離婚コラム|横浜の離婚に強い弁護士 細江智洋がわかりやすく解説

2025.11.13更新

離婚コラム60

 

離婚に際して「親権をどうするか」という話題はよく耳にしますが、「監護権」という言葉は、聞き慣れないと感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、この「親権」と「監護権」は似ているようでいて、法律上はまったく別の意味を持っています。今回は、それぞれの違いや、親権と監護権を分けて決めるケース、注意すべき点についてわかりやすく解説します。

 

親権とは?
親権とは、未成年の子どもを育てるうえで必要な「法律上の権利と義務」です。親権は大きく分けて次の2つの側面があります。
1. 身上監護権:子どもと一緒に生活し、生活全般の世話や教育を行う権利・義務(住む場所を決めたり、学校に通わせたりすることなど)
2. 財産管理権:子どもの財産を管理し、必要に応じて法律行為を代わりに行う権利(子ども名義の預貯金の管理や契約・相続手続きなど)
通常、結婚している間は父母が共同で親権を行使しますが、離婚後はどちらか一方が親権者になります。市区町村役場に離婚届を提出する際には、必ず親権者を決める必要があります。

 

監護権とは?
一方、監護権とは、子どもと一緒に生活し、日々の世話や教育を行う権利・義務を指します。親権の中の「身上監護権」に近い部分だけを取り出したもの、と考えるとイメージしやすいでしょう。
たとえば、子どもと一緒に生活して食事や通学の世話をする、健康管理をする、日常生活を見守るといった行為が監護権にあたります。

 

親権と監護権を分けて定めることもできる
多くの場合、どちらかの親を親権者=監護者(どちらも同じ人)として決めますが、事情によっては親権者と監護者を別々に決めることも可能です。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
• 父母が遠く離れて暮らすことになり、生活環境や通学の関係で母親が監護者として子どもを育てる方が適している
• 父親が経済的に安定しており、子どもの財産を管理するのに適しているため、父を親権者にする
このように「親権」と「監護権」を分けることで、子どもの利益を最優先にした柔軟な対応が可能になります。

 

親権と監護権を分ける場合の注意点
親権と監護権を分ける場合、将来的にトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。
たとえば、進学や転居など、子どもの生活に関する重要な判断をする際に、親権者と監護者の意見が食い違うと手続きが難しくなることがあります。
また、監護者に子どもを預けている親権者が、親の判断で急に子どもを連れ出すと「連れ去り」とみなされるおそれもあります。
なお、親権者と監護者を分けた事を、離婚届に明記することはできません
離婚届には「監護者」を明記する欄は無く、「親権者」を記載する欄しかないためです。そのため、監護者を別に定める場合は、離婚協議書に明記し公正証書化しておく、あるいは家庭裁判所で監護者指定の調停・審判を申し立てておくことが大切です。
また、戸籍上、子どもが親権者の戸籍に入る点にも注意が必要です。
たとえば、父親が親権者で、母親が監護者の場合、子どもは父親の戸籍に入ります。
母親と同居していても戸籍上は父親の戸籍のままとなるため、学校や行政手続きで監護者である母親がすぐに対応できないケースが生じることがあります。
子どもの生活実態に合わせて戸籍を母親に移したい場合は、家庭裁判所に親権者変更の申立てを行う必要があります
親権と監護権を分けるかどうかは、メリット・デメリットをよく調べたうえで慎重に判断することが大切です。

 

まとめ:子どもの幸せを第一に考えて
親権と監護権は似て非なるものであり、それぞれの意味を正しく理解することが、離婚後の子育てにおいてとても重要です。
「どちらが親権を持つか」「どちらが子どもと生活するか」は、両親の思いだけでなく、子どもの利益を最優先に考えることが大切です。
今後は共同親権制度の導入(2026年4月1日施行)が予定されています。これまで離婚後は一方の親しか親権を持てませんでしたが、制度が施行されると、父母が協力して子どもの養育に関わることが可能になります。ただし、共同親権にも、親同士の意見が分かれた際の調整や、子どもの安定した生活への配慮といった課題はあります。
親権や監護権をどのように決めるか悩んでいる方は、早めに専門家へ相談してみましょう。
弁護士細江智洋は、親権・監護権に関するご相談を多数お受けしています。詳しくは下記ページをご覧ください。
→親権・監護権のご相談はこちら

 

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩みの方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

2025.11.10更新

離婚コラム59

 

離婚するときに、どちらが子どもの親権を持つかは、夫婦にとって最も大きな関心事です。「親権争いで不利になってしまったら、どうすればいいのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
ここでは、実際の親権争いで重要になるポイントと、すぐにできる具体的な準備について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。

 

