公務員の妻のための離婚相談

このようなお悩みはありませんか?

  • 公務員の夫と離婚したいと考えています。夫は数年後に定年退職しますが、それまで待った方がいいのでしょうか?
  • 公務員の夫と離婚する場合、「年金分割」はできますか?
  • 夫が職場の女性と不倫しています。夫と離婚し、不倫相手の女性に慰謝料請求したいと思っていますが、不倫のことが夫の職場に知られると、どうなりますか?

安定した収入と地位を持つ公務員。しかし、その「安定さ」ゆえに、離婚を切り出しにくかったり、退職金や年金など特有の財産項目があったりと、離婚を考える側にとっては慎重な判断と知識が求められます。
また、公務員の夫が全国転勤のある職種の場合、不倫や単身赴任が原因で離婚に至るケースも少なくありません。
専業主婦の方も、共働きの方も、公務員ならではの離婚のポイントを知っておきましょう。

ここでは、公務員の夫と離婚する際に注意すべきポイントとして、財産分与、養育費、年金分割、離婚準備や手続きの流れについて、横浜の離婚弁護士がわかりやすく解説します。

公務員の夫との離婚にお悩みの方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

目次

公務員の離婚に多い特徴は?

ひとくちに公務員といっても、警察官や自衛隊員といった公の安全を守る職業や、公立学校の教員、地方自治体の職員や霞ヶ関に勤務する官僚など、様々な職種の方がいらっしゃいます。
そのように様々な公務員の方に共通する特徴が、雇用先が倒産するリスクが限りなく低く、懲戒免職にならない限り仕事をクビにならない、給料の支払いが確実であるといった「安定性」です。

公務員の方の離婚に多い特徴として、次の事項があげられます。

✔️ 転勤が多く、単身赴任の家庭も多いので、不倫が原因の離婚も多い
✔️ 転勤が多い職種の場合、妻が専業主婦の家庭も多いので、離婚後の生活費の確保がポイントになる
✔️ 他方で、共働き公務員の夫婦も多く、妻も収入が多いので離婚の決断がしやすいケースもある
✔️ 転勤が多い職種の場合、官舎を利用する家庭も多く、その分貯金がしやすいので財産分与が高額なケースも多い
✔️ 公務員は住宅ローンを組みやすいので、持ち家がある家庭も多く、財産分与と持ち家・住宅ローンの問題で揉めるケースも多い

公務員の夫との離婚のポイント① 財産分与

このセクションのまとめ

✔️ 公務員の夫との離婚では、退職前の退職金が財産分与の対象になりうることに注意が必要です。
✔️ 夫が「共済貯金」をしているかどうか確認しましょう。
✔️ 持ち家がある方、住宅ローンが残っている方、ペアローンがある方は離婚時に不動産・ローンをどうするか検討しましょう。

1 「財産分与」とは?

財産分与とは、夫婦が離婚するときに、結婚生活において夫婦が築いた財産を分け合うことであり(民法768条1項)、財産が夫婦のどちらの名義であるかを問わず、2分の1ずつの割合で財産を分け合うことが通常です(2分の1ルール)。
財産分与の対象となる財産には、預貯金、現金、不動産、株式、生命保険、退職金など、様々なものが含まれます。
どの財産が財産分与の対象となるかは、別居時を基準に判断されます。
財産分与の請求は、離婚から2年以内に行う必要があります(民法768条2項。令和6年の改正法施行後は離婚から5年以内)。

2 公務員の退職金は、退職前でも財産分与の対象になるケースが多くあります

公務員の夫との離婚で特徴的なのが、退職前でも退職金が財産分与の対象になる可能性が高いということです。
退職金は、「賃金の後払的な性質を有する」といわれており、「近い将来に退職金を受領できる蓋然性」が高い場合には、在職中でも、将来の退職金が財産分与の対象として認められるという裁判例があります(東京高裁平成10年3月13日決定)。

公務員の場合には、退職金が支給されることや支給額の算出方法について法令で定められているため、現在の実務上は退職前であっても退職金が財産分与の対象として認められることが多いです。。

一昔前までは、退職まで10年以上ある場合は財産分与の対象外と考えられていましたが、現在の実務上は、退職までの期間が長くとも財産分与の対象とすることが通常となっています。

3 退職前の退職金の財産分与額は、どうやって決めるのですか?

