離婚コラム|横浜の離婚に強い弁護士 細江智洋がわかりやすく解説

2025.12.04更新

離婚コラム67

 

夫婦生活がつらくなり、「しばらく距離を置きたい」「別々に暮らしたい」と感じることは、どなたにでも起こり得ることです。しかし、法律上は夫婦に「同居義務」があるため、別居を検討したときに「これって悪意の遺棄になるのでは?」と不安になられる方も多くいらっしゃいます。
ここでは、別居と悪意の遺棄の関係、離婚や慰謝料への影響を、できるだけ分かりやすくご説明いたします。

 

■ 夫婦の同居義務とは
民法752条では、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とされています。これは、夫婦が生活を共にし、助け合うことを基本とする決まりです。
ただし、どんな場合でも同居し続けなければならないわけではありません。単身赴任、家族の介護、心身の不調、家庭内で精神的な負担を受けている(いわゆるモラハラ)など、状況によっては別居が認められることがあります。

 

■ 悪意の遺棄とはどんな状態?
悪意の遺棄とは、正当な理由もないのに夫婦の協力関係を放棄してしまう行為をいいます。
たとえば次のようなケースです。
・何の連絡もなく突然家を出て行く
・家族を避けるためだけに別居を続ける
・全く生活費を負担せず家族を放置する
いずれも、夫婦として当然果たすべき責任を自ら放棄していると判断されやすく、法律上も重大な問題とされています。

 

■ 別居=悪意の遺棄ではない
多くの方が誤解しやすいのですが、別居をしたからといって必ずしも悪意の遺棄になるわけではありません
たとえば、
・相手からのモラハラがあり、身を守るための避難として別居した
・心身の不調がひどく、医者から環境を変えるようすすめられた
・相手からの暴力から子どもを守るためにやむを得ず家を出た
といった事情がある場合には、正当な理由があります。
このような状況での別居は悪意の遺棄にあたることはありません。むしろ、安全を確保するための大切な行動といえます。

 

■ どんな別居が悪意の遺棄と判断されやすいの?
次のような場合は、悪意の遺棄と評価されやすくなります。
・夫婦関係を修復する意思がなく、一方的に家を出た
・理由を説明せず、連絡も断ち、生活費も負担しない
・家庭を支える姿勢が見られないまま、一方的に離れて生活している
たとえ正当な事情があって別居した場合でも、相手に全く事情を伝えないまま家を出たり、別居後の生活の見通しを全く立てずに別居を始めてしまったりすると、誤解されてしまうかもしれません。結果として、「家庭を放置した」「理由のない別居だ」と受け取られ、悪意の遺棄だと主張される可能性もあります。
もちろん、DV・モラハラのように緊急性がある場合は準備が不十分でも仕方ありません。しかし、安全を確保できる場合には、別居前にできる範囲で準備や相談をしておくことが大切です。

 

■ 悪意の遺棄と離婚・慰謝料の関係
悪意の遺棄は、民法に定められている「離婚原因」のひとつです。
そのため、相手が「悪意の遺棄」に該当する行動をとっている場合は、離婚請求が認められやすくなります。
また、長期間の放置や生活費の不払いが続いたために、精神的な苦痛が大きい場合には、「悪意の遺棄」とみなされ、慰謝料の請求が認められる可能性があります。
相手とのトラブルを大きくしないためにも、別居に踏み切る際には慎重な判断が求められます。

 

■ 別居を考えている方へ
別居は、夫婦関係をいったん整理し、自分の心と体を守るためには大切な選択です。しかし、自分から別居した場合に法律上どうみられるか、また別居後の生活費はどう工面したらいいかなど、考えるべきことも多く、不安で踏み切れない方も多いでしょう。
・自分の別居理由は正当といえるのか
・悪意の遺棄と誤解されないための準備は何か
・別居後の生活費(婚姻費用)はどうなるのか
こうした疑問は、それぞれの状況によって答えが異なります。ひとつずつ確認しながら、着実に進めていきましょう。
別居に関する詳しい情報は、
「離婚に向けて別居を考えている方へ」のページでもご覧いただけます。


お一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
弁護士細江智洋が、今の状況とお気持ちに寄り添いながら、最適な方法をご一緒に考えてまいります。

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

2025.12.01更新

離婚コラム66

 

夫から暴力的な言葉を繰り返され、自分の心身がすり減っていく――。近年、「モラルハラスメント(モラハラ)」に悩み、別居を考える方が増えています。しかし、「勝手に家を出たら夫婦の同居義務違反になるのでは?」と心配で、踏み切れない方も少なくありません。
そこで今回は、夫婦の同居義務の基本と、モラハラを受けて別居する場合に違反になるのかどうか、弁護士の立場から分かりやすく解説します。別居を検討する場合に知っておきたい注意点も紹介しますので、別居を検討している方は、最後まで目を通してみてください。

 

■夫婦には「同居義務」があるが、例外も認められる
民法752条には、夫婦は「同居し、互いに協力・扶助しなければならない」と定められています。一見すると、「家を出る=法律違反」と思われがちですが、実は 正当な理由があれば別居は認められる とされています。
この「正当な理由」には、暴力や浮気だけでなく、暴言や人格否定など、精神的なモラハラも含まれます。
相手の言動によって精神的に追い詰められ、家庭生活が苦しくなるような場合、別居は十分に正当と見なされます。

