離婚コラム|横浜の離婚に強い弁護士 細江智洋がわかりやすく解説

2025.11.13更新

離婚コラム60

 

離婚に際して「親権をどうするか」という話題はよく耳にしますが、「監護権」という言葉は、聞き慣れないと感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、この「親権」と「監護権」は似ているようでいて、法律上はまったく別の意味を持っています。今回は、それぞれの違いや、親権と監護権を分けて決めるケース、注意すべき点についてわかりやすく解説します。

 

親権とは?
親権とは、未成年の子どもを育てるうえで必要な「法律上の権利と義務」です。親権は大きく分けて次の2つの側面があります。
1. 身上監護権:子どもと一緒に生活し、生活全般の世話や教育を行う権利・義務(住む場所を決めたり、学校に通わせたりすることなど)
2. 財産管理権:子どもの財産を管理し、必要に応じて法律行為を代わりに行う権利(子ども名義の預貯金の管理や契約・相続手続きなど)
通常、結婚している間は父母が共同で親権を行使しますが、離婚後はどちらか一方が親権者になります。市区町村役場に離婚届を提出する際には、必ず親権者を決める必要があります。

 

監護権とは?
一方、監護権とは、子どもと一緒に生活し、日々の世話や教育を行う権利・義務を指します。親権の中の「身上監護権」に近い部分だけを取り出したもの、と考えるとイメージしやすいでしょう。
たとえば、子どもと一緒に生活して食事や通学の世話をする、健康管理をする、日常生活を見守るといった行為が監護権にあたります。

 

親権と監護権を分けて定めることもできる
多くの場合、どちらかの親を親権者=監護者(どちらも同じ人)として決めますが、事情によっては親権者と監護者を別々に決めることも可能です。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
• 父母が遠く離れて暮らすことになり、生活環境や通学の関係で母親が監護者として子どもを育てる方が適している
• 父親が経済的に安定しており、子どもの財産を管理するのに適しているため、父を親権者にする
このように「親権」と「監護権」を分けることで、子どもの利益を最優先にした柔軟な対応が可能になります。

 

親権と監護権を分ける場合の注意点
親権と監護権を分ける場合、将来的にトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。
たとえば、進学や転居など、子どもの生活に関する重要な判断をする際に、親権者と監護者の意見が食い違うと手続きが難しくなることがあります。
また、監護者に子どもを預けている親権者が、親の判断で急に子どもを連れ出すと「連れ去り」とみなされるおそれもあります。
なお、親権者と監護者を分けた事を、離婚届に明記することはできません
離婚届には「監護者」を明記する欄は無く、「親権者」を記載する欄しかないためです。そのため、監護者を別に定める場合は、離婚協議書に明記し公正証書化しておく、あるいは家庭裁判所で監護者指定の調停・審判を申し立てておくことが大切です。
また、戸籍上、子どもが親権者の戸籍に入る点にも注意が必要です。
たとえば、父親が親権者で、母親が監護者の場合、子どもは父親の戸籍に入ります。
母親と同居していても戸籍上は父親の戸籍のままとなるため、学校や行政手続きで監護者である母親がすぐに対応できないケースが生じることがあります。
子どもの生活実態に合わせて戸籍を母親に移したい場合は、家庭裁判所に親権者変更の申立てを行う必要があります
親権と監護権を分けるかどうかは、メリット・デメリットをよく調べたうえで慎重に判断することが大切です。

 

まとめ:子どもの幸せを第一に考えて
親権と監護権は似て非なるものであり、それぞれの意味を正しく理解することが、離婚後の子育てにおいてとても重要です。
「どちらが親権を持つか」「どちらが子どもと生活するか」は、両親の思いだけでなく、子どもの利益を最優先に考えることが大切です。
今後は共同親権制度の導入(2026年4月1日施行)が予定されています。これまで離婚後は一方の親しか親権を持てませんでしたが、制度が施行されると、父母が協力して子どもの養育に関わることが可能になります。ただし、共同親権にも、親同士の意見が分かれた際の調整や、子どもの安定した生活への配慮といった課題はあります。
親権や監護権をどのように決めるか悩んでいる方は、早めに専門家へ相談してみましょう。
弁護士細江智洋は、親権・監護権に関するご相談を多数お受けしています。詳しくは下記ページをご覧ください。
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この記事を担当した弁護士

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

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