最新の書式を裁判所のウェブサイト等で確認してください。

5 住所や子どもの居場所を知られたくない場合の注意点

配偶者からDVや付きまといを受けている場合など、
現住所や子どもの居場所を相手に知られたくないという方もいます。

このような場合は、家庭裁判所に事情を説明し、
書面の記載方法について事前によく確認することが重要です。

離婚調停では、申立てをすると通常

• 調停申立書
• 添付書類の一部

の写しが相手方に送付されます。

そのため、申立書に住所などを書いてしまうと、
その情報が相手に知られてしまう可能性があります。

申立てをしてからでは対応が難しくなる場合もあるため、
住所や子どもの居場所を知られたくない事情がある場合には、
申立書類を作成する段階で裁判所に方法を確認しておくことが重要です。

【元裁判所書記官からのひとこと】

住所等の非開示情報については、裁判所も慎重に取り扱っています。

しかし、裁判所と認識が共有されていないと、非開示の希望が正確に伝わらないこともあります。
申立て前によく裁判所へ相談し、申立て後も担当書記官と事情を共有しておくことが大切です。

6 相手への不満は「悪口」ではなく「具体的な事実」で伝える

調停では、相手に対する不満や怒りが溜まっている方がたくさんいます。

しかし、裁判所に対して

• 「相手は嘘つきだ」
• 「信用できない」

といった抽象的な表現を伝えても、
裁判所はそれを手続に反映させることができません。

そのような場合は、具体的な事実として説明することが重要です。

〈例〉
× 相手は嘘ばかり言う
→ 相手は離婚条件についての発言をよく覆す

× 相手は信用できない
→ 面会交流の約束を何度も守らなかった

このように出来事として具体的に説明することで、
裁判所も状況を把握しやすくなります。

【元裁判所書記官からのひとこと】

家庭裁判所では、感情的な批判よりも、
どのような出来事があったのかという事実の方が重視されます。

もちろん、調停は話し合いと通じて合意を目指す場ですから、
あなたの気持ちも大切です。
ただ、感情的になりすぎるより、事実を冷静に伝えるほうが手続きは円滑に進みます。

日時や出来事を整理して、
「こんなことが重なった。だから自分は辛い」と伝える準備をしておくと良いでしょう。

7 調停に同席できる人について

調停期日に出席できるのは、通常

• 当事者本人
• 代理人弁護士

に限られます。

友人や家族などが同席することは、原則として認められていません。

【例外的に同席が認められるケース】

ただし、事情によっては例外的に同席が認められることがあります。

通訳が必要な場合

外国語を母語とするなど、日本語での意思疎通が難しい場合には、
通訳人の同席が認められることがあります。

介助が必要な場合

身体的事情などで介助が必要な場合には、
介助者の同席が認められる可能性があります。

このような場合は、事前に事情を説明し、裁判所に確認しておきましょう。

8 子どもの同席について

預け先がないなどの事情で、子どもを連れて調停に出席したいと考える方もいます。

しかし、家庭裁判所は子どもの同席には基本的に消極的です。

理由は主に次の2つです。

① 子どもに離婚の話し合いを聞かせることを避けるため

調停では夫婦の関係についての話し合いが行われるため、
その内容を子どもに聞かせることは心理的負担になる可能性があります。

② 裁判所には子どもを預かる施設がないため

調停の話し合いは長時間になることもありますが、
裁判所には子どもを預かる仕組みがありません。

まとめ

離婚調停では、書記官とのやり取りの中で、裁判所に事情を伝える場面が多くあります。

特に次のような事情は、遠慮せずに伝えておくことが大切です。

• 相手との接触の可否
• DVなど安全面の事情
• 体調や健康の事情
• 生活困窮などの事情
• 建物利用に関する事情
• 住所秘匿の希望

実務の感覚としては、
書きすぎて困ることよりも、書かなくて困ることの方が多いものです。

迷った場合には、担当の書記官に事情を伝えてみることをおすすめします。

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この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。

この記事の編集・SEO担当者

阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などの家事事件を担当。
裁判所での実務経験を踏まえ、弁護士細江智洋の法律解説に、
「調停の現場で実際に起きていること」が伝わる視点を加えて編集しています。
※法律解説は弁護士監修です。

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