 

■モラハラ夫から逃れるための別居は同居義務違反ではない?
モラハラを受け続けている場合は、精神的にも身体的にもつらい状態が続くこともあります。
例えば
・無視を続ける
・人格を否定する
・家事のやり方や生活費の使い方を一方的に指示される
・どこにいるのか携帯を常に確認される
といった行為は、精神的DVとして扱われることもあります。
これらが日常的に行われている場合、心身の安全を守るための別居は「正当な理由のある別居」 と判断されやすく、同居義務違反を問われることは通常ありません。
相手から「家を出たのはお前が悪い」「同居義務違反だ」などと言われたとしても、そのような主張は法的にみれば根拠がないことがほとんどです。

 

■別居を考えるときに大切なポイント
モラハラから距離を置くために別居することは有力な手段ですが、できるだけ慎重に進めることが大切です。次の点を心がけてください。
① モラハラの言動の記録を残す
モラハラの言動の内容をメモや日記、LINE、動画などで記録しておくと、「正当な理由」であることを説明しやすくなります。
② 安全を最優先に
別居したときの相手の反応が怖い場合は、家族・友人・シェルターなど安全な場所に避難しましょう。必要に応じて警察や自治体の相談窓口も利用できます。
③ 生活費(婚姻費用)の請求も可能
別居してもまだ離婚していない間は、生活費を分担する義務があります。
夫の方の収入が多いにもかかわらず、夫が生活費を渡さない場合、法的に請求できる場合も多くあります。
④ 別居後の見通しを整理しておく
別居は夫婦関係の悪化である証拠でもあり、別居をきっかけに離婚が進展することがあります。
離婚に際して親権、財産分与、養育費など、先のことを早めに検討しておきましょう。

 

■弁護士に相談すると何が違う?
・別居の正当性は何か
・別居の理由としてどんな証拠が必要か
・別居後の生活費をどう確保するか
・相手が強く反発してきた場合にどう対応するか
など、一つひとつ丁寧にアドバイスできます。
また、夫と直接やり取りをしなくて済むため、精神的に楽になります。夫との話し合いでこれ以上我慢し続ける必要はありません。

 

■つらい状況から一歩踏み出すために
モラハラは外から目につきにくく、「自分さえ我慢すれば…」と抱え込んでしまい、気づかないうちに心も体も深く傷ついていることは多くあります。
別居は、決して「逃げ」ではなく、自分や子どもを守るための大切な選択です。
状況に応じた最適な対応方法をご提案し、安全に別居できるようにサポートいたします。
別居の流れや注意点をまとめたページもご用意していますので、ご覧ください。
→ 離婚に向けて別居を考えている方へ
モラハラにお悩みの方は、一人で抱え込まず、何なりとご相談ください。弁護士細江智洋が丁寧に状況をお伺いし、最適な方法をご一緒に考えてまいります。

 

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
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2025.11.28更新

離婚コラム65

 

夫婦には「同居して助け合う義務(民法752条)」があります。
これは、夫婦が同じ住居で協力しながら生活することを定めた、法律上の基本的なルールです。
そのため、一方的に家を出てしまうと「同居義務違反」とされ、離婚の話し合いや離婚裁判で不利に扱われることがあります。
しかし、別居がすべて同居義務違反に当てはまるわけではありません。
心身の安全を守る必要がある場合や、家庭生活を続けられない事情がある場合は、別居が認められることがあります
ここでは、どのような事情であれば別居が認められるのか、また別居を考える際の注意点について、わかりやすくご説明します。

 

■ 別居が認められるケースとは?
実務や裁判例では、次のような事情があると別居が認められやすいと考えられています。

① 配偶者からの暴力(DV)
殴る・蹴るといった身体的暴力はもちろん、暴言や威圧的な態度、生活費を全く渡さないといった精神的・経済的DVも該当します。
身の安全を守るために家を出る場合は、別居が認められる典型例です。


② モラハラ等で心身に大きな負担がかかっている
日常的な侮辱や無視、過度な束縛で強いストレスを受け、心身に支障が出ている場合は、同居を続けること自体がつらく、「別居が必要」と認められることがあります。


③ 生活が成り立たないほどの浪費・ギャンブル
配偶者が借金やギャンブルを繰り返し、家計が破綻している場合は、これ以上同居を続けることが難しいと判断されやすい状況です。
特に子どもの生活に影響が出ている場合、別居を選ばざるを得ない状況といえます。


④ 冷静に話し合うための一時的な別居
夫婦間の争いが深刻で、自宅では話し合いにならない場合、調停など第三者を交えるために一時的に別居することもあります。
このような状況では、不必要に家を出たとは扱われません。


⑤ 本人の治療や療養のためにやむを得ない別居
本人の入院・治療・静養が必要で、実家など別の場所で生活せざるを得ない場合、別居が認められることがあります。

 

