離婚慰謝料についての詳しい解説
こんなお悩みはありませんか?
✔️ モラハラ夫と別れたいけれど、離婚時に慰謝料はもらえますか?
✔️ 双方納得して離婚するのに、妻から慰謝料を求められています。
✔️ 相手は離婚に応じず、どうしても離婚するなら慰謝料として500万円支払えと言われました。
離婚というと、「慰謝料」をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、すべての離婚で慰謝料が発生するわけではありません。
離婚時に「慰謝料」を支払うかどうかは、離婚の原因は何か、どちらに責任があるのか等の事情で異なります。
また、離婚慰謝料の請求・支払いは、単純にどちらが悪いかという問題にとどまらず、離婚を望んでいるのはどちらか、証拠はあるか、裁判になったときの見通しはどうかなど、様々な事情を考慮して戦略的に判断します。
ここでは、離婚を検討する方に向けて、慰謝料の対象となるケース、金額の目安、請求方法、証拠の集め方、そして弁護士に依頼するメリットなどを分かりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
離婚慰謝料とは
慰謝料とは、相手の不法行為によって精神的苦痛を被った場合に、その精神的損害を慰謝するため支払われる賠償金です(民法710条)。
離婚時に支払われる慰謝料(離婚慰謝料)は、相手の不法行為(不貞やDV等)によって夫婦関係が破綻し、離婚せざるを得なくなった場合に、相手の行為や離婚自体によって生じた精神的苦痛を慰謝するために支払われる賠償金です。
離婚時の慰謝料の構造
離婚時に支払われる慰謝料は、次の二つに分類できます。
「離婚自体から生じる慰謝料」:
「離婚そのもの」による精神的苦痛に対する慰謝料。離婚慰謝料という場合は通常はこちらの慰謝料のことを指します。
「個別の慰謝料」:
「離婚の原因となった個別の行為」による精神的苦痛に対する慰謝料(配偶者が不貞をしたことそのものによる精神的苦痛やDV被害による精神的苦痛)です。法的には、離婚をしなくても請求ができるものです。
離婚時に請求する慰謝料は通常は離婚慰謝料であり、その中には個別の慰謝料も含んでいると一体的に捉えるのが実務的な考え方です。そのため、実際にはこの区別が問題になることはほとんどありません。
離婚慰謝料はこんな場合に発生します
離婚慰謝料の支払義務が生じるのは、夫・妻の有責な行為(不法行為)によって夫婦関係が破綻し、離婚するに至った場合です。
次のようなケースが典型例です。
不貞行為(不倫)
明確な証拠がある場合、慰謝料が認められやすい典型例です。
DV(家庭内暴力)
直接的な暴力だけでなく、物を壊して怖がらせる行為も含まれます。
悪意の遺棄
一方的に家を出て生活費を入れない、音信不通になった、育児を放棄するなど。
モラハラ(精神的虐待)
長期間にわたる人格否定や過剰な束縛など。立証が難しいので、証拠の収集がポイントになります。
不当な性行為の拒否(セックスレス)
正当な理由なく、長期間性行為を拒否し続けた場合。ただし、慰謝料の額は低い傾向にあります。
慰謝料の相場と算出方法
慰謝料の相場 | 内容50万円~300万円 ・不貞やDVが原因で離婚に至った場合には高額の傾向 ・セックスレスの場合には50万前後と低額の傾向 |
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慰謝料が高額になる要因 | ・DV、不貞行為の場合は高額になる傾向 ・婚姻期間の長さ ・子どもの年齢(子どもが幼いほど高額になる傾向) ・離婚原因以前の夫婦関係(仲の良い夫婦が不貞を理由として離婚するような場合には高額になる傾向) ・支払う側の収入が高い ・原因行為が長期に及んでいた ・原因となる行為の悪質性が高い |
慰謝料が減額される要因 | ・もともと夫婦仲が悪かった ・不貞行為やDVの回数が少ない・頻度が低い ・慰謝料を請求する方にも不貞などの落ち度がある 謝罪は反省の態度がある |
離婚慰謝料の請求が認められないケースとは
離婚慰謝料の請求が認められるのは、夫・妻の有責な行為(不法行為)によって夫婦関係が破綻し、離婚することになってしまった場合です。
また、そのことを相手が認めるか、相手が認めない場合には裁判で証明する必要があります。
したがって、次のようなケースでは、離婚慰謝料の請求が認められないおそれがあります。
離婚慰謝料の請求が認められない可能性があるケース
✔️ (不貞などの)証拠が不十分である
✔️ 離婚の理由が性格の不一致などであり、相手の有責な行為が原因とはいえない
✔️ 相手の重い精神疾患や宗教が異なるなど、相手が「有責」とはいえない原因で離婚する
✔️ 自分も不貞をしたなど、双方に「有責性」がある
✔️ もともと夫婦関係が破綻しており、相手の有責な行為がなくても離婚していた可能性が高い
離婚慰謝料の典型的な証拠
不貞行為(不倫)
ラブホテルに出入りしている写真