■ 親権を決める基準とは?
家庭裁判所が親権者を決めるとき、最も重視するのは「子どもの利益」です。つまり、子どもにとってどちらの親のもとで生活するのが最も幸せか、という観点から判断されます。
具体的には次のような要素が考慮されます。
• 現在の監護状況(主にどちらが子どもの世話をしているか)
• 住環境や経済状況(子どもに個室があるか、生活の安定性があるか、今後も安定した収入を得られるか)
• 子どもの年齢・性格・希望(幼児の場合はこれまでの生活環境の継続を重視、小学校高学年以上では本人の意思も参考にされる)
• 親の養育能力・精神的安定性(生活リズムが整っているか、精神的に落ち着いて子どもに接しているか、健康状態に問題がないか)
• 離婚後の生活設計(転居・転校などの影響)(転居・転校の予定、通学時間、祖父母などのサポート体制があるか)
単に「経済的に余裕がある」「時間がある」といった利点だけでは決まりません。これらを総合的に見て、家庭裁判所は子どもの安定した生活環境を守るための判断を行います。

 

■ 親権争いで有利になるための3つの準備
① ふだんどのように子育てをしてきたかを記録しておく
「どちらが子どもの世話をしてきたか」は、最も重視されるポイントです。
たとえば、食事の準備、保育園や学校の送り迎え、通院の付き添い、宿題のサポートなど、日常生活の中で自分が子どもとどのように関わってきたかを記録しておきましょう
子どもとの写真や親子でのLINEのやり取り、保育園の連絡帳なども有力な証拠になります。思い出すことができたとしても記録がなければ立証が難しいため、早めに整理をしておくことが大切です。


② 住環境やサポート体制を整える
離婚後にどんな環境で子どもを育てるかも親権を決めるうえで重要なポイントです。
たとえば、子どもが安心して暮らせる住まいがあるか(住居の安全性や治安、静かな環境)、通園や通学に無理がないか(学校までの距離や交通手段)、落ち着いた生活が続けられるか(引っ越しや転職の予定がないか)などが考慮されます。
また、祖父母など周囲の協力が得られる場合は、そのサポート体制も大きな支えになります。家庭裁判所は、「一人で無理をして育てるより、周囲に支えてくれる人がいる方が子どもにとって安心」と考える傾向があります。
このように、子どもが安定して生活できる環境を整えておくことが、親権争いでは大切な準備になります。


③ 感情的な対立を避け、冷静な対応を
親権争いの最中は、相手とのやり取りが感情的になりがちです。しかし、相手に対する暴言やトラブルは裁判所の印象が悪くなるだけでなく、子どもに悪影響を与えるおそれもあります。
子どものために「冷静に話し合う態度」を保つことが、結果的に信頼につながります。
弁護士を通じて相手と話し合うことで、感情的にぶつかり合うことなく前向きな解決を目指すことができます。

 

■ 弁護士に相談するメリット
親権争いの問題は、親の感情だけでなく、法律上の判断や子どもの気持ちなど、いくつもの要素が関係します。弁護士に相談すれば、どのような証拠を集めるべきか、どう主張を整理すべきかを具体的にアドバイスしてもらえます。
また、家庭裁判所での調停や審判の手続きにも精通しており、依頼者の立場を冷静に代弁することができます。
特に、すでに別居している場合や、相手が子どもを連れて出て行ったケースでは、早めの対応が重要です。時間が経つと、今の生活の形が定着してしまいやすく、子どももその環境に慣れていくため、親権を求めるのが難しくなることもあります。

 

■ まとめ
親権争いで有利になるためには、「子どもの安定した生活を守れること」を具体的に示す準備が欠かせません。
子どもとの日常の関わりを記録し、子どものとの生活環境を整え、相手との冷静な話し合いを心がけることが大切です。
親権問題に詳しい弁護士細江智洋にぜひご相談ください。弁護士のサポートを受けることで、法的にも実務的にも最善の方法を取ることができます。親権や監護権に関する詳しい解説は、こちらのページでもご覧いただけます。
➡ 親権・監護権について詳しくはこちら

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2025.11.07更新

離婚コラム58

 

最近、「共同親権」という言葉をニュースなどで耳にする機会が増えてきました。これまで日本では、離婚後の親権は父親あるいは母親のどちらか一方にしか認められない「単独親権制度」が採用されていました。しかし、2024年に民法が改正され、2026年4月1日より離婚後も父母が共同で親権を持つことができるようになります(「共同親権制度」。)。今回は、この「共同親権」について、その概要や導入の背景、そして今後の方向について分かりやすく解説します。

 

1.そもそも「親権」とは?
「親権」とは、未成年の子どもを育てるための必要な法律上の権限や責任のことです。具体的には、子どもの生活や教育、居住地の決定といった「身上監護権」と、財産を管理する「財産管理権」の二つの意味があります。
これまで日本では、離婚後はどちらか一方の親が親権者になる単独親権制度が原則でした。そのため、離婚後に親権を持たない親が、子どもの進学や居住などの大事な決定に関われないという問題が指摘されてきました。

 

2.共同親権制度の概要
改正民法では、離婚時に父母が話し合いによって「共同親権」または「単独親権」を選択できる仕組みが導入されます。
共同親権を選んだ場合、父母が協力して子どもの養育方針を決め、進学・医療・財産管理などについて話し合いながら決定することになります。
共同親権とは、子どもの利益を最優先に考えて両親が「一緒に」判断することが基本ですが、両親の意見が常に一致するとは限りません。重要な決定事項について意見が食い違った場合、一方に単独行使を認めるよう家庭裁判所に判断を求めることもできます。なお、急を要する場合や日常行為は例外的に単独行使が認められています。