■ 別居が認められるためには「記録」が大切
正当な理由があって別居しても、証拠となる記録や資料が無ければ、相手から「勝手に出て行った」と主張される可能性があります。
そのため、次のような記録を残しておくと安心です。
• 暴力・暴言の記録(メモ、録音)
• 通院記録や病院の診断書
• 家計の状況が分かる記録(預金通帳など)
• 別居前の話し合いの経緯(メモ)
客観的な資料があると、別居にいたった事情を調停や裁判でも正しく理解してもらえます。

 

■ 正当な理由なく別居すると不利になることも
正当な理由がない別居は、後の離婚調停や裁判で「別居によって夫婦関係が悪化した」と判断され、不利になる場合があります。
特にお子さんを連れて別居する場合は、慎重な判断が必要です。
別居はその後の手続きに大きく影響しますので、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。


■ 別居を検討している方へ
「別居したいけれど、同居義務違反にならないか心配」
「別居するにはどのような段取りを取ればよいか分からない」
このようなお悩みはとても多いです。
弁護士細江智洋は、別居のタイミングや準備方法、別居するときの注意点まで、一人ひとりの状況に合わせて丁寧にアドバイスしています。
別居の流れや注意点をまとめたページもございますので参考になさってください。

▶離婚に向けて別居を考えている方へ
あなたの状況に寄り添いながら、安心して進められるようお力添えいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

 

2025.11.25更新

離婚コラム64

 

夫婦の話し合いで離婚の条件がまとまらない場合、次のステップとして「離婚調停」があります。家庭裁判所で、裁判官と男女2名の調停委員が間に入り、夫婦それぞれの意見を丁寧に聞きながら話し合いを進めます。
ここでは、離婚調停で実際にどんな内容を話し合うのか、そして調停委員からどんな質問を受けるのかを分かりやすく解説します。

 

1.離婚するかどうかの意思確認
最初に調停委員から聞かれるのは、「あなたは離婚を希望していますか?」「離婚したいと思う理由は何ですか?」といった、離婚の意思と理由についてです。
夫婦の関係が悪化した経緯や、別居の有無、これまでの話し合いの状況などを説明します。
落ち着いて、事実を整理して伝えることが大切です。たとえば「夫が長期間家に戻らない」「妻が生活費を渡してくれない」など、具体的にかつ時系列で状況を説明できるとスムーズです。
離婚そのものに合意できない場合でも、調停委員が双方の考えを整理し、歩み寄りのきっかけを探ります。

 

2.親権・監護権についての話し合い
子どもがいる場合、調停で最も重視されるのが親権監護権です。
調停委員からは「これまで子どもの世話は主にどちらでしたか?」「今後どんな環境で育てたいと考えていますか?」といった質問をされます。
ここでは、子どもの通学環境、生活リズム、両親や祖父母との関わり方など、子どもの利益を最優先に考えた説明が求められます。
例えば、「平日は母親が仕事で忙しいが、祖父母が保育園の送り迎えを手伝っている」「父親が休日に子どもと過ごす時間を大切にしている」といった具体的な生活の様子を伝えましょう。
親権や監護権は、父母どちらの下で生活することが、より子の利益にかなうかという観点で判断されます。

 

3.養育費と面会交流の取り決め
親権が決まると、次に話し合うのが養育費と面会交流です。
調停委員からは「相手の収入はどのくらいですか?」「子どもの年齢や今後の進学予定は?」「面会は月に何回くらいで考えていますか?」など、生活に関する具体的な質問が出ます。
養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費算定表」をもとに、父母の収入や子どもの人数から算出されます。
面会交流については、「月1回2時間程度」「夏休みなどの長期休暇に宿泊を伴う面会」など、どのような内容が子どもの利益に最も適うかという観点から、具体的な方法を検討します。

 

4.財産分与・慰謝料の話し合い
結婚生活で築いた財産の分け方も重要なテーマです。
調停委員からは「預貯金や不動産はどのように管理していますか?」「退職金や保険はありますか?」といった質問を受けます。
財産分与の対象は、婚姻期間中に形成された共有財産です。結婚後に貯めたお金や購入した資産は名義がどちらであっても夫婦で分け合うのが原則です。
また、不倫や暴力など相手に離婚原因がある場合は、調停で慰謝料の請求ができます。
もっとも、慰謝料について相手を納得させて合意を得るためには、LINEのやりとりや診断書など、明確に証拠となる資料を用意しておくことが重要です。

 

5.年金分割や離婚後の生活について
調停委員から「どのくらいの婚姻期間でしたか?」「相手の年金記録は確認していますか?」と質問されることがあります。
年金分割は、将来受け取る年金額に関わる大切な手続きであり、婚姻期間中の夫婦の厚生年金の記録を原則として2分の1ずつ受け取れる制度です。調停が成立すればその合意内容をもとに年金事務所に申請します。
そのほか、姓の変更、引っ越し、子どもの転校など、離婚後の生活設計についても具体的に話し合うことができます。

 

6.弁護士に相談して準備を整えましょう
離婚調停は、事実関係や金銭の根拠を明確にすることが求められます。たとえば、別居の時期や生活費の支払い状況を説明する場合、家計簿・通帳の記録・送金履歴などの資料が根拠になります。
調停では、どちらか一方の言い分だけが優先されることはありませんが、自分の主張を裏付ける資料を示すことで、調停委員の理解を得やすくなります
弁護士に相談すれば、必要な書類や証拠の整理、話し方のポイントなど、具体的にアドバイスを受けながら調停に臨めます。