肉体関係があることを示す写真やSNS、メールなどのデータ
相手が不貞行為を認める内容の書面、メールや録音データ
二人で旅行に行ったことや高価なプレゼントをしたことがわかる領収書 など
DV
怪我や精神を患ったことがわかる診断書
DV行為の録音・録画データ
被害の状況がわかる日記 など
悪意の遺棄
相手が一方的に出て行った経緯がわかるメールやSNSメッセージ
相手が生活費の支払いを拒んだことがわかるメールやSNSメッセージ
生活費のやりくりがわかる通帳の写しや家計簿 など
モラハラ
相手の言動がわかる録音・録画
相手の日常的な言動を記した日誌・メモ
モラハラにあたる言動を相手が認めた録音・録画
相手のモラハラにより精神を患ったことがわかる診断書 など
離婚慰謝料を請求する方法・手順について
離婚慰謝料の請求は、離婚の話し合い(離婚協議)や家庭裁判所での調停・裁判手続きの中で行われるのが一般的です。
ステップ1:話し合い(離婚協議)
まずは、話し合いによる解決(離婚協議)を試みます。
離婚条件として、慰謝料の支払いがあるか、金額・支払い方法はどうするかを決めます。合意がまとまった場合には、離婚協議書(できれば公正証書)の作成をおすすめします。
DVやモラハラの被害がある、相手が難色を示している、双方が考える金額がかけ離れているなどの場合には、早めに弁護士にご相談ください。
ステップ2:内容証明郵便で正式に請求
話し合いで解決しない場合には、あらためて内容証明郵便で請求することをお勧めします。内容証明郵便は、「いつ・誰が・誰に・どのような内容の」郵便物を送付したかを証明できるので、あとから「離婚慰謝料を請求した」ことを明確にできます。
なお、弁護士にご依頼いただく場合には、早い段階で内容証明郵便による請求を行うことができます。
ステップ3:家庭裁判所に調停申立て
相手が離婚に応じない、離婚条件がまとまらない、相手が慰謝料の支払いに応じない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
離婚調停は、家庭裁判所で調停委員を通じて行う離婚に向けた話し合いです。
離婚調停はあくまで「話し合い」であり、双方が合意しないときには離婚や慰謝料の支払いは認められません。
ステップ4:家庭裁判所で訴訟(離婚裁判)
調停手続きでも合意に達しない場合には、離婚裁判を検討します。
離婚裁判は、合意を前提とした協議や調停とは異なり、裁判官が法律上の判断をする手続きです。
したがって、夫婦のどちらかが有責配偶者(離婚の原因を作り出した有責な配偶者か)、婚姻関係は破綻しているか(修復不可能か)などを裁判官が夫婦の主張や証拠から判断する難しい手続きとなります。
立場や状況に応じて、調停が不成立になった段階ですぐに裁判を提起するか、別居期間を置くかといった、弁護士による専門知識が必要になります。
協議と裁判、どちらがいい?
・離婚協議のメリット
夫婦の合意を前提として柔軟で迅速な解決を図ることができ、費用が裁判に比べて安いというメリットがあります。
・裁判のデメリット
他方で裁判は、協議・調停では双方の折り合いがつかない場合に、最終的に「白黒つける」ことになる難しい手続きで、弁護士に依頼する必要性が高く、費用や時間がかかります。
・常に「裁判は避けるべきか」というと、そうとも限りません
相手が有責配偶者であるなど、裁判で離婚できる見通しがあり、受け取れる金銭も高額が期待できるというケースでは、相手が離婚条件に譲歩しないときに、無理してこちらが譲歩し協議離婚する必要はありません。時間や弁護士費用をかけてでも裁判をするメリットが、デメリットを上回るからです。
反対に、こちらは離婚を望んでいるけれど、裁判での見通しが厳しい、相手は離婚を望んでいないというケースでは、交渉段階でこちら側がある程度譲歩してでも、離婚をまとめてしまった方がいいという場合もあります。
粘り強く協議を重ねるか、早めに裁判に進むかは、弁護士が経験と専門知識をもって、適切に判断すべきポイントです。
相手が慰謝料を支払わないときの対処法
判決や和解といった「債務名義」を得ているかどうかで、対応が異なります。
1 「債務名義」を得ている場合
「強制執行」が最も強力な手段です。
「強制執行」とは、判決などで決まった義務を相手が履行しない場合に、財産を差し押さえるなどして強制的に権利を実現する手続きです。
慰謝料の支払いがない場合にも、相手の給料や預貯金などを差し押さえて、強制的に支払いを実現します。
ただし、相手にお金も財産もなく、収入もない場合には、強制執行が空振りになってしまいます。そのような場合には、分割払いを認めて少しずつでもお金を回収することも検討します。
2 「債務名義」がない場合
相手が慰謝料の支払を約束したものの、裁判手続きや強制執行認諾文言付き公正証書の作成などをしていない場合には、改めて内容証明郵便などで請求し、裁判の提起などを行って「債務名義」を取得します。
「債務名義」とは?