 

3.共同親権導入の背景と目的
共同親権制度の導入の目的は、「子どもにとって離婚しても両親との関わりを保てるようにする」ことです。
最近では、父親の育児参加が進み、家庭のあり方も変化しています。その中で、「離婚後も父母がともに子育てに責任を持つ仕組みが大切ではないか」という声が高くなりました。
また、国際的には共同親権が主流であり、日本の単独親権制度は一部の国際機関から「子どもの福祉の観点で再検討が必要」と指摘されてきました。このような流れを受け、法改正が進められたのです。

 

4.今後の課題と注意点
一方で、DV(家庭内暴力)や虐待がある場合は、共同親権が子どもの安全を脅かすおそれもあります。そのため、改正法では、どちらかの親からの暴力や虐待がある場合には共同親権を認めないといった制限も設けられています。また、離婚時に「単独親権」あるいは「共同親権」にするか協議がまとまらない場合、家庭裁判所はどちらが子どもの利益に適うか判断します。つまり、共同親権はすべての家庭に対応できる制度ではなく、家庭ごとに慎重な判断が必要になります。
制度の運用方法や家庭裁判所での判断基準など、まだこれから整備が進む段階です。離婚を検討している方にとっては、今後の法施行や運用についての情報を把握しておくことが大切です。

 

5.共同親権を考えるときのポイント
共同親権を選ぶかどうかを考える際は、次のような点を意識しましょう。
• 子どもにとって安定した生活・学習環境か
• 父母の間で十分なコミュニケーションや協力ができるか
• 子どもが安心できる関係を維持できるか
特に、別居している場合には、日々の育児や学校への対応などをどう分担するか、具体的なルールを決めておくことが重要です。制度の仕組みについて理解するだけでなく、今後の生活を見据えた話し合いが欠かせません。

 

まとめ:制度の理解と弁護士への相談を
共同親権の導入は、子どもの成長を支える新たな制度として注目されています。しかし、共同親権を選択する場合や制度の運用にはそれぞれメリットと注意点があります。
制度の詳細を理解したうえで、将来の自分と子どもにとってベストな選択をすることが大切です。
離婚や親権についてお悩みの方は、専門知識を持つ弁護士にご相談ください。状況に応じて、単独親権・共同親権いずれが適切か、具体的にアドバイスをいたします。
詳しくは、弁護士細江智洋の「親権・監護権のページ」をご覧ください。

 

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2025.11.04更新

離婚コラム57

 

離婚後のお子さんとの生活を考えるうえで、もっとも重要なテーマが「親権」です。
ニュースなどで耳にする機会は多いものの、「親権ってそもそもどういう意味?」「監護権との違いは?」と疑問を感じる方も少なくありません。ここでは、離婚を考えている方が知っておくべき親権の基本知識と、注意しておきたいポイントをわかりやすく解説します。

 

■ 親権とは?法律上の定義と内容
親権とは、未成年の子どもが大人になるまでの間、子どもを監護・教育し、その財産を管理する権利と義務のことを指します。
法律(民法第820条など)では、「子の利益のために親権を行使すべき」と定められており、親の権利というよりも“責任”の側面が強い権限です。
親権の中には、大きく分けて次の2つの内容が含まれます。
1. 身上監護権(子どもの生活・教育・しつけなど)
2. 財産管理権(子どもの財産を管理する権利義務、法律行為を代理・同意する権限)
身上監護権には、子どもの日常生活の世話や教育、医療同意などの権限が含まれます。
一般的に「監護権」と呼ばれることもあり、具体的にはたとえば子どもの食事や通学の世話、病院への付き添い、生活リズムを整えることなど、実際に子どもを育てるための権限を指します。
一方、財産管理権は、子ども名義の預貯金を管理したり、契約や相続の手続きを行ったりするときに必要な権限です。
つまり、親権は法律的な決定から日常的な養育までを幅広く含むものであり、親が子どもの利益を守るために行使する「包括的な責任」といえます。

 

■ 離婚後の親権はどちらか一方の親に
現在の日本の法律では、離婚後は父母のどちらか一方しか親権者になれません
協議離婚の場合、親権者を話し合いで決め、離婚届に記載する必要があります。もし話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所の調停・審判で決定されます。
家庭裁判所が親権者を判断するときに、最も重視されるのが「子の福祉」です。
具体的には、
• 現在の子どもの監護状況(どちらが主に世話をしているか)
• 父親あるいは母親の住環境や経済力
• 子どもへの愛情や養育への意欲
• 子どもの年齢や意思(特に10歳以上の場合)
などを総合的に考慮して判断されます。
もっとも、今後は法律改正(2026年4月1日施行)により、一定の条件のもとで離婚後も父母がともに親権を持つ「共同親権制度」が導入されます。これにより、父母の両方が子どもの養育に関われるようになりますが、子どもの安定した生活への配慮といった課題はあります。

