
養育費の強制執行とは?差押えの流れと成功のポイント
離婚時に養育費を取り決めたにもかかわらず、「途中から支払われていない」というケースは少なくありません。子どもの生活費や教育費に充てる大切なお金が支払われないと、監護している親の負担は大きくなります。
そのような場合に利用できるのが養育費の強制執行(差押え)です。令和6年民法等改正(令和8年4月1日施行)では、法定養育費制度や養育費債権に関する先取特権の制度が新たに設けられました。
今回は、養育費の強制執行の仕組みや差押えの流れ、成功のポイントについて、弁護士がわかりやすく解説します。
養育費の強制執行とは
強制執行とは、養育費が支払われない場合に、裁判所の手続を利用して給与や預貯金などの財産を差し押さえ、未払いの養育費を回収する制度です。
特に給与を差し押さえる場合には、滞納分の養育費だけでなく、その後に支払期限を迎える毎月の養育費についても、給与から継続して回収できます。
例えば、公正証書で「子どもが20歳になる月まで毎月5万円」と取り決め、途中で未払いが発生して給与を差し押さえた場合、滞納分を回収した後も、養育費の最後の支払月まで回収できるため、給与差押えは有効な方法です。
強制執行には「債務名義」が必要
養育費を強制執行によって回収するためには、次のような債務名義が必要です。
• 家庭裁判所で作成された調停調書、審判書
• 裁判所の判決書や和解調書
• 公証役場で公証人が作成し、「支払いがなければ直ちに強制執行に応じる」という強制執行認諾文言が記載された公正証書
例えば、口約束だけで養育費を決めた場合や、当事者だけで作成した合意書しかない場合には、その内容を基に直ちに強制執行をすることはできません。この場合、養育費請求調停などを申し立て、債務名義を取得したうえで差押えを行うことになります。
差押えの流れ
① 未払い額を確認する
まず、未払いとなっている養育費の金額や期間を確認します。
例えば、「令和8年1月から6月までの毎月5万円が未払い」であれば、未払い額は30万円になります。
② 差押えの対象となる財産を調べる
給与を差し押さえる場合には勤務先の名称や所在地、預貯金を差し押さえる場合には金融機関名や支店名が必要になります。
なお、令和8年4月1日からは「ワンストップ執行手続」が導入され、裁判所への申立てにより、財産開示手続、勤務先などの情報を取得する第三者からの情報取得手続、給与の差押えまでを一連の手続として進めることができるようになりました。これにより、相手の勤務先が分からない場合でも、勤務先を調べたうえで給与差押えへ進むための手続が利用できます。
③ 裁判所へ差押えを申し立てる
財産が特定できたら、裁判所へ差押命令の申立てを行います。
相手が会社員であれば、給与債権差押命令を申し立て、裁判所が差押命令を発令すると、その命令は勤務先と相手本人に送達されます。勤務先は、差し押さえられた範囲の給与を本人へ支払うことができなくなります。
預貯金差押えを申し立てた場合には、裁判所から金融機関に差押命令が送達されます。差押え対象となった預金は、金融機関から相手本人への払い戻しができなくなります。その後、差し押さえた預金から未払いの養育費を回収します。
強制執行を成功させるポイント
【未払いを確認したら早めに対応する】
養育費の支払いが止まったら、未払いの期間や金額を確認し、早めに回収方法を検討することが大切です。公正証書や調停調書、支払履歴などを確認し、自分の場合に利用できる手続を確認しましょう。
【相手の勤務先が分からない場合も手続を検討する】
給与を差し押さえるには相手の勤務先を特定する必要があります。勤務先が分からない場合でも、ワンストップ執行手続を利用し、勤務先情報の取得から給与差押えまでを一連の手続として進められる場合があります。
養育費の未払いは早めに弁護士へ相談を
養育費が支払われない場合には、調停調書や強制執行認諾文言付きの公正証書などがあれば、それを債務名義として強制執行を申し立てることができます。
また、養育費について文書で取り決めをしている場合には、先取特権に基づき、子ども1人につき月額8万円を上限として、債務名義がなくても差押えができます。
どの方法を利用できるかは、養育費の取り決め方や手元にある書類、相手の勤務先などによって異なります。養育費の未払いでお困りの場合は、早めに弁護士へご相談ください。
養育費の取り決めや請求方法については、「弁護士による養育費についての詳しい解説」もご覧ください。
この記事を担当した弁護士

みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。