離婚調停の流れや詳しい手続きについては、
➡離婚調停の解説はこちら
離婚調停に不安を感じる方は、弁護士細江智洋にご相談ください。
あなたの立場を守りながら、ベストなの解決の道へ導くためにサポートいたします。

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
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2025.11.22更新

離婚コラム63

 

離婚調停は、夫婦間の感情的な対立を避けながら、調停委員を通じて話し合いを進める手続きです。本来は「勝ち負け」を競う場ではありませんが、実際には、主張の伝え方や準備の仕方によって結果に大きな差が出ます。
その意味では、あなたにとって「勝つ」「負ける」と感じる結果の差が生まれることは確かです。
そこで本コラムでは、離婚調停で”勝つ”、すなわち有利に進めるための7つの戦略を弁護士の視点から解説します。

 

1.目的を明確にする
まず大切なのは、調停で「何を求めているのか」をはっきりとさせることです。離婚自体を成立させたいのか、親権を取りたいのか、あるいは慰謝料や財産分与の金額を重視するのか。ご自身の目的を明確にしておかないと、主張がぶれて調停委員に伝わりにくくなります。
具体的に目的を書き出しておくことで、混乱せずに優先順位をつけられるようになります。

 

2.感情的にならず事実を伝える
調停は話し合いの手続きですから、「どちらが悪いか」を決める場ではなく、離婚するかどうか、離婚する場合の条件をお互いの合意で決める場所です。感情的に発言をしてしまうと、合意を目指した話し合いが難しくなり、調停委員にマイナスの印象を与えかねません。
「時系列で事実を整理して、冷静に伝える」ことが信頼につながります。LINEのやり取りや家計の記録など、客観的な証拠を準備して説明すると効果的です。

 

3.証拠をしっかり準備する
特に慰謝料や財産分与の話し合いでは、有効な証拠の有無が大きな差になります。預貯金通帳やローンの残高証明、生活費の支出記録など数字やデータで示せる証拠を準備しておくと、財産や費用の実態を客観的に示せます。
また、子どもの教育費や医療費の明細は、養育費を決める際の参考にもなります。
弁護士に相談すれば、どの証拠が効果的で、どのように提出すべきか具体的なアドバイスを受けられます。

 

4.調停委員の信頼を得る
調停では、調停委員が双方の意見を整理して合意できる条件を探ります。したがって、調停委員の信頼を得ることはとても大切です。
誠実な態度を心がけ、相手の人格を否定する言葉は避けましょう。「落ち着いて話を聞ける人」という印象が、調停の流れを円滑にします。

 

5.相手の主張を予測しておく
相手がどのような主張をしてくるかを想定しておくことで、調停当日に慌てずに対応できます。
たとえば、「生活費は十分に渡していた」と言われそうなら、実際に支払記録を示す証拠を準備しておく、といった具合です。争点がいくつもあるのであればまずは整理しておくことが“勝つ”ための鍵となります。

 

6.妥協点を考えておく
調停は裁判のような「勝ち負け」を決める手続きではなく、合意を目指す話し合いです。たとえば「財産はすべて半分ずつにしたい」と主張しても、相手が「住宅ローンを自分が多く負担してきた」と譲らない場合、調停が長引くことがあります。このような調停手続きでも「勝つ」「有利に進める」という場合、どの条件であれば受け入れられるか、事前に妥協点を決めておくことが大事です。自分にとってここまでは守りたい、早期解決のためならここまでは譲歩できる、ということを決めておくことで、あなたにとっての「勝ち」「有利」を設定することができます。多くのケースで、多少の譲歩をして早期に合意することで、結果的に精神的負担や時間的コストを減らせます。

 

7.弁護士に相談して戦略を立てる
離婚調停を有利に進めるには、法律と実務の両面を考慮した戦略が欠かせません。弁護士は、あなたの主張を整理し、必要な証拠を整え、調停委員に伝わりやすい形にまとめるサポートをします。
「感情的にならず、理論的に伝える」ためにも、早めの相談が安心です。

 

まとめ
離婚調停は、証拠等の準備と調停に臨む姿勢によって結果が大きく変わります。事実をもとに、落ち着いて主張を整理することが大切です。
弁護士に相談すれば、調停の流れを理解しながら、あなたにとって最善の解決策を一緒に考えることができます。
離婚調停に出ることに不安を感じている方や、条件や主張をうまく伝えられるか心配な方は、弁護士細江智洋にご相談ください。豊富な調停経験をもとに、あなたの立場をしっかりと整理し、有利に進めるための戦略を一緒に立てていきます。
➡離婚調停の解説はこちら

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2025.11.19更新

離婚コラム62

 

離婚調停は、家庭裁判所で第三者である調停委員を交え、夫婦が離婚条件を整理するための大切な手続きです。
しかし、感情的になって不適切な発言をしてしまうと、調停がこじれたり、調停委員に不利な印象を与えたりすることがあります。
この記事では、離婚調停で言ってはいけない言葉10選と注意すべきポイントを、弁護士の視点から解説します。

