離婚調停で調停委員は何を見ている?元裁判所書記官が見た判断ポイント

監修:弁護士 細江智洋

はじめに

離婚調停では、調停委員が双方の話を聞きながら話し合いを進めます。

ただ、
「何を基準に話を聞いているのか」
「どこに注目しているのか」
は、あまり知られていません。

調停は「話し合いの場」と言われますが、
実際には、ただ話を聞いているだけではありません。

この記事では、元裁判所書記官の視点から、
調停委員が実際に見ているポイントと、その考え方
を解説します。

はじめに

1 主張が「現実的かどうか」

まず見られているのは、
その主張が現実的なラインに乗っているかどうかです。

調停は裁判ではないため、双方が合意すれば調停は成立します。

ただし、実務上は
「裁判・審判になった場合の基準から大きく外れていないか」
という点は意識されています。

例えば

・相場とかけ離れた慰謝料を求めている
・財産分与で一方がほとんどを取得しようとしている
・法的な根拠が乏しい条件を強く主張している

といった場合、

「その条件で合意できる可能性があるのか」

という観点で整理されます。

調停委員の頭の中では、

これは、裁判・審判という次の手続きに進んだらどうなるか
どこまでなら現実的な着地点か

というラインが引かれています。

補足:基準から外れる希望は出してはいけないのか

裁判・審判になった場合の基準から外れる希望を出してはいけないという意味ではありません
調停は当事者同士の合意によって成立する手続であるため、双方が納得すれば、基準と異なる内容で合意することも可能です。
もっとも、実務上は、そのような条件で合意できる現実的な見通しがあるかという点が意識されながら整理されていきます。

よくある「行き違い」とは?

調停の場でよく見られるのが、
養育費と面会交流を結びつけて考えてしまうケースです。

例えば
・養育費を払わないなら子どもに会わせない
・子どもに会えないなら養育費は払わない
といった考え方です。

こうした気持ちになることは、決しておかしなものではありません。
当事者としては、相手の態度に納得できず、条件を結びつけて考えたくなるのは自然なことです。

ただ、実務上は
養育費と面会交流は目的の異なる別の問題として扱われます。

養育費は子どもの生活を支えるためのものであり、
面会交流は子どもと親との関係に関するものです。

そのため、一方の条件を理由に、もう一方を制限するという整理は基本的にはとられません。

調停の中では、このような点について、
調停委員から考え方の整理が示されることが多く、
「分けて考える」という方向に調整されていくのが通常です。

2 主張を裏付ける「資料・証拠」

次に見られるのは、その主張に根拠があるかどうかです。

離婚調停でも、

・収入資料
・財産資料
・子どもの監護状況などに関する資料

などは重要な判断材料になります。

例えば
「生活が苦しい」と主張していても、
収入や支出の資料がなければ、具体的な検討ができません。

逆に、資料がそろっている場合は、
調停委員が条件整理をしやすくなるため、話し合いが進みやすくなります。

調停は気持ちを伝える場でもありますが、
最終的には「条件をどうするか」を話し合いで決める手続きです。

そのため、主張と資料が結びついているかどうかは、
実務上重視されています。

3 どこまで「譲れるか」

調停の目的は、あくまで合意形成です。

そのため、調停委員は

・それは絶対に譲れない条件なのか
・他の条件との調整で動かせるのか

という点を丁寧に確認しています。

例えば

「養育費の金額にはこだわるが、支払方法は柔軟に考えられる」
「財産分与の割合は譲れないが、支払時期は調整できる」

といったように、

どこが固定したいポイントで、どこに交渉余地があるのか

が見えてくると、合意の可能性が高まります。

逆に、

すべてが「絶対に譲れない」という状態になると、
調停としての調整が難しくなります。

4 当事者の態度は影響する?

「感情的になると不利になるのではないか」
と心配される方もいます。

結論から言えば、
態度そのものによって有利・不利が決まることはありません。

裁判所は中立の立場で手続きを進めるため、
感情だけで評価が変わることはありません。

ただし、実務の感覚としては、

・感情的になりすぎて話が整理できない
・主張がうまく伝わらない
・やり取りがかみ合わない

といった状態になると、
結果として調停が進みにくくなることはあります。

また、調停委員も人間です。

あまりに対立的な態度が続くと、
やり取りが慎重になり、進行が固くなることもあります。

調停は「評価の場」ではありませんが、
コミュニケーションの場ではあるという点は意識しておくとよいでしょう。

まとめ

離婚調停では、調停委員は主に次の点を見ています。

・主張が現実的なラインにあるか
・その主張に資料や根拠があるか
・どこまで譲歩の余地があるか

そのうえで、

現実的に合意できる着地点を探る

という形で話し合いが進められています。

調停は、感情をぶつけ合う場ではなく、
条件を整理し、合意点を見つけるための手続きです。

どのように見られているのかを理解しておくことで、
調停の進め方も変わってくるはずです。

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この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
横浜で離婚問題に携わり12年以上、離婚問題を280件以上解決した実績あり。
あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い未来のために、離婚手続きや養育費、慰謝料を親身にサポート。お気軽にお問合せください。

この記事の編集・SEO担当者

阿部絵美(元裁判所書記官)
横浜家庭裁判所で3年間、離婚調停などの家事事件を担当。
裁判所での実務経験を踏まえ、弁護士細江智洋の法律解説に、
「調停の現場で実際に起きていること」が伝わる視点を加えて編集しています。
※法律解説は弁護士監修です。

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