養育費についての詳しい解説

はじめに

子どもがいる方の離婚で心配される方が多いポイントが「養育費」の問題です。

「養育費とはどのようなお金なのか」「いつまで支払われるのか」「金額の相場や決め方は?」「払ってもらえないときはどうすればいいのか?」など、疑問や不安を抱えている方は少なくありません。

このページでは、養育費に関する基礎知識から、金額の相場・支払い方法・支払われない場合の対処法、さらには令和6年の民法改正のポイントまで、横浜の離婚弁護士がわかりやすく解説します。

「これって自分にも当てはまる?」「具体的にどうすればいいの?」という方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

養育費とは何ですか?

このセクションのまとめ

✔ 養育費とは、子どもの生活費、教育費、医療費など、子どもが社会人として自立するまでにかかる費用全般をいいます
✔ 養育費は、離婚後子どもと離れて暮らす親から、子どもと同居して監護している親に対して支払います。

養育費とは、未成年の子どもが社会人として自立するまでにかかる費用全般のことです。法文上は「子の監護に要する費用」となっています(民法766条1項)。

具体的には、子どもの生活費、教育費、医療費などがこれにあたります。
養育費は、離婚後に子どもと離れて暮らしている親から、子どもと同居し世話をしている親に対して支払われます。

未成年の子どもの親は、子どもが自分と同程度の水準の生活ができるよう扶養する義務があると考えらえています(生活保持義務)。令和6年の民法改正により、この生活保持義務を含めた「親の責務」が明文で規定されることとなりました。

改正民法817条の12第1項(新設。令和8年5月21日までに施行)

「父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるように扶養しなければならない。」

養育費はいつまで支払うものですか?

このセクションのまとめ

✔ 養育費を父母が話合いで決める場合には、父母やお子さんの事情に合わせて自由に決められます。
✔ 裁判所で決める場合には、「20歳の誕生月まで」とされることがおおいです。
✔ 裁判所で決める場合にも、養育費に大学の費用を上乗せする場合には、大学を卒業する「22歳になった後の3月まで」とするケースがあります。

1 「話し合い」で決める場合には、18歳までのこともあれば、22歳の3月までのこともあります

父母の話し合いで決めるには、高校を卒業する18歳3月までの場合もあれば、20歳までとすることも、大学を卒業する22歳の3月までと決めることもあります。また、原則を「18歳3月まで」や「20歳まで」としつつ、「大学に進学する場合は22歳の3月まで」という決め方をすることもあります。

2 裁判所の判断で決める場合には、「20歳の誕生月まで」のケースが多いです

話し合いでは決められない場合には、裁判所の「審判」や「判決」によって養育費を決めることになります。裁判所の判断による場合には、「子どもが満20歳になる日の属する月まで」つまり20歳になる年の誕生月までという判断がなされることが多いです。
成人年齢は、20歳から18歳に引き下げられましたが、裁判で養育費を決める場合には、引き続き「20歳まで」という判断が維持されているようです。
ただし、後でご説明する「学費加算」で大学の費用も認められる場合には、審判でも終期が22歳になった後の最初の3月になるケースが多いです。

金額の決め方、相場について

このセクションのまとめ

✔ 父母の合意で決める場合には、養育費の金額に決まりはありません。
✔ 相場を知りたい場合には、裁判所の「養育費算定表」が参考になります。
✔ ただし、父母の収入や家庭の事情によっては、裁判所の「養育費算定表」が当てはまらないことがあります。

1 父母の話し合いで決める場合、金額に「決まり」はありません

養育費の金額や支払い方法は、父母が協議(話し合い)により決めることができるので、「この金額でなければいけない」という決まりはありません。

2 「相場」は、裁判所の養育費算定表で知ることができます

しかし、「どのくらいの金額が妥当なのか」「どうやって金額を決めたらいいのかわからない」と不安になる方もたくさんいらっしゃいます。
養育費の「相場」を知りたい場合に参考になるのが、裁判所の「算定表」です。
この算定表は、父母の収入、子の人数・年齢からおおよその養育費の額が算出できるようになっています。

裁判所の養育費算定表はこちら

具体的な算定表の見方について

① まずはお子さんの人数と年齢からどの「表」に該当するかを選びます。
② 選んだ「表」の縦軸で「支払う親の年収」を、横軸で「受け取る親の年収」を見て交差する場所を探します
③ 縦軸と横軸が交差する場所にある「金額」が養育費の目安です。
 ※ このときの「収入」は、手取りではなく「総収入」です。

