「もう我慢の限界かもしれない」——長い間連れ添ったご夫婦が、60代を迎えてから離婚を考える「熟年離婚」が近年増えてきました。特に女性の方からは、「長年の苦労に見合った慰謝料はもらえるのかしら?」というご相談がとても多く寄せられます。
今回は、熟年離婚での慰謝料の相場や、実際に認められる条件、準備した方がいい証拠などについて、やさしく解説いたします。
■ 慰謝料とは?
慰謝料とは、相手の行動によって受けた精神的な苦しみに対する損害賠償です。離婚の原因が、浮気や暴力、モラハラなど「不法な行為」によるものであれば、慰謝料を請求できます。
一方で、「性格の不一致」や「夫婦間のすれ違い」など、どちらが悪いとは言えない事情では、慰謝料が認められないこともあります。
■ 慰謝料は「苦しみの深さ」×「違法性」で決まる
慰謝料は、「どれほど深く傷つく行為か」と「相手の行為がどれだけ悪質か」で判断されます。
たとえば以下のような理由がある場合、慰謝料が認められやすくなります。
・配偶者の不倫(不貞行為)
・DV(身体的な暴力)
・モラハラ(精神的な支配や暴言)
・経済的な虐待(生活費を渡さない)
慰謝料の金額は熟年離婚だから高くなるわけではなく、「違法性のある行為」と「被害の証明」が重要なのです。
■ 慰謝料のために準備しておきたい証拠とは?
慰謝料の請求では、以下のような証拠があると、慰謝料が認められやすくなります。
不倫相手とのLINEやメール、写真、SNSのデータ
暴力の痕を撮影した写真やうつ病などの医師の診断書
モラハラの音声データや、発言を書き留めた日記・メモ
生活費をもらえなかった証拠(通帳、レシートなど)
これらは、調停や裁判でも大きな判断材料になります。
離婚を考え始めた段階から、少しずつ準備しておくとよいでしょう。
離婚の話し合いに入ってしまうと、相手が証拠隠しや妨害をする可能性もありますので、ご自身を守るための備えとしてとても大切です。
■ 慰謝料の相場はどれくらい?
慰謝料の金額はケースによって異なりますが、以下が一般的な目安です。
・50万〜300万円程度
・不貞やDVが原因で離婚に至った場合には高額の傾向
・セックスレスの場合には50万前後と低額の傾向
・その他、婚姻期間の長さ・回数・頻度、子どもの年齢、離婚原因以前の夫婦関係、支払う側の収入、原因行為が長期に及んでいたか、原因となる行為の悪質性、請求する側の落ち度、謝罪の有無・反省の態度などの事情も影響します。
慰謝料はあくまで「精神的損害の補償」であり、老後の生活費にはならない点に注意が必要です。
■ 慰謝料だけでは足りない?老後の安心のために考えたい他のお金のこと
熟年離婚においては慰謝料だけではなく将来の生活設計も考えておくことが大切です。特に60代以降の離婚では、今後の収入が限られていることもあるため、「どんなお金が、どのくらい受け取れるのか」を総合的に計画しておくことが大切です。
まずは、財産分与・年金分割・婚姻費用にも注目しましょう。
これらは慰謝料と違い、相手に非がなくても受け取れる重要な制度です。
● 財産分与
夫婦で築いてきた財産(預貯金・不動産・年金など)は、夫名義のものであっても原則として半分ずつ分け合うことになります。専業主婦の方でも、家庭を支えてきた貢献がきちんと評価されます。
● 年金分割
夫が会社勤めなどで厚生年金に加入していた場合、通常はその2分の1を分割して自分の年金として受け取ることが可能です。将来の生活に大きく関わってきますので正しく理解しておきましょう。
● 婚姻費用
別居中でも法律上は「夫婦」であるため、収入差に応じて生活費の分担を請求できるのが婚姻費用です。離婚が成立するまでの生活の支えになります。
■ 後悔しない準備のために
「慰謝料がもらえそうだから」といった気持ちだけで離婚を進めると、後から金銭面で後悔することがあります。慰謝料だけに期待せず、冷静に準備をしておけば、安心した再出発につながります。
弁護士細江智洋は、熟年離婚に関する多数の実績があり、特に50~60代の女性のご相談に力を入れております。
あなたの状況に合わせて丁寧にアドバイスを行い、納得のいく離婚をサポートいたします。
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この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。