
離婚慰謝料の請求には時効がある?請求できる期間とは
離婚にあたって「精神的損害に対する慰謝料を請求したい」と考える方は少なくありません。
配偶者のモラハラや暴力、生活費を全く渡さない、正当な理由なく家を出て行ってしまったといったケースでは、離婚原因を作った側に対して慰謝料を求めることができます。
ただし、慰謝料には「いつまでに請求できるか」という時効が存在します。時効を過ぎてしまうと、正当な権利であっても実質的に行使できなくなるおそれがあります。ここでは、離婚慰謝料の時効と注意点を解説します。
離婚慰謝料の時効は「離婚成立から3年」
離婚慰謝料請求権の請求期間は、民法724条に基づき 離婚成立から3年 が原則です。
ここでいう「離婚成立」とは、協議離婚の場合は離婚届が役所に受理された日、調停離婚や裁判離婚の場合は調停調書や判決が確定した日を指します。
離婚が成立した時点で「損害(精神的苦痛)」が確定し、相手方(加害者)が誰であるかも明確になるため、この時点から時効がスタートするのが一般的です。
たとえば、
• 2022年4月に離婚成立 → 2025年4月まで慰謝料を請求可能
というイメージです。3年を経過した場合は時効完成となります。
離婚原因が違っても時効は同じ?
「配偶者のDVやモラハラが原因の場合はもっと時効が長くなるのでは?」と誤解している方がいますが、離婚慰謝料として請求する限りは離婚原因に関わらず離婚成立から3年というルールです。
なお不倫に関する慰謝料は「不貞慰謝料」として別に扱われるため、不倫を知った時から3年という考え方が用いられますが、ここで扱う「離婚慰謝料」には当てはまりません。
時効を過ぎるとどうなる?
離婚成立から3年の時効を過ぎてしまった場合、相手に慰謝料を請求しても認められない可能性があります。
法律上、時効は期間が経過(=時効完成)しても自動的に権利が消えることはありません。相手が「もう時効だから払わない」と主張することを 「時効の援用」 といいますが、この援用がなされた場合は慰謝料を請求することはできなくなります。
したがって、実務上は3年を過ぎると離婚慰謝料の請求はほぼ不可能になってしまいます。
時効を止める方法もある
「離婚からすでに2年半経っている」「話し合いが進まず、離婚からもうすぐ3年になってしまう」という場合でも、時効完成を防ぐ方法があります。
• 内容証明郵便で慰謝料請求を通知する
→ 時効完成を6か月間だけ先送りできる
• 家庭裁判所で慰謝料請求を目的とした調停・訴訟を申し立てる
→ 時効がリセットされ、新たにカウントされる
このような方法で、時効完成を防ぐことができ、請求の権利を維持できます。
離婚慰謝料の時効で注意すべき3つのポイント
1. 離婚成立から3年という短い期間しかない
時間に余裕があると思っていても、準備や交渉には思ったより時間がかかります。
2. 交渉の引き延ばしで時効が完成してしまうリスクがある
相手が「検討する」と言って引き延ばされている間に3年が過ぎれば、請求できなくなる可能性があります。
3. 時効が始まる日(=起算点)の誤解で時効を過ぎてしまう危険がある
「まだ大丈夫」と思っていても、離婚成立日からカウントが始まっています。思い込みや勘違いもあるため放置するのは危険です。
まとめ
離婚慰謝料の請求には原則3年の時効がありますが、離婚原因や状況によって起算点が異なります。時効がいつ始まっているのか、時効を止めるための手続きはあるのかを確認することが大切です。
時効を過ぎてしまうと請求が難しくなるため、ご心配な方はできるだけ早めに弁護士へ相談することが大切です。
弁護士に相談すれば、時効の正確な起算点や適切な請求方法を判断でき、慰謝料を受け取る可能性が高まります。
当事務所では、離婚や慰謝料に関するご相談を数多く取り扱っております。「まだ慰謝料を請求できるのか」「時効までにどのような手続きをすればいいのか」といった悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
→詳しくはこちらをご覧ください:離婚慰謝料について
この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。