 

1.「どうでもいいです」
調停委員に「きちんと話し合う気がない」と受け取られ、いい加減な印象を与えます。誠実に話し合う姿勢を示すことが、信頼を得る第一歩です。
2.「全部相手が悪い」
中には相手の不倫のみが離婚原因であるということもありますが、夫婦不和の原因が100%相手にあるということは稀ですから、離婚原因を相手方に一方的に押しつける発言は、感情的と見なされがちです。ご自身に非がない場合でも、原因となった出来事を整理して具体的に事実を伝える方が、調停委員の理解を得られます。
3.「これ以外は絶対に認めません」
強い意志を示すつもりで言ったとしても、調停委員には「話し合う余地がない」と見えてしまいます。
調停はあくまで双方が歩み寄って成り立つ手続きです。譲れない部分がある場合でも、「どうすればお互いに納得できるか」という見方をすることが大切です。
もちろん、話し合いの最終局面でこれ以上譲歩はできないというときは、きっぱり断りましょう。
4.「子どもには絶対に会わせない」
親権や面会交流の話では、子どもの利益が最優先です。一方的に相手の面会を拒絶することは、「子どもの利益を無視している」と受け取られるおそれがあります。
5.「法律のことはよく分からないのでお任せします」
謙虚な姿勢のつもりで言ったとしても、調停委員に「自分の主張を伝える気がない」と判断されることがあります。
調停は自分の意思で進める手続きです。希望条件や譲れない点をはっきり伝える姿勢が大切です。
法律的な部分に不安がある場合は、弁護士に相談してサポートを受け、安心して話し合いに臨みましょう。
6.「お金のことは後でいい」
慰謝料・財産分与・養育費などの金銭面にかかわる問題は、調停での話し合いの中心になります。後回しにするとトラブルのもとになります。曖昧にせず、具体的に話し合うことが大切です。
7.「そんな書類は見ません」
預金通帳や収入証明などの資料は、調停での話し合いで重要な判断材料となります。確認を怠ると、誠実さに欠けると判断されることがあります。
8.「裁判になってもいい」
強気な発言は一見勇ましく思えますが、調停委員から「歩み寄る気がない」と受け取られてしまいます。お互いの妥協点を探る姿勢を見せることが、結果的に有利に働きます。
もちろん、これ以上妥協するくらいなら裁判で構わないという最終局面では、はっきりと伝えることも大事です。その場合は裁判になった場合に今よりも有利になるのかどうかを、事前に弁護士に相談をしておくことをお勧めします。
9.「あなたたちは味方じゃないんでしょ」
調停委員は中立の立場をとっており、どちらか一方の味方ではありません。不信感をあらわにせず、「子どもの送迎は私が担当していました」というように具体的に事実を伝える方が調停を円滑に進められます。
10.「相手の言うことは全部ウソです」
相手の発言を全面的に否定するだけでは、信頼を損ねやすく感情的な発言に聞こえます。
反論したい内容がある場合でも、「この話は事実と少し違います」「この時はこういう事情がありました」と、具体的に説明する方が誠実な印象を与えます。
事実を正確に伝えることで、あなたの主張が理解されやすくなります。

 

発言の内容より「伝え方」が重要
離婚調停では、話す内容だけでなく、「言い方」や「態度」も重要です
感情をぶつけるよりも、自分の主張を落ち着いて伝える方が、あなたの言い分がうまく伝わり、調停委員からの理解も得られます。
不安や迷いがある場合は、弁護士の助言を受けながら進めることで、冷静に対応できます。

 

不安を感じる方こそ弁護士にご相談を
離婚調停では、「どう条件を提示すればいいのか」「落ち着いて話す自信がない」といった不安を抱える方が少なくありません。
調停の場では、感情をコントロールしながら、はっきりと希望を伝えることが求められます。
弁護士がサポートに入ることで、発言内容の整理や条件提示の方針を一緒に考え、あなたの希望をしっかりと伝えるお手伝いができます。
調停を少しでも安心して進めたい方は、
➡離婚調停の解説ページはこちら
離婚調停で不安を感じている方は、ぜひ弁護士細江智洋にご相談ください。
法律面だけでなく、気持ちの整理や話し方のサポートまで、あなたの味方として丁寧に寄り添います。

 

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2025.11.16更新

離婚コラム61

 

離婚を夫婦の話し合いでまとめられない場合、家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てることができます。
しかし、「調停はどれくらいの期間がかかるのか」「仕事や育児に支障はないのか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、離婚調停にかかる平均的な期間や、調停が長引くケース・円滑に進むためのポイントについて、弁護士が分かりやすく解説します。

 

離婚調停の平均期間はおよそ6か月前後
家庭裁判所が公表する令和5年度司法統計によると、離婚調停が成立または不成立に至るまでの平均期間はおよそ6か月~1年程度です。
ただし、実際には3か月ほどで終わるケースもあれば、1年以上かかるケースもあります。
通常、離婚調停は1〜2か月おきに1回開かれるのが一般的です。
たとえば、月1回のペースで調停期日が3〜5回程度開かれた場合、半年ほどで結論が出るという計算になります。

 

