結婚生活を送る中で「もう一緒に暮らすのは難しい」と感じ、突然別居を考える方も少なくありません。40代・50代は、子育てがひと段落したり、仕事環境が変わったりと、夫婦関係に向き合う時期でもあります。
では、夫婦の一方が勝手に「別居」を始めた場合、それは法律的に「違法」となるのでしょうか?
夫婦には「同居義務」がある
民法には、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています(民法752条)。
つまり、夫婦は原則として一緒に住み、助け合うことが義務とされているのです。
そのため、何の理由もなく、かつ相手の了承も得ずに急に別居することは、この「同居義務」に違反する可能性があります。
ただし、同居義務は必須ではありません。正当な理由があれば、別居が認められる場合があるのです。
法律上の正当な理由とは?
それでは、法律上「正当な理由」とされるのはどんな場合でしょうか。代表的な例をいくつか挙げます。
• DV(家庭内暴力)やモラハラを受けている場合
暴力や精神的虐待から身を守るための別居は、必要な行動です。
• 不貞行為(浮気・不倫)が発覚した場合
信頼関係が壊れている状況での別居は、正当化されやすいです。
• 過度な借金や浪費がある場合
経済的に生活が脅かされるとき、別居によって生活を立て直すことが認められます。
• 病気や介護のために物理的に別居せざるを得ない場合
病気の療養や家族の介護など、やむを得ないケースも含まれます。
このように「やむを得ない事情」があれば、別居は法律上認められる可能性が高いのです。
突然の別居はリスクがある
とはいえ、客観的に正当な理由がないまま一方的に家を出てしまうと、後に離婚や財産分与の話し合いで不利になる可能性があります。
相手が「勝手に出て行った」と主張し、「悪意の遺棄(あくいのいき)」(民法770条1項2号)を根拠に問題視されることがあります。
もっとも、「悪意の遺棄」と認められるのは、正当な理由なく長期間にわたり同居を拒否し、生活費の分担など夫婦としての義務を果たさない場合に限られ、単に別居を始めたというだけで直ちに当てはまるわけではありません。
別居は「離婚準備」につながる
40代・50代の別居は、単なる一時的な距離の取り方にとどまらず、そのまま「離婚」へと発展するケースが多く見られます。
別居は夫婦関係の破綻を示す有力な証拠となるため、離婚裁判では重要な要素にもなります。
そのため、別居を検討する際には以下の点を整理しておくことが重要です。
• 経済的に生活できるのか
• 子どもの養育はどうするのか
• 財産の管理はどうするのか
まとめ
突然の別居は、DVや不貞行為など「正当な理由」があれば認められるケースもあります。
ただし、状況によって判断が大きく変わるため、自身の判断で動くのは非常にリスクが高いです。
別居を検討している、または既に別居を始めている方は、弁護士に相談して「自分のケースではどのように対応すべきか」を確認しましょう。
当事務所では、離婚や別居に関するご相談を数多く受けてきました。今の不安を整理し、最善の方法を一緒に考えていきましょう。
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離婚と別居に関するご相談|弁護士 細江智洋
この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。