将来の退職金を財産分与の対象とする場合には、定年退職の場合の退職金の額ではなく、離婚時(別居が先行していれば別居時)を基準にして、「自己都合」で退職した場合の退職金のうち婚姻期間に対応する額を財産分与の対象とした裁判例があります(東京高裁平成10年3月13日決定)。実務上も基本的にこの考え方で処理することが大半です。

4 公務員の夫との離婚では、共済貯金にご注意ください

公務員の方は「共済組合」に加入しており、「共済貯金」をしている方もいらっしゃいます。
この「共済貯金」は、貯金額が給与や賞与から控除され、自動的に貯金できる仕組みになっているので、財産分与の対象になりうるにもかかわらず、共済貯金に気づかずに離婚手続きを進めてしまう可能性があります。

夫が共済貯金をしているかどうかは、夫の給与明細を見ることができれば控除の有無でわかります。
夫の給与明細を見せてもらえない、貯金額や残高がわからない場合には、正式に裁判所の手続きによって財産資料の開示を求めることもできますから、一度ご相談ください

5 持ち家がある方・住宅ローンがある方・ペアローンを組んだ方の財産分与

自宅を購入した方・不動産をお持ちの方は、離婚時に不動産をどうするかも検討しなければいけません。
夫の単独名義であっても、結婚後に家を購入した場合や結婚後に家計から住宅ローンを返済していた場合には、持ち家などの不動産も財産分与の対象になり得ます。
特に住宅ローンが残っている方やペアローンを組んだ方は、持ち家を離婚時に売却するのか、どちらかが住み続ける場合には、ローンの組み替えが可能かなどを検討する必要があります。

公務員の夫との離婚のポイント② 養育費

このセクションのまとめ
✔️ 公務員は給与所得であることがほとんどで、副業も制限されているので、養育費の算定は比較的シンプルであることが多いです。
✔️ 私学や大学の学費、塾代などは、「当然に養育費に上乗せ」できるわけではないのでご注意ください。
✔️ 夫が公務員の場合、離婚後「養育費の増額」ができるケースがあります。

1 夫が公務員の場合、養育費の算定は比較的シンプルです

養育費の金額は、夫婦の協議(話し合い)で決めることができますが、話し合いで解決できない場合には、裁判所の調停、審判、裁判の手続きで決めることができます。
養育費の金額を決めるには、夫婦双方の収入や子供の年齢・人数をもとにして算出する裁判所の「養育費算定表」が参考になります。
公務員の方は、国や自治体からの給与収入を得ており、副業も制限されているので、「算定表」から比較的シンプルに養育費の目安を知ることができます。また、裁判手続きにおいて標準的な算定方法で個別に金額を算出する場合にも、争点化するケースは多くありません。

2 養育費の算定はシンプルでも、「私学加算」でトラブルになることも

夫が公務員の場合の養育費の算定はシンプルなことが多く、それ自体でもめることは少ないのですが、「私学加算」でトラブルになるケースが多くあります。
裁判所の「養育費算定表」には、お子さんの教育にかかる費用も考慮されていますが、それは公立の学校を前提とした高校卒業までの費用です。しかし、公務員の方の家庭では、お子さんの教育に力を入れている家庭も多く、塾代や大学進学等の費用については、当然に「養育費に上乗せ」できるわけではないので、そこでもめてしまうことがあります。これが「私学加算」の問題です。

養育費に私学の学費や大学の学費、塾代等を「上乗せ」できるかどうかの基準

①養育費を支払う側が私学や塾に通うことを承諾したかどうか
②承諾していなかった場合には、支払う側の社会的地位や学歴、収入等から、私学や塾に通うことが不合理ではないといえるか
①または②の基準を満たす場合には、「私学加算」が認められます。

ただし、「全額」とは限らず、父母の収入で按分することケースも多いです。

3 夫が公務員の場合、離婚後「養育費の増額」が認められるケースがある

養育費は、一度金額を決めた後でも、「事情の変更」があれば増額が認められることがあります。
具体的には、父母どちらかの収入に大幅な増減した場合や、大学進学などのお子さんの事情に変化があった場合です。