例:①16歳と9歳のお子さんがいる場合、裁判所の養育費算定表のうちの「(表4)子二人表(第1子15歳以上・第2子0歳〜14歳)」を選択します。②「支払う親の収入」が給与所得で400万円、「受け取る親の収入」が給与所得で200万円だとすると、③養育費の目安は「4万円〜6万円」の帯の「上の方」ということになります。

3 父母の収入のあり方やご事情によっては、「算定表」が参考にならないこともあります

裁判所の算定表は、「給与収入」と「自営収入」の2択になっており、給与収入の上限は2000万円、自営収入の上限は1567万円になっています。これらの収入を超える方や、給与と自営両方の収入がある方、再婚していて他に養育している子どもがいる方など、単純に算定表によって金額を決めることができないケースもあります。

養育費の相場がわからない場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

養育費を取り決める方法・手続きについて

このセクションのまとめ

✔ 離婚と一緒に進める場合、「協議(話し合い)⇨調停⇨裁判」の順に進めます
✔ 離婚後に養育費を決める場合には、「協議(話し合い)⇨調停⇨審判」

1 離婚と一緒に進める場合、「協議(話し合い)⇨調停⇨裁判」という順で進めます

養育費の金額や支払い方法について、まずは協議(話し合い)で決めます(民法766条1項)。
話し合いで決められない場合には、離婚調停の手続きの中で養育費について話し合い、調停でも合意できなければ離婚裁判で決着をつけるというふうに手続きが進みます。

2 離婚後に養育費を決める場合には、「協議(話し合い)⇨調停⇨審判」という順に進める

もっとも、養育費は「離婚時に必ず決めなければいけない」というものではありませんから、ひとまず離婚だけして、後から養育費を決めるというケースもあります。
この場合には、まずは協議を行い、協議が整わなければ調停を申し立て、調停でも合意に至らなければ審判手続きに移行するという流れで手続きを進めます。

私学の学費や塾代、大学の費用は請求できる?

このセクションのまとめ

✔ 私立学校の学費や大学進学費用、塾代などは、養育費に当然に「上乗せ」できるものではありません。
✔ 父母の合意により「上乗せ」することは当然できます
✔ 裁判所で養育費を決める場合、一定の要件を満たせば「上乗せ」が認められることがあります

1 裁判所の「算定表」には、大学の進学費用や私立学校の学費、塾代は考慮されていません


近年の大学進学率は、男女ともに50パーセントを超えており(男女共同参画局「学校種類別進学率の推移」)、私も、最近は家計の中で教育費の比重が高いというご家庭が増えているという印象を受けます。
しかし、裁判所の「算定表」で考慮されている教育費は、公立学校を前提にした高校卒業までの費用です。そのため、大学進学費用や私学の学費、塾代などを養育費に上乗せして請求できるのかという問題が生じます。

2 合意がなければ当然には「上乗せ」はできません。裁判所で認められるには一定の要件を満たす必要があります

父母で話し合って合意ができていれば、当然養育費に私学の学費などを上乗せして支払ってもらうことができます。しかし、養育費の支払義務者が合意をせず、家庭裁判所の審判や裁判で決めることになった場合、当然に「上乗せ」が認められるわけではありません

養育費に私学の学費や大学の学費、塾代等を「上乗せ」できるかどうかの基準

①養育費を支払う側が私学や塾に通うことを承諾したかどうか
②承諾していなかった場合には、支払う側の社会的地位や学歴、収入等から、私学や塾に通うことが不合理ではないといえるか
⇒ ①または②の基準を満たす場合には、「私学加算」「学費加算」が認められます。

ただし、「全額」とは限らず、父母の収入で按分することケースが多いです。

相手が養育費を払わないときはどうすればいい?

このセクションのまとめ

✔ 相手が決まった養育費を支払わない場合の方策には、「履行勧告」と「強制執行」があります
✔ 「履行勧告」は、家庭裁判所の手続きで養育費を決めたときに利用できる制度で、「義務の履行を促す」手続きですが、強制力はありません
✔ 「強制執行」は、相手の財産を差し押さえて強制的に権利を実現する手続きですが、「債務名義」を取得するための決められた手続きが必要です。
✔ 令和6年の法改正により、養育費の強制執行のハードルが下がる見込みです。また、「法定養育費」というものが新設されました。
※令和7年5月現在、改正法はまだ施行されていません。