調停が長引く原因とは
離婚調停の期間が通常より長くなる主な理由には、以下のようなものがあります。
1. 争点が多い場合
 離婚するかどうかだけでなく、親権・養育費・財産分与・慰謝料など、複数の問題を同時に話し合う必要がある場合は時間がかかります。
2. 相手が出席しない・話し合いに応じない場合
 相手方が期日に欠席する場合、あるいは話し合いが平行線のまま進まない場合は、次回期日までの間隔が長くなりがちです。
3. 資料の提出や財産調査に時間がかかる場合
 不動産や預貯金の調査、収入証明などが必要な場合、書類の取り寄せに時間がかかることがあります。
4. 家庭裁判所の混雑
 地域や時期によっては、家庭裁判所のスケジュールが立て込んでおり、次の期日まで数か月空くこともあります。

 

できるだけ円滑に進めるためにできること
離婚調停は、長引けば長引くほど精神的にも肉体的にもお互いの負担が大きくなります。
話し合いが進まないまま何か月も過ぎると、生活や仕事に支障が出ることもあり、相手との関係がさらに悪化してしまうケースもあります。
だからこそ、できるだけ円滑に調停を進めるための準備が大切です。
• 主張や希望を整理しておく
 「どんな条件で離婚したいのか」「譲れない点は何か」を明確にしておくと、調停がスムーズに進みます。
• 必要書類を早めにそろえる
 婚姻費用・養育費・財産分与などを求める場合には、収入や資産を数字やデータで示す資料を準備しておくことが重要です。
• 弁護士に相談する
 弁護士に依頼すれば、法律的に整理された主張を調停委員に伝えられるため、話し合いが脱線しにくくなります。
 また、弁護士が間に入ることで感情的な対立を避けられ、必要な資料の収集や交渉の進め方も的確にサポートしてもらえます。
 その結果、調停全体がよりスムーズに進み、納得のいく解決に近づきやすくなります。

 

調停が不成立だった場合はどうなる?
調停で合意に至らなかった場合、「調停不成立」となり、審判や離婚裁判へ進むこともあります。
ただし、調停で話し合った内容はその後の裁判に活かされることも多く、無駄にはなりません。
離婚調停の流れや、申し立てから解決までのステップについては、下記ページで詳しく解説しています。
➡ 離婚調停の解説はこちら

 

まとめ
離婚調停は平均で6か月前後かかるのが一般的ですが、争点が多い場合や準備が不足した場合は1年以上に及ぶこともあります。
長期化すれば心身の負担が大きくなるため、早めに弁護士の力を借りて、効率よく進めることが重要です。
調停はあくまで「話し合いの場」です。感情的にならず、落ち着いて対応することが解決への近道です。
不安や疑問がある場合は、離婚問題に詳しい弁護士細江智洋にご相談ください。
豊富な経験をもとに、あなたの状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

 

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2025.11.13更新

離婚コラム60

 

離婚に際して「親権をどうするか」という話題はよく耳にしますが、「監護権」という言葉は、聞き慣れないと感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、この「親権」と「監護権」は似ているようでいて、法律上はまったく別の意味を持っています。今回は、それぞれの違いや、親権と監護権を分けて決めるケース、注意すべき点についてわかりやすく解説します。

 

親権とは?
親権とは、未成年の子どもを育てるうえで必要な「法律上の権利と義務」です。親権は大きく分けて次の2つの側面があります。
1. 身上監護権:子どもと一緒に生活し、生活全般の世話や教育を行う権利・義務(住む場所を決めたり、学校に通わせたりすることなど)
2. 財産管理権:子どもの財産を管理し、必要に応じて法律行為を代わりに行う権利(子ども名義の預貯金の管理や契約・相続手続きなど)
通常、結婚している間は父母が共同で親権を行使しますが、離婚後はどちらか一方が親権者になります。市区町村役場に離婚届を提出する際には、必ず親権者を決める必要があります。

 

監護権とは?
一方、監護権とは、子どもと一緒に生活し、日々の世話や教育を行う権利・義務を指します。親権の中の「身上監護権」に近い部分だけを取り出したもの、と考えるとイメージしやすいでしょう。
たとえば、子どもと一緒に生活して食事や通学の世話をする、健康管理をする、日常生活を見守るといった行為が監護権にあたります。

 

親権と監護権を分けて定めることもできる
多くの場合、どちらかの親を親権者=監護者(どちらも同じ人)として決めますが、事情によっては親権者と監護者を別々に決めることも可能です。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
• 父母が遠く離れて暮らすことになり、生活環境や通学の関係で母親が監護者として子どもを育てる方が適している
• 父親が経済的に安定しており、子どもの財産を管理するのに適しているため、父を親権者にする
このように「親権」と「監護権」を分けることで、子どもの利益を最優先にした柔軟な対応が可能になります。

 