公務員の場合、勤続年数に応じた昇給が行われるのが通常ですから、養育費を決めてから数年後に、父親(元夫)の収入が大幅に増えた一方で、お子さんが大学に進学するなど、お金がかかる時期になっているというケースがよくあります。

そのような場合には、裁判所の手続きで「養育費増額」が認められる可能性があります。ぜひ一度弁護士にご相談ください。

公務員の夫との離婚のポイント⑤ 年金分割

このセクションのまとめ

✔️ 公務員の夫と平成27年10月以前に結婚した方は、「共済年金」も年金分割の対象になります。

1 年金分割とは

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦の一方または双方が納めた保険料の納付記録を分けることです。
双方の合意(または裁判所の手続き)を前提とした合意分割と、専業主婦を対象とした3号分割があります。
年金分割の対象は、基本的には婚姻期間中の「厚生年金の保険料納付記録」です。

2 夫が公務員の場合、平成27年10月以前の「共済年金」の保険料納付記録も年金分割の対象になります

平成27年10月までは、公務員の方の年金制度は、共済年金でしたが、厚生年金に統一されました。しかし、平成27年10月以前から勤務していた公務員の方の共済年金についても、年金分割の対象となり得ます。
つまり、平成27年10月以前から結婚していたご夫婦については、厚生年金に統一される前の共済年金の保険料納付記録も財産分与の対象になります。

公務員の夫と離婚するための準備と手続き

このセクションのまとめ

✔ できれば別居や離婚を切り出す前に、「財産資料の収集」と「不倫等の証拠の確保」をしましょう。
✔ 手続きは、①離婚協議→②離婚調停→③離婚裁判と進みます。
✔ 3か月ほどで離婚が成立するケースもあれば、3年以上かかるケースもあります。

1 離婚を切り出す前に、「財産資料の収集」と「不倫等の証拠の確保」を

夫が公務員である場合、財産関係の把握はそこまで困難ではありません。しかし、夫婦両方が公務員であるなど、共働きのご夫婦も多く、預貯金や有価証券などの財産をお互いに把握していないというケースも見られます。
また、不倫やDVなど、夫に「有責性」がある場合には、離婚の交渉や裁判手続きを見越して、証拠を確保することが重要です。
それらの資料や証拠の収集は、できれば「離婚や別居を切り出す前」にしておくことが望ましいです。
夫が財産について教えてくれない、不倫の証拠をどう確保して良いかわからないという方は、早めにご相談ください。

 

2 離婚手続きについて

離婚手続きは離婚協議⇒離婚調停⇒離婚裁判という順に進みます。

① 離婚協議

離婚に向けた夫婦間の話し合いです。夫婦だけで行うこともあれば、弁護士を介して行うこともあります。
離婚するかどうかのほかに、慰謝料、財産分与、年金分割、子どもの親権、養育費、面会交流などの離婚条件についても話し合います
離婚条件がまとまり、離婚の合意ができたら、離婚届を作成し自治体に提出します。
話し合いがまとまったら、その内容を「離婚協議書」や「離婚公正証書」にすることをお勧めします。話し合いが決裂したり、話し合いができない場合には、②の離婚調停を検討します。

② 離婚調停
家庭裁判所で調停委員を介して行う離婚に向けた話し合いです。
離婚調停という一つの手続きのなかで、慰謝料、財産分与、年金分割、子どもの親権、養育費、面会交流などの条件一緒に話し合うことができます。別居中の婚姻費用については、離婚調停とは別に申し立てを行う必要がありますが、離婚と婚姻費用について同じ日に同時進行で話し合うことができます。
離婚条件がまとまり離婚の合意ができれば、離婚調停が成立します。裁判所から「調停調書謄本」の交付を受け、自治体に離婚の届出をします。
離婚調停では合意ができない場合には、離婚裁判の提起を検討します。

② 離婚調停

家庭裁判所で調停委員を介して行う離婚に向けた話し合いです。
離婚調停という一つの手続きのなかで、慰謝料、財産分与、年金分割、子どもの親権、養育費、面会交流などの条件一緒に話し合うことができます。別居中の婚姻費用については、離婚調停とは別に申し立てを行う必要がありますが、離婚と婚姻費用について同じ日に同時進行で話し合うことができます。
離婚条件がまとまり離婚の合意ができれば、離婚調停が成立します。裁判所から「調停調書謄本」の交付を受け、自治体に離婚の届出をします。
離婚調停では合意ができない場合には、離婚裁判の提起を検討します。

3 離婚問題の解決までには、どのくらい時間がかかりますか?