 

■ 親権をめぐるトラブルを防ぐために
親権は子どもの将来につながる大切な問題です。離婚協議では感情的になりやすく、「相手に渡したくない」「一緒に住みたい」という思いが先行してしまうことも少なくありません。
離婚後に親権を持たない親であっても、養育費の支払いや面会交流を通じて、子どもと関わり続けることはできます。親権を決めるうえで重要なのは、「どちらがより子どもの利益になるか」という視点です。

親権や監護権をめぐる判断には、家庭裁判所の実務や法律知識が大きく関わります。将来のトラブルを防ぐためにも、早めに弁護士へ相談し、冷静に対処することが大切です。

 

■ まとめ:まずは弁護士に相談を
親権は「父母のどちらが子どもを引き取るか」という単純な問題ではなく、離婚後の子どもの利益を最優先に考える法的制度です。親として、子どもが安心して成長できる環境をどう整えるかを意識して決断することが大切です。
また「共同親権制度」は父母が協力して子どもを養育できる制度として期待されていますが、制度が変わると分かりにくい点も増えていくため、早めに専門家に相談して、自分の状況に合った方法を一緒に考えることが大切です。
弁護士細江智洋は、これまでの豊富な離婚・親権問題の経験をもとに、依頼者の事情に寄り添った解決をサポートしています。
親権や監護権の詳細について知りたい方は、ぜひこちらのページもご覧ください。
→親権・監護権について詳しく見る

 

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2025.11.01更新

離婚コラム56

 

離婚に際してよくトラブルに発展するのが「慰謝料」です。一般的なイメージは「不倫をした側が払うもの」と思われがちですが、慰謝料の金額や支払い義務をめぐって、夫婦の間で大きな問題になることが少なくありません。特に、生活にゆとりのあるご家庭では、金銭的な余裕があるからこそ相手から高額な慰謝料請求を受けやすく、争いが複雑化するケースも多く見られます。今回は、離婚時の慰謝料トラブルと注意すべきポイントについて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

 

慰謝料の相場は「生活水準」で変わるのか?
慰謝料の算定には一律の「計算式」があるわけではなく、個別の事情に応じて裁判所が判断します。特に生活にゆとりがあるご家庭では、「経済的に余裕があるのだから、高額の慰謝料が払えるはず」といった主張をする傾向にあります。
慰謝料の金額は「支払能力」だけで決まるものではありません。法律上は、不倫や暴力などの離婚原因となった行為の内容・期間・悪質性、もしくは被害を受けた側の精神的苦痛の度合いなどが重視されます。つまり、生活水準が高いからといって自動的に慰謝料の金額が高くなるわけではありません。

 

生活水準の高い家庭で起こりやすい慰謝料トラブル
生活にゆとりのあるご家庭でよく見られるトラブルとして、以下のようなケースがあります。

1. 不倫の慰謝料が「数千万円」になると誤解している
慰謝料の相場は50万~300万円程度が中心であり、極端に高額な金額が認められるのは例外的なケースです。


2. 話し合いの中で慰謝料と財産分与の境目があいまいになるケース
協議離婚では、専門的な言葉を理解しないまま合意してしまうことがあります。例えば「慰謝料としてまとめて1,000万円払う」と取り決めたものの、その中には本来は財産分与にあたる部分が多く含めていた、というケースもあります。
慰謝料と財産分与を厳密に区別しないと、本来は財産分与として支払うべきお金まで『慰謝料』として支払うことになり、結果的に相場よりも多く慰謝料を払ってしまう危険があります。

3. 「請求されたら必ず払わなければならない」と思い込む
相手から高額の慰謝料を請求されても、すぐに応じる必要はありません。相手からの請求額と法的に認められる相場には大きな差があることが多いため、弁護士に相談するなど冷静に判断することが大切です。

 

慰謝料トラブルを避けるためのポイント
慰謝料をめぐるトラブルを防ぐには、次の点に注意するとよいでしょう。
• 慰謝料の相場を知っておくこと
インターネット上には誤解を招く情報が多いため、信頼できる専門家や公的資料から情報を取得しましょう。
• 慰謝料と財産分与との違いを整理すること
慰謝料は精神的苦痛への賠償、財産分与は夫婦で築いた財産を公平に分ける制度です。この違いを理解しておくと、誤って相場以上の金額を払ってしまうリスクを避けられます。
• 慰謝料請求を受けたらすぐに対応しないこと
安易に慰謝料の条件に合意すると、後で不利になることがあります。必ず弁護士に相談してから対応することをおすすめします。

 

弁護士に相談するメリット
慰謝料の請求を受ける、あるいは自分から請求をする場合は、専門的な知識が不可欠です。弁護士に相談すれば、相場に基づいた適切な金額を判断できるほか、交渉や調停の場で不利にならないよう全面的なサポートを受けることができます。
また、生活にゆとりがあるご家庭では、慰謝料に加えて財産分与や養育費など複数の金銭問題が複雑であることが多いため、総合的な視点で戦略を立てることが大切です。