1 相手が約束どおりに支払わない場合の方法には「履行勧告」と「強制執行」があります

① 履行勧告
履行勧告とは、家庭裁判所の手続き(調停や審判、裁判)で決められた内容が守られないときに、家庭裁判所調査官が義務の履行を促す手続きです。
権利者が申し立てをし、家庭裁判所調査官が義務者に対して、電話や手紙などの方法で、手続きによって決められた内容を実行するよう促すというものです。
申し立てには費用がかからず、比較的簡単な手続きなので利用する方がたくさんいますが、「促す」だけで強制力がないのがデメリットです。また、家庭裁判所の手続きを経て決められた内容である必要があります。

② 強制執行
強制執行は、債務者(支払いをすべき者)が決められた債務の履行をしないに、財産を差し押さえるなどの方法によって、強制的に決められた内容を実現する手続きです。
強制執行をするためには、「債務名義」を得ていることが必要で、単なる「約束」や「契約書」では強制執行できません。「債務名義」を得るためには、「強制執行認諾文言付き公正証書」の作成や調停、審判、裁判など一定の手続きを行う必要があります。
言い換えると、父母の話し合いで養育費が決まった場合「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成し、話し合いで決まらない場合は裁判所の調停や審判、裁判の手続きを経ることによって強制執行ができるようになります。

3 令和6年の法改正により、養育費の支払い確保のハードルが下がる見込みです

令和6年に民法が改正され、養育費に「先取特権」の付与と「法定養育費」の新設が行われました。

① 先取特権の付与(改正民法306条3号
改正法の施行後は、父母の合意書や離婚協議書を作成していれば、「債務名義」を取得していなくても強制執行が可能になります。一般的な強制執行とは異なり、「先取特権」が付与された債権は、債務名義がなくても強制執行が可能になりますが、父母が養育費についての合意があることがわかる文書が必要になります。
養育費の合意については、離婚協議書の無料サンプルを作成しましたので、参考になさってください(離婚協議書無料ダウンロードはこちら)。

② 法定養育費(改正民法766条の3)
①の先取特権により強制執行するためには、父母の「同意」が必要です。しかし、離婚の話し合いがうまくいかず、養育費の取り決めができずに離婚してしまうケースもありますし、DVから逃れるために離婚する方にとっては養育費を決めるような余裕はありません。
そこで新しく新設されたのが「法定養育費」です。

「法定養育費」とは?

✔️ 父母の合意がなくても支払義務が生じる最低限度の補償としての養育費
✔️ 子どもを監護する親に対し、もう一方が支払う
✔️ 支払いの期間は、「離婚の日」から「子どもが成人する」か「父母の協議により養育費を定めた日あるいは家庭裁判所の審判が確定」するまで
✔️ 金額は、「子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案してこの数に応じて法務省令で定めることにより算定した額」とされており、具体的な金額はまだ示されていません。

一度決めた養育費の金額を変更できる?減額・増額請求について

養育費は、一度金額を決めた後でも、お子さんや父母の事情の変化によって、金額の変更が認められることがあります。

1 養育費の増額が認められる可能性があるケース

✔️ 義務者(支払う側)の収入が大きく増加した
✔️ 権利者(受け取る側)の収入が大きく減少した
✔️ お子さんが大学進学や私立学校に入学した

2 養育費の減額が認められる可能性があるケース

✔️ 義務者(支払う側)の収入が大きく減少した
✔️ 権利者(受け取る側)の収入が大きく増加した

収入の大きな増減とはどの程度かという問題がありますが、実務的には、当然ながら個別の事情により異なりますが、目安としては100万円以上かつ収入の2割以上であれば、一般的には大きな増減とされるケースが多いと思います。

再婚した場合

父母のどちらか又は双方が再婚した場合、次のようなケースでは、養育費の減額が認められる可能性があります。

1 義務者(支払う側)が再婚したケース

✔️ 再婚して新たに子どもが産まれた・連れ子と養子縁組したことで、養育する子どもが増えた
✔️ 再婚相手の収入が少なく、扶養する家族が増えた

2 権利者(受け取る側)が再婚したケース

✔️ 再婚相手と子どもが養子縁組した
(この場合、再婚相手が子どもの一次的な養育者になり、養育費の支払義務がなくなることがあります)

養育費でお悩みの方はご相談ください

「養育費を払ってもらえない」「将来の教育費までカバーできるのか不安」「取り決めた養育費を変更したい」「再婚後の扱いがわからない」——

離婚に際して、養育費で悩まれる方がたくさんいらっしゃいます。

弁護士細江智洋は、年間150件以上の離婚・男女問題のご相談実績がある経験豊富な弁護士です。
初回30分の法律相談は無料ですので、「こんなこと相談していいのかな?」と迷う前に、まずはお気軽にご相談ください。

ご相談は横浜市中区日本大通りの当事務所で承っております。

 

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この記事を担当した弁護士
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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋

神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

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