離婚協議書と公正証書の違いとは|弁護士が解説

監修:弁護士 細江智洋

はじめに

離婚の話し合いがまとまったとき、「離婚協議書を作るべき?」「公正証書にしたほうがいいの?」というご質問をよく受けます。
両者はどちらも合意した離婚条件を書面にしたものですが、法的効果や作成手続には大きな違いがあります。
この記事では、弁護士が離婚協議書と公正証書の違いをわかりやすく解説し、
実際にどのようなケースでどちらを選ぶべきかを説明します。

目次

1. 離婚協議書とは

離婚協議書は、夫婦が話し合って決めた離婚条件を自分たちで書面にした合意書です。

慰謝料、財産分与、養育費、親権、面会交流など、離婚に関する取り決めを明確にしておく目的で作成します。
離婚協議書は法的には私文書(当事者間の契約書)であり、役所や裁判所に提出する必要はありません。しかし、署名・押印があれば、後に「この内容で合意していた」ことを証明する有力な証拠になります。

また、後述のとおり、「この監護に要する費用」について、近い将来、適切に記載された離婚協議書があれば、先取特権に基づく強制執行が可能となります(令和8年4月1日施行予定)。

【元裁判所書記官からのひとこと】

「金額の合意」をしたけれども、口約束に過ぎず、結局調停で決め直すというケースもよく目にします。双方が離婚条件に合意した場合には、協議書として形に残すことをお勧めします。

2. 公正証書とは

公正証書は、公証人(法務省の任命を受けた法律専門職)のもとで作成する公文書です。

夫婦が合意した内容をもとに、公証人が内容を確認・記録するので、記載された内容に強い証明力が生じます。
また、「強制執行認諾文言(支払わないときは強制執行して構いませんという文言)」を付けた場合、相手が支払いを怠ったときに、裁判を起こさずに差押えができるという強力な効果があります。

 

▶ ポイント~強制執行認諾文言は必ず付く?

強制執行認諾文言は、両者の合意によって付与するものであり、「絶対に付く」わけではありません。しかし、公正証書を作成する合意がある場合には、通常、強制執行認諾文言の付与まで合意しているので、「付ける付けない」で揉めるケースは少ないです。

3. 離婚協議書と公正証書の違い

作成者 離婚協議書:
  当事者本人または弁護士
離婚公正証書:
  公証人
性質 離婚協議書:
 私文書
離婚公正証書:
 公文書
強制執行力 離婚協議書:
 なし(改正法施行後の養育費・婚姻費用の一部を除いて)
離婚公正証書:
 あり(認諾文言付き)
提出先 離婚協議書:
 提出不要(夫婦で保管)
離婚公正証書
 公証役場で保管(原本保管)
メリット 離婚協議書:
 手軽・費用が安い・すぐ作れる
離婚公正証書:
 執行力を付与できる・証拠力が高い
デメリット 離婚協議書:
 執行力なし(改正法施行後の養育費・婚姻費用の一部を除いて)
離婚公正証書:
 手続が煩雑・費用が高い(5万円前後)

4. 協議書と公正証書の関係

離婚協議書と公正証書は、どちらか一方を選ぶものではなく、段階的に作るものです。
まず、夫婦で離婚条件を話し合い、離婚協議書で内容を整理する。
そのうえで、支払いの履行を確実にしたい場合や、不動産・高額な金銭が関わる場合は、
その協議書をもとに公正証書化する、という流れが一般的です。

【弁護士コメント】

いきなり公正証書を作ろうとしても、十分に合意内容が決まっておらず手続きが進まないというケースがよくあります。まず協議書で内容を明文化してから、公証役場に持っていくのが現実的です。

5. 弁護士細江智洋のサポート内容

当事務所では、「離婚協議書作成プラン」をご用意し、次のようなサポートを行っています。

• 離婚協議書のチェックプラン(法的チェックと修正)
• オーダーメイド作成プラン(ご希望をヒアリングし、弁護士が一から作成します)
• 公正証書化を希望する方への手順・必要書類・予約方法のアドバイス

※弁護士が代理人として相手方と連絡・調整を行ったり、公証役場に同行するサポートは含まれません。合意形成が難しい場合や、代理人としてのサポートをご希望の方は、交渉から調停・裁判までを代理人としてサポートする「代理サポートプラン」をお勧めしております。

 

▶ 離婚協議書作成プランのご案内はこちら

6. 改正民法・共同親権時代における重要性

2026年(令和8年)施行予定の民法改正により、
養育費や婚姻費用のうち「子の監護に要する費用」については、債務名義がなくても離婚協議書を提出して強制執行できる可能性が高まります。
つまり、協議書の作成方法次第で、将来的に強い効力を得られるということです。

▶ 詳しくは [養育費・婚姻費用に先取特権が導入されます|離婚協議書の位置づけが変わる?](内部リンク) をご覧ください。

さらに、今後導入される共同親権制度のもとでは、
親権・監護権の定めを公正証書として残しておくことが、親権変更のリスクを減らすことにつながります。
公正証書があれば、「きちんとした合意があった」と判断されやすく、将来的な親権者変更を防ぐ効果も期待できます。

7. 公正証書の作成費用(目安)

公証役場の手数料は「目的の価額」に応じて計算され、慰謝料・財産分与・養育費などの項目ごとに数千円〜数万円の範囲で決まります。
たとえば養育費月5万円を10年分とすると約600万円の契約という扱いになり、手数料は約2万円前後です。
通常、離婚の合意の他に、慰謝料や養育費、財産分与等を離婚協議書に盛り込むので、全体では高くて5~6万円になります。

参考サイト:日本公証人連合会

8. まとめ

離婚協議書は、合意した離婚条件を整理して形に残すためのものです。
公正証書は、その合意を確実にするための。

今後の民法改正や共同親権導入により、協議書と公正証書の重要性はますます高まります。
それぞれの違いを理解したうえで、あなたの状況に合った方法を選びましょう。

[離婚協議書の作り方とテンプレートはこちら]
 [養育費・婚姻費用の先取特権と離婚協議書の関係はこちら]
▶ [離婚協議書作成プラン|弁護士が内容をチェック・作成]

この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。

この記事の編集・SEO担当者

阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などを担当。現場の知見を生かし、弁護士細江智洋の法律解説に元書記官としての視点をプラスして編集しています。
※ 法律解説は弁護士監修です。

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