 

まとめ
離婚時の慰謝料は、生活水準や経済状況だけで決まるものではありません。しかし、生活にゆとりのあるご家庭では相手に「払えるはず」と思われやすいため、請求額が相場を大幅に超えるケースが少なくありません。
まずは慰謝料の相場や法的な位置づけを正しく理解し、冷静に対応することが大切です。そのためには、離婚問題に精通した弁護士のサポートを受けることが、最も安心で確実な方法といえるでしょう。
慰謝料トラブルに不安を感じている方は、ぜひ弁護士細江智洋の事務所にご相談ください。詳しくは当事務所の「離婚慰謝料についての解説ページ」をご覧いただけます。

 

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2025.10.29更新

離婚コラム55

 

近年、40代・50代の夫婦の離婚が増えています。仕事や子育てが一段落し、第二の人生を考えるタイミングで「このまま結婚生活を続けるべきか」と思い悩む方も少なくありません。離婚を考える中で気になる問題のひとつが「離婚慰謝料」です。
「慰謝料の相場はどのくらいなのか」「自分の場合はいくら請求できるのか、または払うことになるのか」――多くの方が抱える疑問ですが、実はインターネットや噂で広まっている情報には正確ではないものが多く見受けられます。この記事では、40代・50代の離婚における離婚慰謝料の相場と、離婚慰謝料における誤解についてわかりやすく解説します。

 

離婚慰謝料の基本
離婚慰謝料とは、配偶者の不倫や暴力などの有責行為によって精神的苦痛を受けた側が、相手に対して請求する損害賠償金のことです。性格の不一致や単なる気持ちのすれ違いでは、基本的に慰謝料の対象にはなりません。
代表的な原因としては、
• 不倫(不貞行為)
• モラルハラスメントや暴力
• 勝手に家を出ていく、生活費を渡さないなどの悪意の遺棄(あくいのいき)
• 離婚そのものによる精神的苦痛(一方の有責行為が原因で平穏な婚姻生活が破綻し離婚に至った場合)
が挙げられます。
相手の行為そのものに加え、結果として「離婚という事態を強いられたこと」による精神的苦痛も慰謝料の対象となります。

 

40代・50代の慰謝料相場
離婚慰謝料の金額は事情によって異なりますが、不倫や暴力を原因とする場合、50万円から300万円程度が多いといわれています。
ただし、婚姻期間が長いほど精神的苦痛の影響が大きいと判断されやすく、40代・50代夫婦で20年以上結婚生活を続けてきた場合は、比較的高額な慰謝料が認められることがあります。逆に、有責行為の期間が短かったり、(不貞などの)証拠が乏しかったりする場合には、相場より低くなる、あるいは認められないこともあります。

 

40代・50代でありがちな慰謝料に対する誤解

誤解① 高齢の夫婦は慰謝料をもらえない
「若い夫婦には慰謝料が出るけど、年齢が高いと出ないのでは?」と思っている方がいますが、これは誤りです。慰謝料は年齢ではなく、相手の行為の内容と婚姻生活への影響によって認められます。40代・50代でも、不倫や暴力といった行為が原因であれば慰謝料請求は可能です。

誤解② 財産分与と慰謝料は同じもの
「財産分与を受け取ってしまうと慰謝料は請求できない」と思い込む方は多いですが、これは全く別の制度です。財産分与は離婚時に夫婦が協力して築いた財産を公平に分けるもの。一方で慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償金です。両方を併せて請求する場合もあります。

誤解③ 高収入の相手なら高額の慰謝料がもらえる
「相手が高収入だから数百万円は当然」と期待するのも誤解です。確かに収入は算定要素のひとつですが、それだけで慰謝料の金額が決まるわけではありません。行為の悪質性、婚姻期間、被害者側の精神的苦痛の大きさなど、総合的に判断して算定されます。

 

誤解を避けるために必要なこと
40代・50代での離婚は、夫婦で築いた財産を分けることになり、その後の暮らしをどうしていくかを真剣に考える必要がある大切な時期です。慰謝料について誤解したまま行動してしまうと、請求できるものを見逃したり、逆に不必要に大きな不安を抱えてしまったりするリスクがあります。
そのため、インターネットや周囲の体験談に頼るのではなく、自分の状況に合った正しい法的知識を得ることが大切です。

 

弁護士に相談するメリット
慰謝料の相場は一律ではなく、状況によって大きく変わります。弁護士に相談すれば、あなたの状況に即した慰謝料の相場の金額を知ることができるだけでなく、相手との交渉の仕方や有効な主張の準備など、実践的なサポートを受けられます。
離婚を検討している40代・50代の方にとって、今後の生活を考慮した冷静な判断を下すためには、弁護士の力を借りることが大きな安心につながるでしょう。

 