親権と監護権を分ける場合の注意点
親権と監護権を分ける場合、将来的にトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。
たとえば、進学や転居など、子どもの生活に関する重要な判断をする際に、親権者と監護者の意見が食い違うと手続きが難しくなることがあります。
また、監護者に子どもを預けている親権者が、親の判断で急に子どもを連れ出すと「連れ去り」とみなされるおそれもあります。
なお、親権者と監護者を分けた事を、離婚届に明記することはできません
離婚届には「監護者」を明記する欄は無く、「親権者」を記載する欄しかないためです。そのため、監護者を別に定める場合は、離婚協議書に明記し公正証書化しておく、あるいは家庭裁判所で監護者指定の調停・審判を申し立てておくことが大切です。
また、戸籍上、子どもが親権者の戸籍に入る点にも注意が必要です。
たとえば、父親が親権者で、母親が監護者の場合、子どもは父親の戸籍に入ります。
母親と同居していても戸籍上は父親の戸籍のままとなるため、学校や行政手続きで監護者である母親がすぐに対応できないケースが生じることがあります。
子どもの生活実態に合わせて戸籍を母親に移したい場合は、家庭裁判所に親権者変更の申立てを行う必要があります
親権と監護権を分けるかどうかは、メリット・デメリットをよく調べたうえで慎重に判断することが大切です。

 

まとめ:子どもの幸せを第一に考えて
親権と監護権は似て非なるものであり、それぞれの意味を正しく理解することが、離婚後の子育てにおいてとても重要です。
「どちらが親権を持つか」「どちらが子どもと生活するか」は、両親の思いだけでなく、子どもの利益を最優先に考えることが大切です。
今後は共同親権制度の導入(2026年4月1日施行)が予定されています。これまで離婚後は一方の親しか親権を持てませんでしたが、制度が施行されると、父母が協力して子どもの養育に関わることが可能になります。ただし、共同親権にも、親同士の意見が分かれた際の調整や、子どもの安定した生活への配慮といった課題はあります。
親権や監護権をどのように決めるか悩んでいる方は、早めに専門家へ相談してみましょう。
弁護士細江智洋は、親権・監護権に関するご相談を多数お受けしています。詳しくは下記ページをご覧ください。
→親権・監護権のご相談はこちら

 

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

2025.11.10更新

離婚コラム59

 

離婚するときに、どちらが子どもの親権を持つかは、夫婦にとって最も大きな関心事です。「親権争いで不利になってしまったら、どうすればいいのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
ここでは、実際の親権争いで重要になるポイントと、すぐにできる具体的な準備について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。

 

■ 親権を決める基準とは?
家庭裁判所が親権者を決めるとき、最も重視するのは「子どもの利益」です。つまり、子どもにとってどちらの親のもとで生活するのが最も幸せか、という観点から判断されます。
具体的には次のような要素が考慮されます。
• 現在の監護状況(主にどちらが子どもの世話をしているか)
• 住環境や経済状況(子どもに個室があるか、生活の安定性があるか、今後も安定した収入を得られるか)
• 子どもの年齢・性格・希望(幼児の場合はこれまでの生活環境の継続を重視、小学校高学年以上では本人の意思も参考にされる)
• 親の養育能力・精神的安定性(生活リズムが整っているか、精神的に落ち着いて子どもに接しているか、健康状態に問題がないか)
• 離婚後の生活設計(転居・転校などの影響)(転居・転校の予定、通学時間、祖父母などのサポート体制があるか)
単に「経済的に余裕がある」「時間がある」といった利点だけでは決まりません。これらを総合的に見て、家庭裁判所は子どもの安定した生活環境を守るための判断を行います。

 

■ 親権争いで有利になるための3つの準備
① ふだんどのように子育てをしてきたかを記録しておく
「どちらが子どもの世話をしてきたか」は、最も重視されるポイントです。
たとえば、食事の準備、保育園や学校の送り迎え、通院の付き添い、宿題のサポートなど、日常生活の中で自分が子どもとどのように関わってきたかを記録しておきましょう
子どもとの写真や親子でのLINEのやり取り、保育園の連絡帳なども有力な証拠になります。思い出すことができたとしても記録がなければ立証が難しいため、早めに整理をしておくことが大切です。


② 住環境やサポート体制を整える
離婚後にどんな環境で子どもを育てるかも親権を決めるうえで重要なポイントです。
たとえば、子どもが安心して暮らせる住まいがあるか(住居の安全性や治安、静かな環境)、通園や通学に無理がないか(学校までの距離や交通手段)、落ち着いた生活が続けられるか(引っ越しや転職の予定がないか)などが考慮されます。
また、祖父母など周囲の協力が得られる場合は、そのサポート体制も大きな支えになります。家庭裁判所は、「一人で無理をして育てるより、周囲に支えてくれる人がいる方が子どもにとって安心」と考える傾向があります。
このように、子どもが安定して生活できる環境を整えておくことが、親権争いでは大切な準備になります。


③ 感情的な対立を避け、冷静な対応を
親権争いの最中は、相手とのやり取りが感情的になりがちです。しかし、相手に対する暴言やトラブルは裁判所の印象が悪くなるだけでなく、子どもに悪影響を与えるおそれもあります。
子どものために「冷静に話し合う態度」を保つことが、結果的に信頼につながります。
弁護士を通じて相手と話し合うことで、感情的にぶつかり合うことなく前向きな解決を目指すことができます。

 