強制執行を行うために必要な文書です。強制執行のもとになる「債権」の存在を示し、強制執行を開始するために必要です。
「債務名義」にはいくつか種類がありますが、代表的なものが「確定判決」「執行証書(強制執行認諾文言がついた公正証書)」「和解調書」「調停調書」「審判」などです。
この「債務名義」の「正本」に、通常は「執行文」というものを付与してもらい(裁判所で行う手続きです)、強制執行の申立てをします。
離婚慰謝料のポイント・注意点
✔️ まずは証拠を確保する
相手の行為が原因で離婚することになってしまった場合には、その「証拠」をまず押さえましょう。実際に裁判にならなくても、「証拠の有無」は交渉段階から大きな影響を持ちます。
✔️ 離婚を急いで安易に「同意」しない
自分は早く離婚したいけれど、相手は応じず、高額な慰謝料を請求している。または、義務があるのに「慰謝料は支払わない」といっている。
そのような場合に、「早く離婚したい」からといって、安易に相手の提案に同意してはいけません。一度合意が成立してしまうと、後から覆すことは難しいからです。
✔️ まずは弁護士にご相談ください
支払義務はあるのか、金額は妥当か、他の離婚条件とのバランスはどうか、相手の提案を受けた方がよいかなど、離婚と慰謝料の問題は、実務経験や法律の知識がない方にとって、わからないことだらけです。
ご自身で離婚を進める場合でも、後から後悔しないために、一度は専門家のアドバイスを受け、「これでよいのか」方向性を確認しましょう。
解決事例のご紹介
離婚と慰謝料のよくある質問(Q&A)
Q:不倫相手にも慰謝料を請求できますか?
A:はい、できます。夫・妻と不貞相手に対して同時に請求することもできますが、二重取りできるわけではありません。
Q:慰謝料と財産分与の違いは?
A:慰謝料は精神的損害への賠償、財産分与は婚姻中に築いた財産の清算です。
Q:相手が無職でも慰謝料はもらえますか?
A:請求が認められても、実際に支払いを受けられるかは難しいところです。相手に収入がない場合には、分割払いに応じることで少しでも支払いを確保するなどの対応をします。
Q:離婚しないで慰謝料だけ請求することはできますか?
A:はい。できます。不貞やDVなど、相手の不法行為で精神的損害を被った場合には、離婚しなくても慰謝料請求は可能です。ただし、「離婚自体による慰謝料」が含まれない分、金額は低くなる傾向にあります。
離婚慰謝料の問題は弁護士にお任せください
✔️ 離婚慰謝料の問題は、総合的な判断が必要です
離婚慰謝料は、単に「どちらが悪いか」という問題にとどまらず、「離婚を望むのはどちらか」「証拠はあるか」「有責性の程度」「裁判での見通し」など、様々な事情を考慮しながら、メリットがある離婚条件を引き出すための総合的な判断が必要です。
✔️ 証拠の収集・整理、法的書類の作成、戦略策定を行う強い味方です
離婚問題への対応をしながら、仕事に育児にと生活をこなすことは、負担が大きくとても辛いことです。難しく手間のかかる法的な作業を任せ、不安なことは質問できる専門家を味方にしておくことは、辛い状況下での大きな安心につながります。
✔️ 紛争の早期解決に期待できる
早い段階から弁護士にご依頼いただければ、それだけ離婚問題の早期解決が期待できます。離婚問題の経験豊富な弁護士であれば、「示談交渉での妥当なライン」や「離婚裁判での有利不利」の見通しを立てて、効率的な働きかけを行います。
もちろん、相手の出方によってはどうしても紛争が長引いてしまうことはありますが、それも踏まえた「最短ルート」を想定することができます。
弁護士細江智洋は、横浜の離婚弁護士として活動し12年。
これまで280件以上の離婚問題を解決に導いてきた、離婚に強い経験豊富な弁護士です。
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「弁護士に相談する内容じゃないかも」「相談しても依頼はしないかも」
そのような心配は不要です。
まずは無料法律相談で、辛い胸の内をお聞かせください。
この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。