まとめ
40代・50代の離婚慰謝料は、年齢ではなく相手の有責行為の有無とその内容によって判断されます。相場は50万円から300万円程度が多いですが、婚姻期間の長さや事情によって増減します。
「年齢が高いから慰謝料はもらえない」「財産分与と慰謝料は同じ」「高収入なら必ず高額な慰謝料がもらえる」といった誤った情報に惑わされず、正しい知識を持って行動することが大切です。
もし慰謝料のことで悩んでいるなら、弁護士細江智洋にご相談ください。きっと安心して前に進むためのヒントが得られるはずです。
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2025.10.26更新

離婚コラム54

 

離婚慰謝料の請求には時効がある?請求できる期間とは
離婚にあたって「精神的損害に対する慰謝料を請求したい」と考える方は少なくありません。
配偶者のモラハラや暴力、生活費を全く渡さない、正当な理由なく家を出て行ってしまったといったケースでは、離婚原因を作った側に対して慰謝料を求めることができます。
ただし、慰謝料には「いつまでに請求できるか」という時効が存在します。時効を過ぎてしまうと、正当な権利であっても実質的に行使できなくなるおそれがあります。ここでは、離婚慰謝料の時効と注意点を解説します。

 

離婚慰謝料の時効は「離婚成立から3年」
離婚慰謝料請求権の請求期間は、民法724条に基づき 離婚成立から3年 が原則です。
ここでいう「離婚成立」とは、協議離婚の場合は離婚届が役所に受理された日、調停離婚や裁判離婚の場合は調停調書や判決が確定した日を指します。
離婚が成立した時点で「損害(精神的苦痛)」が確定し、相手方(加害者)が誰であるかも明確になるため、この時点から時効がスタートするのが一般的です。
たとえば、
• 2022年4月に離婚成立 → 2025年4月まで慰謝料を請求可能
というイメージです。3年を経過した場合は時効完成となります。

 

離婚原因が違っても時効は同じ?
「配偶者のDVやモラハラが原因の場合はもっと時効が長くなるのでは?」と誤解している方がいますが、離婚慰謝料として請求する限りは離婚原因に関わらず離婚成立から3年というルールです。
なお不倫に関する慰謝料は「不貞慰謝料」として別に扱われるため、不倫を知った時から3年という考え方が用いられますが、ここで扱う「離婚慰謝料」には当てはまりません。

 

時効を過ぎるとどうなる?
離婚成立から3年の時効を過ぎてしまった場合、相手に慰謝料を請求しても認められない可能性があります。
法律上、時効は期間が経過(=時効完成)しても自動的に権利が消えることはありません。相手が「もう時効だから払わない」と主張することを 「時効の援用」 といいますが、この援用がなされた場合は慰謝料を請求することはできなくなります。
したがって、実務上は3年を過ぎると離婚慰謝料の請求はほぼ不可能になってしまいます。

 

時効を止める方法もある
「離婚からすでに2年半経っている」「話し合いが進まず、離婚からもうすぐ3年になってしまう」という場合でも、時効完成を防ぐ方法があります。
内容証明郵便で慰謝料請求を通知する
 → 時効完成を6か月間だけ先送りできる
家庭裁判所で慰謝料請求を目的とした調停・訴訟を申し立てる
 → 時効がリセットされ、新たにカウントされる
このような方法で、時効完成を防ぐことができ、請求の権利を維持できます。

 

離婚慰謝料の時効で注意すべき3つのポイント
1. 離婚成立から3年という短い期間しかない
 時間に余裕があると思っていても、準備や交渉には思ったより時間がかかります。
2. 交渉の引き延ばしで時効が完成してしまうリスクがある
 相手が「検討する」と言って引き延ばされている間に3年が過ぎれば、請求できなくなる可能性があります。
3. 時効が始まる日(=起算点)の誤解で時効を過ぎてしまう危険がある
 「まだ大丈夫」と思っていても、離婚成立日からカウントが始まっています。思い込みや勘違いもあるため放置するのは危険です。

 

まとめ
離婚慰謝料の請求には原則3年の時効がありますが、離婚原因や状況によって起算点が異なります。時効がいつ始まっているのか、時効を止めるための手続きはあるのかを確認することが大切です。
時効を過ぎてしまうと請求が難しくなるため、ご心配な方はできるだけ早めに弁護士へ相談することが大切です。
弁護士に相談すれば、時効の正確な起算点や適切な請求方法を判断でき、慰謝料を受け取る可能性が高まります。
当事務所では、離婚や慰謝料に関するご相談を数多く取り扱っております。「まだ慰謝料を請求できるのか」「時効までにどのような手続きをすればいいのか」といった悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
→詳しくはこちらをご覧ください:離婚慰謝料について

 

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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋

神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

2025.10.23更新

離婚コラム53

 

配偶者の不倫が発覚したときの精神的なダメージは、想像も出来ないほど大きいものです。そのとき問題となるのが「慰謝料」です。慰謝料を請求できるのか、どのくらいの金額が相場なのか。また、支払う側にとってはどこまでが妥当な範囲なのか――。この記事では、不倫の慰謝料の相場や判断のポイントを、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

 

不倫の慰謝料とは?
不倫の慰謝料とは、配偶者の不貞行為によって受けた精神的な損害に対して支払われるお金のことです。法律上の「不貞行為」があった場合に請求でき、単なる不倫の疑いだけでは認められません。通常は、不倫した配偶者本人と不倫相手の双方に対して請求できる可能性があります。