■ 弁護士に相談するメリット
親権争いの問題は、親の感情だけでなく、法律上の判断や子どもの気持ちなど、いくつもの要素が関係します。弁護士に相談すれば、どのような証拠を集めるべきか、どう主張を整理すべきかを具体的にアドバイスしてもらえます。
また、家庭裁判所での調停や審判の手続きにも精通しており、依頼者の立場を冷静に代弁することができます。
特に、すでに別居している場合や、相手が子どもを連れて出て行ったケースでは、早めの対応が重要です。時間が経つと、今の生活の形が定着してしまいやすく、子どももその環境に慣れていくため、親権を求めるのが難しくなることもあります。

 

■ まとめ
親権争いで有利になるためには、「子どもの安定した生活を守れること」を具体的に示す準備が欠かせません。
子どもとの日常の関わりを記録し、子どものとの生活環境を整え、相手との冷静な話し合いを心がけることが大切です。
親権問題に詳しい弁護士細江智洋にぜひご相談ください。弁護士のサポートを受けることで、法的にも実務的にも最善の方法を取ることができます。親権や監護権に関する詳しい解説は、こちらのページでもご覧いただけます。
➡ 親権・監護権について詳しくはこちら

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
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2025.11.07更新

離婚コラム58

 

最近、「共同親権」という言葉をニュースなどで耳にする機会が増えてきました。これまで日本では、離婚後の親権は父親あるいは母親のどちらか一方にしか認められない「単独親権制度」が採用されていました。しかし、2024年に民法が改正され、2026年4月1日より離婚後も父母が共同で親権を持つことができるようになります(「共同親権制度」。)。今回は、この「共同親権」について、その概要や導入の背景、そして今後の方向について分かりやすく解説します。

 

1.そもそも「親権」とは?
「親権」とは、未成年の子どもを育てるための必要な法律上の権限や責任のことです。具体的には、子どもの生活や教育、居住地の決定といった「身上監護権」と、財産を管理する「財産管理権」の二つの意味があります。
これまで日本では、離婚後はどちらか一方の親が親権者になる単独親権制度が原則でした。そのため、離婚後に親権を持たない親が、子どもの進学や居住などの大事な決定に関われないという問題が指摘されてきました。

 

2.共同親権制度の概要
改正民法では、離婚時に父母が話し合いによって「共同親権」または「単独親権」を選択できる仕組みが導入されます。
共同親権を選んだ場合、父母が協力して子どもの養育方針を決め、進学・医療・財産管理などについて話し合いながら決定することになります。
共同親権とは、子どもの利益を最優先に考えて両親が「一緒に」判断することが基本ですが、両親の意見が常に一致するとは限りません。重要な決定事項について意見が食い違った場合、一方に単独行使を認めるよう家庭裁判所に判断を求めることもできます。なお、急を要する場合や日常行為は例外的に単独行使が認められています。

 

3.共同親権導入の背景と目的
共同親権制度の導入の目的は、「子どもにとって離婚しても両親との関わりを保てるようにする」ことです。
最近では、父親の育児参加が進み、家庭のあり方も変化しています。その中で、「離婚後も父母がともに子育てに責任を持つ仕組みが大切ではないか」という声が高くなりました。
また、国際的には共同親権が主流であり、日本の単独親権制度は一部の国際機関から「子どもの福祉の観点で再検討が必要」と指摘されてきました。このような流れを受け、法改正が進められたのです。

 

4.今後の課題と注意点
一方で、DV(家庭内暴力)や虐待がある場合は、共同親権が子どもの安全を脅かすおそれもあります。そのため、改正法では、どちらかの親からの暴力や虐待がある場合には共同親権を認めないといった制限も設けられています。また、離婚時に「単独親権」あるいは「共同親権」にするか協議がまとまらない場合、家庭裁判所はどちらが子どもの利益に適うか判断します。つまり、共同親権はすべての家庭に対応できる制度ではなく、家庭ごとに慎重な判断が必要になります。
制度の運用方法や家庭裁判所での判断基準など、まだこれから整備が進む段階です。離婚を検討している方にとっては、今後の法施行や運用についての情報を把握しておくことが大切です。

 

5.共同親権を考えるときのポイント
共同親権を選ぶかどうかを考える際は、次のような点を意識しましょう。
• 子どもにとって安定した生活・学習環境か
• 父母の間で十分なコミュニケーションや協力ができるか
• 子どもが安心できる関係を維持できるか
特に、別居している場合には、日々の育児や学校への対応などをどう分担するか、具体的なルールを決めておくことが重要です。制度の仕組みについて理解するだけでなく、今後の生活を見据えた話し合いが欠かせません。

 

まとめ:制度の理解と弁護士への相談を
共同親権の導入は、子どもの成長を支える新たな制度として注目されています。しかし、共同親権を選択する場合や制度の運用にはそれぞれメリットと注意点があります。
制度の詳細を理解したうえで、将来の自分と子どもにとってベストな選択をすることが大切です。
離婚や親権についてお悩みの方は、専門知識を持つ弁護士にご相談ください。状況に応じて、単独親権・共同親権いずれが適切か、具体的にアドバイスをいたします。
詳しくは、弁護士細江智洋の「親権・監護権のページ」をご覧ください。

 

この記事を担当した弁護士

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
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