離婚手続きにかかる時間は事案により様々であり、離婚協議がスムーズにまとまり協議離婚が成立する場合もありますが、離婚協議や離婚調停を試みても合意が得られず、離婚裁判までする場合には、離婚に至るまでに3年以上かかる場合もあります。
また、離婚後も面会交流の実施を巡って父母の意見が対立するなど、紛争がさらに長期化する場合や、離婚後に収入に変動やお子さんの事情に変化により、養育費の増減を巡って紛争が生じることもあります。

相手が公務員の場合、「強制執行」しやすい?

1 強制執行とは

強制執行は、簡単にいうと「相手が裁判などで決まった義務を果たさない」ときに、強制的に決められた内容を実行することをいいます。相手が決められたとおりの支払いをしないときには、預貯金、給与、不動産などの財産を差し押さえることができます。
もっとも、単に「約束した」「契約した」というだけで「強制執行」ができるわけではありません。強制執行は「判決」「調停」「審判」「和解」「強制執行認諾文言付き公正証書」など、一定の手続きを経た場合にのみ、強制執行の申立てができます。

2 夫が公務員の場合には、「給与の差押え」がしやすい

公務員の方の給与は、国や自治体から安定して支払われており、勤め先は「国」や「地方自治体」という把握しやすい組織なので、「給与の差押え」が実現しやすいという特徴があります。また、公務員の方の立場では、自分の職場に裁判所から差押えの通知が来ることは避けたいので、強制執行を避けるため、決められた金銭の支払いはきちんと行うという方が多いように感じます。

ただし、給与債権は「全額差押え」をすることはできず、通常の債権では毎月の給料の4分の1まで養育費や婚姻費用の場合は2分の1までしか差押えできません(ただし、給料の4分の3が33万円を超える場合、差押えが禁止されるのは33万円)。

公務員の離婚や不倫は仕事にどう影響する?

公務員の方が離婚をしたからといって、直ちに人事評価に影響があるわけではありません。また、不倫をしたからといって、私生活上のトラブルがすべて「懲戒処分」の対象になるわけでもありません。

しかし、警察官や教員の方のように、通常よりも高度な倫理観を求められる職業の場合は事情が異なります。例えば、警察官の方の場合には、私生活上の行為であっても、不倫は「不適切な異性交際等」として懲戒戒告の対象となるおそれがあります(警視庁長官官房長通達令和5年7月13日「懲戒処分の指針の改正について(通達)」)。
また、警察官や教員のように高度な倫理観を求められる職業以外でも、部下との不倫や勤務時間内の不適切な連絡などは、当然、懲戒処分の対象となり得ます。
さらに、DV加害者である場合には、私生活上のものであっても信用失墜行為として懲戒処分の対象になり得ます。

公務員の夫との離婚でお悩みの方はぜひご相談ください

公務員の夫との離婚には、退職金や共済年金、共済貯金など、一般の会社員との離婚とは事情が異なる重要なポイントが多数あります。また、夫の収入や財産状況が安定しているからこそ、適切に財産分与や養育費、年金分割の請求を行うことができれば、離婚後の生活の不安を軽減することが可能です。

離婚の準備や証拠集め、手続きの進め方に不安がある方、相手の財産が見えにくいと感じている方、できるだけ早く離婚したいとお考えの方も、まずはご相談ください。

離婚問題に精通した弁護士が、初回30分無料でご相談をお受けしています。秘密厳守で対応いたしますので、一人で悩まず、お気軽にご連絡ください。

この記事を担当した弁護士
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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋

神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
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