 

慰謝料の相場はどれくらい?
慰謝料の金額はケースによって大きく変わります。裁判例や実務上の傾向からすると、次のような目安があります。
離婚しない場合:50万円~100万円程度
不倫が原因で別居に至った場合:100万円~200万円程度
不倫が直接の原因で離婚に至った場合:200万円~300万円程度
もちろん、これはあくまで目安であり、個々の状況によって増減します。

 

慰謝料の金額が増減する判断ポイント
慰謝料の金額の判断には「一律の計算式」があるわけではなく、以下の要素が考慮されます。
不倫の期間や回数:長期かつ継続的な不倫関係は、増額要因になります。
結婚期間の長さ:長年の婚姻生活が壊された場合、金額は高くなる傾向があります。
未成年の子どもの有無:幼い子どもへの影響は大きいため、増額されることがあります。
支払う側の収入や経済状況:経済力に応じた金額に調整される場合があります。
不倫した側の態度:不倫が発覚した後に、誠実に謝罪し協議に応じれば減額される可能性があります。逆に、非協力的な態度をとったり、不倫の事実を否定し続けたりすると、慰謝料が増額される場合もあります。

 

支払う側が注意すべき点
不倫が事実であれば、慰謝料を支払う義務があります。ただし、請求された慰謝料の金額が必ずしも妥当な金額とは限りません。相場とかけ離れていないかを確認しましょう。弁護士に依頼して相手と交渉すれば、金額や支払方法を調整できる可能性があります。

 

もらう側が注意すべき点
慰謝料請求を成功させるためには、証拠を押さえることが重要です。メールやLINEのやり取り、ホテルへの出入りを示す写真など、相手の不貞行為を裏付ける資料が必要となります。また、慰謝料請求の方法にも注意が必要です。相手と直接交渉すると感情的な言い合いに発展しやすく、合意に至らないことも多くあります。弁護士を通じて請求すれば、冷静に適切な金額での解決が望めるでしょう。

 

裁判にするか、協議で解決するか
慰謝料請求は裁判を経なくても、当事者間の話し合いや弁護士を通した協議で解決できる場合が多いです。実務上は多くのケースが協議で解決し、裁判まで進むのは一部に限られます。裁判になると時間や費用の負担が大きいため、一般的には協議を進めますが、相手が全く応じない場合には裁判を検討する必要があります。

 

まとめ:協議だからこそ弁護士のサポートが重要
不倫の慰謝料は、支払う側・請求する側にとっても影響の大きい問題です。裁判に至るケースは少ないものの、協議段階だからこそ弁護士のサポートが不可欠です。
• 慰謝料の支払い義務があるのかどうか
• 請求金額や条件が現状に鑑みて妥当かどうか
• 将来トラブルにならない形で合意できているかどうか
これらを判断できるのは弁護士です。当事者同士では感情的になりやすい状況だからこそ、早い段階で弁護士に相談することが安心につながります。
弁護士細江智洋の事務所では、不倫の慰謝料や離婚に伴う金銭問題についてのご相談を多数承っています。詳しくは当事務所の「不倫慰謝料」のページをご覧ください。

 

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2025.10.20更新

離婚コラム52

 

結婚生活を送る中で「もう一緒に暮らすのは難しい」と感じ、突然別居を考える方も少なくありません。40代・50代は、子育てがひと段落したり、仕事環境が変わったりと、夫婦関係に向き合う時期でもあります。
では、夫婦の一方が勝手に「別居」を始めた場合、それは法律的に「違法」となるのでしょうか?

 

夫婦には「同居義務」がある
民法には、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています(民法752条)。
つまり、夫婦は原則として一緒に住み、助け合うことが義務とされているのです。
そのため、何の理由もなく、かつ相手の了承も得ずに急に別居することは、この「同居義務」に違反する可能性があります。
ただし、同居義務は必須ではありません。正当な理由があれば、別居が認められる場合があるのです。

 

法律上の正当な理由とは?
それでは、法律上「正当な理由」とされるのはどんな場合でしょうか。代表的な例をいくつか挙げます。
• DV(家庭内暴力)やモラハラを受けている場合
暴力や精神的虐待から身を守るための別居は、必要な行動です。
• 不貞行為(浮気・不倫)が発覚した場合
信頼関係が壊れている状況での別居は、正当化されやすいです。
• 過度な借金や浪費がある場合
経済的に生活が脅かされるとき、別居によって生活を立て直すことが認められます。
• 病気や介護のために物理的に別居せざるを得ない場合
病気の療養や家族の介護など、やむを得ないケースも含まれます。
このように「やむを得ない事情」があれば、別居は法律上認められる可能性が高いのです。

 

突然の別居はリスクがある
とはいえ、客観的に正当な理由がないまま一方的に家を出てしまうと、後に離婚や財産分与の話し合いで不利になる可能性があります。

相手が「勝手に出て行った」と主張し、「悪意の遺棄(あくいのいき)」(民法770条1項2号)を根拠に問題視されることがあります。
もっとも、「悪意の遺棄」と認められるのは、正当な理由なく長期間にわたり同居を拒否し、生活費の分担など夫婦としての義務を果たさない場合に限られ、単に別居を始めたというだけで直ちに当てはまるわけではありません。

 

 

別居は「離婚準備」につながる
40代・50代の別居は、単なる一時的な距離の取り方にとどまらず、そのまま「離婚」へと発展するケースが多く見られます。
別居は夫婦関係の破綻を示す有力な証拠となるため、離婚裁判では重要な要素にもなります。
そのため、別居を検討する際には以下の点を整理しておくことが重要です。
• 経済的に生活できるのか
• 子どもの養育はどうするのか
• 財産の管理はどうするのか

 

まとめ
突然の別居は、DVや不貞行為など「正当な理由」があれば認められるケースもあります。
ただし、状況によって判断が大きく変わるため、自身の判断で動くのは非常にリスクが高いです。
別居を検討している、または既に別居を始めている方は、弁護士に相談して「自分のケースではどのように対応すべきか」を確認しましょう。
当事務所では、離婚や別居に関するご相談を数多く受けてきました。今の不安を整理し、最善の方法を一緒に考えていきましょう。
→詳しくはこちら:
離婚と別居に関するご相談|弁護士 細江智洋

 

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2025.10.17更新

離婚コラム51

 

はじめに
結婚すると、夫婦は「同じ家で暮らし、協力し、助け合う」ことが法律で定められています。これを夫婦の「同居義務」といいます。
しかし、配偶者に相談もしないで勝手に別居したり、家庭を放置したりしてしまうと、法律上「同居義務違反」とされ、離婚や慰謝料などの問題につながることがあります。
本コラムでは、同居義務とは何か、違反するとどんなリスクがあるのかをわかりやすくご説明します。

 

1. 同居義務とは?夫婦の基本的なルール
民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し、扶助(=助け合い)しなければならない」と書かれています。
つまり、夫婦が
• 一緒に住むこと
• 生活や家計を支え合うこと
• 病気や困難があれば助け合うこと
を法律上で求められているのです。
ただし、裁判所が「一緒に暮らしなさい」と命じても、無理やり同居させることはできません。その代わりに、同居義務を怠った場合には法律上の不利益を受ける可能性があるのです。

 

2. 同居義務違反によって生じる法的リスクの種類
(1)離婚原因になる
自分勝手な別居や家庭を放置するような行為は、法律上の離婚原因の一つ「悪意の遺棄」にあたる場合があります。つまり「夫婦関係を続ける意思がない」と解釈されるのです。
(2)慰謝料を請求される可能性
生活費を渡さない、浮気をして家を出るなどは、相手に精神的苦痛を与える行為とされ、慰謝料請求につながることがあります。特に不貞行為(浮気)に対する請求は高額になりやすいです。
(3)婚姻費用の請求が不利になることもある
夫婦が別居すると、通常は収入の多い方が収入の少ない方に「婚姻費用(生活費)」を支払う義務があります。しかし、請求する方(少ない方)が勝手に家を出た/不倫をした/生活費を渡さなかったことを理由に「有責配偶者」と判断されると、家庭裁判所が「その婚姻費用の請求は正当とはいえない」として、
• 婚姻費用を減額する
• 場合によっては認めない
と判断することがあります。
つまり、収入が少ない方であっても、行動によっては生活費を十分にもらえなくなるリスクがあるのです。

 

3. 同居義務違反の具体例と法的リスク
同居義務違反は「一方的に家を出ること」だけではありません。以下のような行為も含まれることがあります。

離婚コラム51の表

 

4. 違反とはならない場合もある
もちろん、すべての別居が「同居義務違反」になるわけではありません。次のような正当な理由があるケースは「違反とはならない」と考えられます。
• 夫婦で話し合い、合意している
• 親の介護や単身赴任など、やむを得ない事情
• DV・モラハラから身を守る
• 夫婦関係をやり直すための冷却期間を置く
ただし、正当性を証明できるよう、記録や証拠を残しておくことが大切です。

 

5. 別居を考える際の注意点
別居を検討するときには、次のことを意識しましょう。
• できるだけ話し合い、夫婦の間で合意するる
• 別居の理由を証拠として残す(メール・録音・診断書など)
• 生活基盤を整える(住居の確保・収入・子どもの養育環境など)
これらを準備しておくことで、別居する際のトラブルを避けやすくなります。

 

まとめ
夫婦には「同じ家に住み、協力し、助け合う」という同居義務があります。これを怠ると、離婚や慰謝料、生活費の不利益など深刻な法的リスクを招くことがあります。
一方で、夫婦間の合意や正当な理由がある別居は「違反」にはあたりません。別居を検討する際は、準備と証拠確保を徹底することが大切です。

当事務所のページ 離婚に向けて別居を考えている方へ では、別居を始める前に必要な準備や証拠の集め方についてさらに詳しく解説しています。別居を検討中の方はぜひご覧ください。

 

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